“炭素ゼロ”の旅行
今年も大型連休が近づいてきた。私は、5月1~3日に生長の家の組織の全国大会が日本武道館で行われるので、連休前半は動けない。しかし、この東京での大会に全国から参加する人々は、いろいろ工夫して上京してくださるのだ。今年、この連休中の旅行に、例年と少し違う傾向が出ているらしい。それは、近年の環境意識の向上にともない、旅行で排出するCO2を相殺するサービスが登場したことだ。このサービスは「カーボン・オフセット」(carbon offset)と呼ばれるが、生長の家で“炭素ゼロ”と言っているのと同じ考え。詳しくは4月5日の本欄に書いたが、植林や再生可能エネルギーなどに出資することで、CO2の排出分をゼロにする方法だ。22日の『朝日新聞』が伝えている。
それによると、さいたま市にあるJTB関東は「CO2ゼロ旅行」と銘打った団体旅行を発売している。旅行代金の中に旅行中に排出されるCO2を相殺する費用を含み、参加者にはグリーン電力証書が発行される。記事中にある一覧表によると、“炭素ゼロ”のための費用(片道)は、東京から航空機で旅行する場合、札幌までが180円、那覇が350円、ソウル280円、ハワイ1360円、パリ2200円だそうだ。もっと近距離では、1人が100キロ移動する場合、鉄道が3.8円(1.9kg)、バスが10.6円(5.3kg)、乗用車35円(17.5kg)、航空機22.2円(11.1kg)になるそうだ。これは、CO2の値段を1kg当たり2円と仮定した計算で、実際の値段は、ヨーロッパなどで毎日変動する。
記事では、日本でこの活動を行っている団体として「カボーボン・トゥ・フォレスト」(CTF)を紹介しているほか、海外では「クライメート・ケア」や「カーボン・ニュートラル」、「テラパス」を挙げている。
上に書いた交通手段別の1人当たりCO2排出量を見ると、自動車が航空機を上回っているので驚く。これを“ゼロ”にはできなくとも、「3%」だけ減らす新しい方法が、明日(27日)から首都圏でスタートする。バイオエタノールを3%混ぜた「バイオガソリン」が首都圏の50カ所のガソリンスタンドで発売されるからだ。26日付の『朝日新聞』夕刊によると、これは日本の大手石油メーカーなどでつくる石油連盟の試みで、「バイオガソリン」とは、フランスで小麦から作ったバイオエタノールをETBEという物質に変換してガソリンに混ぜたもの。普通のレギュラーガソリンで走る車ならば、そのまま使えるという。販売スタンドは東京が15カ所、神奈川15カ所、埼玉11カ所、千葉9カ所で、詳しい一覧は石油連盟のウェブサイトで見れる。
また近い将来には、航空燃料自体が“炭素ゼロ”になるかもしれない。というのは、イギリスのヴァージン・アトランティック航空が、バイオ燃料を使った旅客機の試験飛行を2008年から始めると発表したからだ。25日付の『日本経済新聞』夕刊によると、同社はアメリカの航空機エンジンメーカーであるゼネラル・エレクトリック社(GE)と共同して、ヴァージンが所有するジャンボ機をバイオ燃料で飛ばすためにエンジンの改良などを行うらしい。
3月17日の本欄に書いたように、航空機と温暖化の間には深い関係がある。その関係をできるだけ減らしたいというヴァージン社の気持は分かる。また、イギリスでは“ブレア後”をねらう保守党が航空燃料に課税する計画をもっていることを、3月14日の本欄で書いた。だから、課税されないような燃料の利用を考えてのことだろう。しかし、この「バイオ燃料」がトウモロコシやサトウキビのように食料と競合するものであれば、食品全般の値上がりにもつながるから、別の問題が深刻化する可能性もある。世界はなかなか複雑である。
谷口 雅宣