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2007年5月13日

核の自爆攻撃をどう防ぐ? (2)

 私は前回、「核を使った自爆テロを抑止できないかもしれない」と書いたが、それは私の感想であり、ブッシュ政権の結論ではないようだ。前述の記事によると、昨年5月の段階ではっきりした結論は出ず、「抑止は多分できそう」というニュアンスで記事は書かれている。その理由は、核兵器による破壊後でも、その由来をある程度調べることができるらしいからだ。そういう事後調査の技術を「核法化学(nuclear forensics)」と呼ぶ。この技術によって、核テロリストが使った兵器の供給元が判明した場合、その国に対して核兵器で報復すべきかどうか。また、そのことを事前に、すべての国に対して宣言すべきかどうか。さらに、その時に使われる報復手段を「核攻撃」とはっきりと表現すべきか、あるいはもっと抽象的に「すべての責任をとらせる」などと表現すべきか……そういう問題が議論されたようである。

 この会議が行われたのが昨年5月で、イランの核開発問題とのからみで事態は複雑化していた。この時期に、「すべての責任をとらせる」とイランを脅すことが賢明かどうかの判断は微妙だった。ところが10月9日、そんなところへ北朝鮮が核実験を発表した。これよって、何をするか分らない国が核の供給元になる可能性が増大したため、事態を深刻に考えたブッシュ政権は、ただちに大統領自身が北朝鮮に対して、「他国やテロ組織への核兵器や核物質の移転は、アメリカへの重大な脅威と見なし、北朝鮮はその結果の全責任をとることになる」と警告したのである。私がここで強調したいのは、ブッシュ大統領は北朝鮮の核兵器自体を「重大な脅威」だと言わずに、他への「移転」を問題にした点だ。その理由が、今回の報道で明らかになった。すなわち、ブッシュ政権の当時の最大の関心事は、北朝鮮の核が反米テロリストの手に渡り、アメリカ国内で使われる可能性だったのである。
 
 こうして、北朝鮮に対しては「核の移転は報復措置を招く」というメッセージが発せられ、イランにはそのメッセージは発せられなかった。しかし、このことは反面、アメリカが北朝鮮を核保有国として暗黙裡に認めたと解釈される余地を含んでいる。
 
 さて、ここでいきなり日本が抱える拉致問題との関係へ飛ぶ。4月の日米首脳会談で、ライス国務長官が日本側に対し、拉致問題の解決は北朝鮮のテロ支援国家の指定解除の「前提条件にならない」と言ったことが最近、明らかになった。(5月13日『朝日新聞』)これは、見方によっては、拉致問題とテロ支援国家の指定解除を切り離し、北朝鮮が核放棄を決断するならば、拉致問題を積み残したまま、北朝鮮をテロ支援国家のリストから外し、経済支援への道筋をつける選択肢を開いたとも言える。
 
 ここでさらに一転して、目を東ヨーロッパに向ければ、アメリカが強力に配備の準備を進めているミサイル防衛システム(MDS)のことが思い出される。12日の『朝日新聞』によると、アメリカはチェコとの間で、MDSのレーダー施設建設の交渉を2008年前半までに終えることで合意し、2011年の運用開始を目指すという。その理由は「イランなど米国にとっての敵対国への対応を強化するのが目的」という。アメリカはすでにポーランドとの間で、ミサイルの発射設備設置の交渉に入っていて、中央ヨーロッパのブルガリア、ルーマニアとも空軍主体の小規模基地設置の作業を進めている。これに対して、ロシアのプーチン大統領は明確な「反対」の意志を示していて、「軍事的対抗措置」を辞さないなど、厳しい姿勢を示している。
 
 そこで私は憶測する。これほどまでにアメリカがMDSにこだわる理由は、テロリストへの核の移転を恐れているためではないか。もっと具体的に言えば、イランが核兵器を所持することよりも、イランから持ち出された高濃縮核物質がイスラーム過激派の手に渡り、それがアメリカ国内で使われることを防ぐことが、MDSの計画中に含まれているのではないか、ということだ。テロリストの核自爆テロを防ぐためには、北朝鮮に出したような警告をイランにも出す必要があるが、その警告を保証するような兵器システムが実際に存在しなければならない。現在のアメリカの核兵器は、冷戦時代の超大国同士の撃ち合いを想定したものだから、このような用途への転用がきかない可能性がある。もしそうであれば、MDSは、核自爆テロの抑止を目指した報復攻撃用のシステムとしても考えることができるのである。

谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

9.11の報復としてアフガニスタンのタリバン攻撃、またイラクのフセイン政権打倒攻撃と言うことになっておりますが、国際情勢に詳しい私の友人の情報に寄れば、9.11はアメリカ政府のの自作自演でアフガンもイラクもアメリカ特有の海外で行う公共事業ということらしいです。

アメリカが実際に一番怖いのは、核ミサイルよりもテロによる「核自爆」だそうです。現在、ミサイルによる核攻撃の可能性は小さいが「核自爆」は明日あっても不思議ではないくらいのようです。

ただ、これはアメリカだけではなくロシアも中国も同じことだと思います。

世界が「青くん」だけではなく「黄色くん」も「赤くん」も色々な集合体を認め合うようにならなければ本当の平和が来ないと思います。

電脳紙芝居で私も洗脳されてきたようです。
つい、半年までは違う考え方だったはずですが・・・・(汗!)

投稿: 佐藤克男 | 2007年5月15日 00:13

佐藤さん、

 コメント、ありがとうございます。

>> 国際情勢に詳しい私の友人の情報に寄れば……

 ウーン、この話はすでに本欄でしましたよ。その人は多分「国際情勢に詳しい」のではなくて、「陰謀説が好きな」のではないのでしょうか? 世界は皆、陰謀が渦巻いている……そういう世界観なのでは?

投稿: 谷口 | 2007年5月15日 14:23

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