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2007年4月21日

アメリカの温暖化防止努力

 前回の本欄では、地球温暖化が国の安全保障の視点からも重大な脅威になりえるとの認識が世界に拡がりつつあることを書いた。ブッシュ政権下のアメリカは、国レベルでは温暖化対策は遅れているが、州レベルでは様々な取り組みが始まっている。今回は、その一部を紹介しよう。

 最近の注目すべき出来事は、4月2日に連邦最高裁判所がCO2などの温室効果ガスを「大気汚染物質」と認定する歴史的決定をしたことだ。これにより、連邦政府の環境保護局には温室効果ガスの排出削減を行う権限があることになり、これまで「そんな権限はない」として温暖化対策を行わなかった理由がなくなってしまった。また、カリフォルニア州では2002年に、すでに温室効果ガスを「大気汚染物質」をみなす独自の規正法(パブリー法)を定め、2009年の新車から排出規制を実施しようとしてきた。ところが、ビッグ3やトヨタなどの自動車メーカーがこれに反対し、「CO2は大気汚染物質ではないから、州に規制の権限はない」として提訴していた。この問題も、今回の最高裁判決で結論が出たことになる。

 アメリカでは、全国レベルでも温室効果ガスの排出削減を義務づける法案がいくつも出てきた。20日付の『朝日新聞』夕刊によると、2004年の同国の温室効果ガス排出量は90年比で15.8%も増えている。これに対して危機感をもった議員が長期にわたる大幅な削減目標を定める法案を提出している。2050年に90年比で「60%削減」するリバーマン=マケイン法案や、同じく「80%削減」をねらうサンダース=ボクサー法案などだ。これらは、短期的には温室効果ガスの排出増を不可避としながらも、化石燃料から代替燃料へ移行することなどによって長期的に大幅な削減を目指すものだ。すでにカリフォルニア州などがCO2の排出権取引に参加する意思を示しているから、削減目標の達成をこれによって行うことになるかもしれない。
 
 このほかアメリカでは、コロラド州のボルダー市が環境対策で先進的な試みを進めている。18日付の『朝日新聞』によると、この4月1日から、同市は全米で初めてCO2の排出量に応じて全市民に課税する炭素税の実施に踏み切った。この地は市民の環境保全の意識が高く、1967年には全米で例のない「環境保全のための消費税」を導入、その税収で市が必要な土地を買い上げて大自然を開発から守る取り組みを実施している。今回の炭素税導入は、連邦政府が京都議定書を離脱したことに反発し、同議定書に定められた通り、2012年までに温暖化ガスを90年比で7%削減することを狙ったもの。同市のマーク・ラザン市長は、「連邦政府が何もしないのなら、我々が草の根的な手法で地球温暖化に対処する必要がある」としているという。

 アメリカのモータースポーツ界でも、環境意識が形になりつつあるようだ。21日付の『産経新聞』によると、インディ・レーシング・リーグ(IRL)では、一昨年まで車の燃料は石油系のメタノール100%だったが、昨年はメタノール90%、バイオエタノール10%の混合燃料となり、今年はほぼ100%がエタノールになるという。IRLはエタノールの製造・販売企業と無償供給契約を結んでいるが、企業側はレース車へのエタノールの使用によって一般車への普及を一気に図る戦略らしい。シリーズ第5戦のインディ500では、1日の観客が40万人と言われるから、そういう宣伝効果をねらっているのだ。また、F1レースを統括する国際自動車連盟(FIA)は、2009年にハイブリッド技術を導入する方針という。

 アメリカ以外で注目されるのは、ノルウェーが2050年までに“炭素ゼロ”を達成するとの計画を発表したことだ。20日の『朝日』夕刊が伝えている。それによると、同国のストルテンベルグ首相は19日、温室効果ガスの排出量を2050年までにゼロにする考えを表明した。これまで“炭素ゼロ”を方針とした国はなく、温暖化問題がテーマとなる6月の主要国首脳会議(G8サミット)を明確に意識した発表である。自国内での省エネ努力のほか、中国やインドなどで自然エネルギーの導入を拡大することで排出権を獲得し、それで足りない分は他国で余った排出権を買い取るなどの方法を使うらしい。これによって2020年には90年比で30%削減し、50年までにゼロにするという。

 日本ではこの27日から、首都圏の50カ所でフランスから輸入したバイオエタノールを混合したガソリンが試験販売されるらしい。バイオエタノールの抱える問題については本欄で何回も書いてきたから、私としては、それを使うかどうか判断に迷っているところだ。

谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

 バイオエタノール燃料についてですが、「生長の家栄える会」の神谷会長が国内で唯一輸入することができる合弁企業をブラジルと設立されたと聞きました。

 これまでいろいろな障壁がおありだったでしょう。しかし、ようやく、時代が追いつき、副総裁先生の訴え続けてこられたことや、神谷会長のご尽力が実を結んだのではないかと大変感激しています。

 今度は、国内での使用に拍車がかかるときです。東大教授の山本良一先生いわく「チームマイナス50から70%でないと地球温暖化はくいとめられない」らしいのです。
 
 私たちは、身の回りの小さな環境への配慮という啓蒙活動も継続しつつも、アジアでのエコマテリアル事業の提唱、温暖化ストップに即効性のある「品種改良された苗木を植林していく運動」など、様々な視点や分野において強力に展開していくつもりです。

投稿: 青木 | 2007年4月22日 21:39

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