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2007年4月22日

緑のインコ (2)

Wakake070422  最近、わが家の庭に緑色のインコが来るようになった。かつて本欄(2005年10月26日)で紹介したワカケホンセイインコである。私にとっては、ジョギングで行く明治神宮外苑でしばしば見かけるお馴染みの鳥だが、妻にとっては“新顔”であり、黄緑色の体や赤いクチバシがなかなか美しいので、飛んでくると「また来てたわ」と報告してくれる。ひと月ぐらい前に、隣の父の家の前にある餌台に2羽が乗っていたのを母が写真に撮った。我々は勝手に、これを番(つがい)だと決めて喜んでいた。そして、妻が円筒形の餌入れに穀類を入れて、わが家に近接して立っている紅梅の枝に吊るしたところ、やがて1羽だけが来るようになった。体長は尾の先まで50センチはあるだろうか。結構大きい鳥だが、動作が緩慢なところがある。
 
 前回、この鳥のことを書いたとき参考にした新聞記事には、都内に約1200羽が棲息しているとあったが、その時には家に飛来することなどなかった。それが2年後に、わが家まで飛んでくるようになったのは、数が殖えているからではないか。高さ20メートルほどのケヤキの大木を繁殖に使うというが、わが家の庭にもケヤキの大木が何本もある。これが目当てならば“片割れ”を連れているはずだが、餌を食べに来るのは1羽だけだ。まずは様子見ということか。この鳥は、インド南部やスリランカが原産で、日本にはペットとして輸入されたものが野生化しているのだ。木の洞を利用するムクドリやシジュウカラを圧迫するという理由で、「特定外来生物」に指定するよう環境省に意見書が出ているらしい。
 
 ホンセイインコ(本青インコ)は、オウム目オウム科ホンセイインコ属の鳥の総称で、楔型の長い尾をもち、羽色は全体に緑色だ。アフリカ、インド、中国南部、東南アジアに12種が分布していて、主として果実をとって食べるというが、穀物も食べる。庭に吊るした餌入れには、ブンチョウにあげるために買っておいたヒエ、アワなどの穀類が入っている。これをよく食べるのだ。ワカケホンセイインコはインド産の亜種で、ワカケは「輪掛け」のこと。首の周りに黒い輪が掛かっているような模様がある。この種はローマ時代から人間に飼育され、物まねをしたり、車引きや車押しなどの芸も覚える、とものの本には書いてある。そういうことを知ってみると、外来種であり、しかも野生化しているはずのこの鳥が、人間の相当近くまで餌を食べに来ることに納得する。ネコやイヌと同じで、遺伝子の中に人間を警戒しない性質が刷り込まれているのだろう。

 ワカケについて1つ気になることがある。それは、この鳥が来ている間、別の鳥があまり近づかないことだ。ヒヨドリやハト、スズメなどは、互いの姿に警戒しないで餌を食べるが、この鳥は外来種だけあって他を“威圧”するのだろうか。ワカケの姿が見えなくなると、地面に盛んにこぼしていった穀類を、シジュウカラが来てついばんでいたりする。
 
 地球温暖化が進むと、外来生物のうちこれまで移入地の環境に充分適応できないでいた生物が、環境の変化によって盛んに繁殖する可能性が増えてくるだろう。ワカケの繁殖がそれに該当するのかどうか、よく分からない。自然界は、しかし確実に変化していることを実感する。
 
谷口 雅宣

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コメント

 私は都下に住んでおりますが、今年、このインコが初めて家の庭にもやってきました。
 桜が咲き始めた3月末、窓の外をみると、なにやら白いものが次々に落下しているのです。咲いたばかりの桜の花が散るのは変だと思ったので、庭に出ると、桜の花びらではなくて、桜の花そのもののが“5弁の花びらをつけたまま”落ちているのです。驚いて見上げると、尾の長い緑色のインコ2羽が盛んに桜の花を啄んでいるのでした。恐らく花の蜜を吸っていたのでしょう。
 このインコは埼玉県の浦和にも生息していると聞きます。確かに温暖化は生態系に変化を与えはじめているのだと思います。

投稿: 三好雅則 | 2007年4月25日 09:45

三好さん、

 新しい情報、ありがとうございます。

 そうですか、このインコはサクラの花を散らすのですか。知りませんでした。そのうち「特定外来生物」に指定されるかもしれませんね。

投稿: 谷口 | 2007年4月25日 13:30

ワカケホンセイインコのお写真を拝見して、他の鳥が近寄らない理由がわかったような気がします。このインコは猛禽類の体形:首が短く尾が長いので、他の鳥は本能的に避けるのだと思います。ガラスに鳥がぶつかって死ぬ事故を防止するのに、猛禽類のシルエットを貼ると効果があるそうです。
次世代への影響も考えずに、可愛いからペットとして輸入して、ちょっと都合が悪くなれば野に放つことはやめてもらいたいです。

投稿: 田上 修 | 2007年4月27日 20:20

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