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2007年4月 5日

“炭素ゼロ”をどう実現する?

 4月1日の本欄で太陽光発電装置のことに触れたが、私がその増設を考えている理由は、“炭素ゼロ”を個人的に実現したいと密かに願っているからだ。「炭素ゼロ」という言葉は生長の家の造語で、一般にはなじみがないかもしれない。生長の家でも、本年度の運動方針から使われるようになった“新語”で、一般には「カーボン・ニュートラル(carbon neutral)」という語が使われている。

 この語は数年前から先進国を中心に使われているが、日本語では分かりにくい。その意味は、ある人や団体、企業が日常の活動で排出している二酸化炭素(CO2)と同量のものを、植林や省エネなどの他方面の努力によって相殺することで、炭素の合計排出量を「±0」にすることを意味する。排出炭素量の「相殺(offset)」の側面を強調して、「カーボン・オフセット(carbon offset)」という言葉も使われている。例えば、私が本を1冊出版すれば、その本がダイズ原料のインクや再生紙を100%使っていたとしても、本の運搬や印刷機・製本機の運転、インクや再生紙の製造過程などで必ずCO2が排出される。このCO2の量を計算して、それと同量を植林や省エネで減らすことができれば、この本は“炭素ゼロ”(カーボン・ニュートラル)を実現したことになる。

 そんな複雑な計算や排出削減を個人単独でできるはずがない。が幸いにも、世界にはそういう個人や企業の要望をかなえてくれる(と主張する)団体や企業が存在している。だから、その助言にしたがって、排出したCO2を相殺するに必要な金額を払い込めば、個人や企業は“無罪放免”となるらしい。「らしい」と書いたのには、理由がある。なぜなら、そういう炭素相殺サービスに関してはまだ世界的な基準や規制がなく、本当に“看板に偽りがない”かどうかを確かめる手段も存在しないからである。したがって、そういうサービスを使う際は、よほどしっかりとした団体を相手にしないと我々の努力がムダになる可能性があるのである。
 
 イギリスの科学誌『New Scientist』は3月10日号でこの問題を取り上げて、有意義なアドバイスをいくつも掲げている。まず、この種の炭素相殺事業は大別して、「公式」のものと「非公式」のものがある。公式のものは、京都議定書で定められた諸制度の規則にもとづいて行われていて、規模が大きく、したがって個人の手の届くものではない。そこで非公式のものがいくつも誕生して、個人の善意を満足させたり、企業の罪の意識を和らげる役割を果たしている。ただし、この非公式の炭素相殺サービスをいくら利用しても、実際のCO2の排出削減に貢献することはあっても、京都議定書の目標達成には何も貢献しないという。
 
 京都議定書は脇に置いて、実質的な排出削減を目指したとしよう。それでは、どの炭素相殺サービスに我々の善意と資金とを委託すべきだろうか? 現状では上記のような事情があるため、この質問に答えるのが難しい。そこで同誌は、出資先に次の6つの質問をすることを勧めている--①あなたは特定のプロジェクトによって炭素を相殺するのか?、そのプロジェクトとは何か?、②実際に炭素が相殺されるまでの期間はどれくらいか?、③自分が出資するプロジェクトの進展状況を知ることができるか、独立の調査機関から報告が得られるか?、④“黄金基準”を満たすプロジェクトか?、⑤あなたの会社がなければ、そのプロジェクトは存在しなかったと証明できるか?、⑥あなたは相殺プロジェクトを二重、三重に売っていないことを示せるか、あるいは、自分の出資金は、削減義務にもとづいて行われるプロジェクトを支援するためには使われない、と示せるか?
 
 上にある“黄金基準”(Gold Standard)とは、ある炭素相殺プロジェクトが出資するにふさわしい有効なものであるかどうかを認証する基準として、WWFなどの環境保護団体が共同で定めたものらしい。ここで問題になるのは、プロジェクトの「付加性」(additionality)と呼ばれている。世間には数多くの省エネ努力や植林活動が存在しているが、我々の出資によって1つのプロジェクトが誕生する(付加される)のか、それとも既存の企業のプロジェクト等を支援するのとでは、出資の意味合いが大きく違ってくる。前者は付加性があって意味があるが、後者は単に企業支援であり、結果的に企業利益の増大に貢献することになりかねない。

 このように考えてくると、“炭素ゼロ”実現のために相殺サービスを利用する場合、慎重な検討が必要であることが分かる。ということは、個人が“炭素ゼロ”を目指すには、現時点では“遠くの活動”や“見えない活動”に出資するのではなく、“近くの活動”や“見える活動”に出資する方が賢明ということになるのかもしれない。

谷口 雅宣
 

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コメント

谷口雅宣先生

 本年度、生長の家の掲げる“炭素ゼロ”運動につき、雲をつかむようで戸惑いましたが、先生のご説明でよく理解できました。

 “環境”という大乗的な大問題を掲げる生長の家はなかなか理解されない面もあろうと思います。私もその一人でした。しかし、加速度的に進行する地球温暖化に、私達も今、加速度的運動が必要であると痛切に観じております。
 
 具体的に何が出来るか、私は栄える会の一員ですので、同じ会員がNPO法人として行っているインドネシアへの植林活動、「生命の森」のサポーターとして参加しようと思っています。
 その他、太陽光、ハイブリット車、マイ箸、マイバック、マイ風呂敷、ノーレジ袋、等の“環境アイディア”をコツコツと積み上げていかねばなりません。

 これからも、環境に関する情報、良い環境アイディア、等をご提供、ご案内下さい。信徒は、私も含め、環境という一面専門的な大問題に直面し、何をすればよいか戸惑っているところもあります。ご提言、ご指示をお待ちしております。

投稿: 北田順一 | 2007年4月 8日 15:21

北田さん、

 本欄がお役に立てれば嬉しいです。
 ただ、「栄える会」として組織運動をする場合は、中央部の方々ともよく相談してください。同じ「1万円」でも、1人が出資するのと100人が出資するのでは、効果が大いに違ってくるはずです。ポンイントは、「正しいボタンを効果的に押す」ということだと思います。

投稿: 谷口 | 2007年4月 9日 17:03

谷口雅宣先生

 ご返事ありがとうございます。中央部と連絡を密にし、
「正しいボタンを効果的に押す」よう励んでまいります。
今後とも宜しくお願い致します。

投稿: 北田順一 | 2007年4月 9日 19:05

谷口雅宣先生:
合掌ありがとうございます。炭素ゼロ運動という新しい発想のご指導ありがとうございます。日経エコロジー2007・5月号に、「JTB関東が、Co2ゼロ旅行を企画」と記事が載っていました。旅行により排出されるCo2をグリーン電力証書の購入による相殺するとのことだそうです(通常料金より、1人500~1000円高い)。非常によいことだと、読んだときは、思いました。でも、谷口雅宣先生のブログを読み、本当に効果があるのか、慎重に調べたほうがよいと考え直しました。ただ、時代はCo2ゼロに動きつつあるような気がします。神奈川は、団体参拝練成交通手段に、「飛行機プラス、新幹線コースも導入」を、小田先生が出されました。こういう取り組みのほうが、大切であるとあらためて思いました。再拝

投稿: 長部彰弘 | 2007年4月 9日 19:23

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