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2007年4月19日

地球温暖化と安全保障

 私は3月14日の本欄で、最近“環境志向”へ急旋回したイギリスについて書いたが、この国は自国内での温暖化防止努力だけでなく、国際舞台でもこれを積極的に推進する動きを示している。4月18日の『日本経済新聞』によると、国連安全保障理事会は17日午後、議長国・イギリスの強い要請によって、地球温暖化に関する初の公開討論会を開いたという。イギリスのジョンズパリー国連大使は今月上旬、安保理議長国の立場を生かして、地球温暖化が国際紛争の諸要因を悪化させる可能性があるという討議資料を安保理に提出し、同理事会で議論する必要性を訴えた。が、温暖化防止に消極的なアメリカや中国、その他一部の途上国が「安保理の議題にふさわしくない」として難色を示したそうだ。そこで、声明や決議をしないとの条件のもとに公開討論会をすることで関係国が折り合ったらしい。
 
 また、同じく18日の『産経新聞』によると、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は「人類は資源確保をめぐる争いを繰り返してきた」と指摘し、「気候変動問題は地球規模の長期的取り組みが必要で、環境への懸念にとどまらず、平和と安全にかかわる問題」であるとして、討論会の開催を歓迎したという。討論会への参加は、安保理メンバーのほか、日本やインド洋の島嶼国・モルディブなど計52カ国という。日本は大島国連大使が出席して、京都議定書の後の温暖化防止のための枠組み強化を求めるという。
 
 イギリスが用意した討議資料によると、温暖化による海面上昇によって領土が減少する国と周辺国の間には、国境紛争が激化する可能性があるといい、また、異常気象による農産物の不作で移民が急増し、一国の民族構成に変化が起こって政情が不安定化したり、エネルギー輸入元の変更や水系変化から来る紛争の可能性、さらに飲料水、耕作地、漁獲量の減少に伴う国際関係の不安定化などが指摘されているようだ。

 アメリカは、ブッシュ大統領の京都議定書拒否のおかげで温暖化対策が遅れているが、最近、“テロとの戦争”にばかり注力していては国の安全保障は確保できないとの自覚が生まれつつある。その証拠の1つは、連邦議会に提案されている超党派の法案で、地球温暖化による気候変動が国の安全保障にどう影響するかの調査を、アメリカ中央情報局(CIA)や国防総省に義務づけるものらしい。4月10日付の『ヘラルド・トリビューン』紙が伝えている。それによると、CIAなどの情報機関は、世界のどの地域で人的困窮状態が最悪になっているかを特定し、水その他の資源不足によって紛争や戦争がどの程度起こりやすいかを分析する義務を負うことになるようだ。また、国防総省では、ハリケーンなどの極端な気象現象が直接的、物理的にアメリカの安全にどのような脅威をもたらすかを把握する仕事を担当することになるらしい。

 また、4月17日の同紙によると、海軍分析センター(Center for Naval Analyses)の依頼で軍の退役将官らが書いた『National Security and the Threat of Climate Change』(国家安全保障と気象変動の脅威)という報告書では、地球温暖化によって大規模な民族移動が起き、国境の緊張が高まり、疾病の拡大や食糧と水をめぐる紛争が増加するため、アメリカ軍が直接介入する機会が増える恐れが指摘されているという。そして報告書は、気象変動の問題は国の安全保障戦略の中に組み入れられるべきであるとし、さらにアメリカは「国内的にも、国際的にも、気象変動が地球規模の安全と安定を脅かすレベルに達しないために、より強力な役割を果たす必要がある」と提言しているらしい。
 
 これに先立つ3月には、これまで時に応じて国の情報機関や国防総省に助言してきたグローバル・ビジネス・ネットワーク(Global Business Network)が報告書を出しているが、その中には、海面上昇と暴風雨の巨大化により、バングラデッシュなどの人口が密集した河口地域に人が住めなくなると、ついには社会不安が醸成される可能性が指摘されているという。

 このようなアメリカ国内の変化を見ていると、京都議定書をまとめたわが国政府がこの分野で消極的であることが残念でならない。安倍首相は憲法改正に力コブを入れているようだが、どんなに強力な軍隊をもっても、地球温暖化は防止できない。隣国を仮想敵国に見立てて軍備を増強するという考え方は、前世紀の国防思想である。地球温暖化は国の安全保障の問題でもあることをしっかりと認識し、京都議定書の約束履行はもちろん、“京都後”の温暖化防止のためにも積極的な役割を果たしてもらいたいものである。
 
谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生
直近ですが、渋谷区の代々木公園を中心に、4月21日・22日「アース・ディ2007」(地球の日)の大掛かりなイベントが開催されます。市民サイドの環境問題に対する取り組みの最前線を見聞できると思います。
「アース・ディ2007」のサイトは以下の通りです。
http://210.150.197.171/2007/index.html
数年前に知り合いが参加したので見に行ったことがありますが、HPを見る限り、かなり大規模になっているようです。

投稿: 久保田裕己 | 2007年4月21日 03:21

≪どんなに強力な軍隊をもっても、地球温暖化は防止できない。隣国を仮想敵国に見立てて軍備を増強するという考え方は、前世紀の国防思想である。地球温暖化は国の安全保障の問題でもあることをしっかりと認識し、京都議定書の約束履行はもちろん、“京都後”の温暖化防止のためにも積極的な役割を果たしてもらいたいものである≫

副総裁先生

全く同感でございます。
でも、少し前までは安倍首相と同じでした。(汗!)

4月12日の日経新聞に、アメリカでは株主が企業に「温暖化対策」を求める動きが活発に出てきたと掲載されておりました。

私は家庭用の太陽光発電をメインに事業を展開してきましたが、これからは企業への啓蒙そして、「温暖化対策」として太陽光発電の導入をお勧めすることにします。

早速、100kW~200kWの案件が出てきました。
エネルギー改革の税制でかなり優遇されておりまして、
6年ほどで償却が可能なようです。
経営者も大変前向きに考えてくれております。

100kWの太陽光発電で約4万5千坪の森林が出来たことに相当するらしいので、大きな貢献になると思います。

投稿: 佐藤克男 | 2007年4月22日 00:21

佐藤さん、

>> 早速、100kW~200kWの案件が出てきました。
エネルギー改革の税制でかなり優遇されておりまして、
6年ほどで償却が可能なようです <<

 100kW というのは、かなり大規模だと思いますが、個人の家ですか。それともオフィスビルな何かでしょうか? 差し支えなければ場所なども教えていただけませんか?

投稿: 谷口 | 2007年4月22日 11:29

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