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2007年3月14日

イギリスの“本気”に見習おう

 今朝放映されたBBCのテレビニュースは、イギリス政府が地球温暖化防止のためにCO2の排出を6割減らすための法案を発表したことを大きく取り上げていた。私は一瞬、耳を疑ったのだが、この6割とは「現在のレベル」を基準としているのではなく「1990年のレベルから60%」という意味なのである。ただし、期限は「2050年までに」と40年以上先が目標だ。今日(14日)の『日本経済新聞』によると、EUは9日の首脳会議で2020年までの目標を「20%削減」と決定したばかりだが、今回の目標ではイギリスは同期間に「26~32%の削減」を決定したことになる。この法案は今後、内容の細部を詰めて秋の英議会に提出されるという。

 昨年秋の『スターン報告書』以降、イギリスの“環境志向”には驚くべきものがある。映画『不都合な真実』でアカデミー賞を取ったアル・ゴア氏(Al Gore)は現在、イギリス政府のアドバイザーになっているというが、それだけが理由ではあるまい。イラク戦争で不評を買った汚名挽回策として“環境”を旗印にすることを決めたのか、あるいは本当に地球環境の現状に危機感を覚えているのか、部外者の私には判断がつかない。多分、両方の理由からだろう。イギリスは現在、労働党政権だから「リベラル=環境志向」と考えるのも単純すぎるようだ。なぜなら、この国では“経済界寄り”と思われる野党の保守党でさえ、環境問題への取り組みに関しては労働党の“上”をいくような主張をしている側面もあるからだ。

 例えば、12日のBBCニュースは、与野党の温暖化防止策の違いを次のように比較している。
 
 労働党の提案:①2050年までにCO2の排出を60%削減
        ②炭素排出量の全国的な上限設定
        ③新築家屋を10年以内に“炭素ゼロ”化

 保守党の提案:①航空機の高頻度利用者への高率課税
        ②航空燃料への課税、または国内線利用時の付加価値税
        ③炭素排出量に応じた航空税
        ④年ごとのCO2排出量に上限目標を設定

 上記の対比で私が驚くのは、保守党の提案が「航空機の利用」に焦点を当てていることだ。航空機の利用は、上流階級や資産家の方が中流以下の人々より多いのは明らかだ。そういう人々の支持を受けてきた保守党が、ここでは支持基盤の不利になるような政策を提げているように見えるからだ。約40万人のイギリス人は海外に別荘やコンドミニアムをもっていて、休暇のたびに航空機を使ってその地との往復をするという。その場合、主として低価格路線を利用していたのが、これでは難しくなるだろう。イギリスでは“ブレア後”を目指した国政選挙が2009年に予想されていて、その前哨戦がもう始まっている。そこでの最大の争点は、気候変動への対応策のようだ。この点、与党も野党も環境対策についてほとんど何も言わない日本の事情とは、ずいぶん違う。

 ところで、現状より6割以上も炭素排出量を減らすことなど、本当にできるのだろうか? 今回の英政府の法案で示されているのは、上記のほか、家庭やオフィスの照明の省エネ化、家屋の断熱の強化、家電製品の待機電力使用の廃止、炭素の排出権取引の実施などで、あまり目新しいものではないようだが、それらを「法律によって義務づける」という意気込みは大いに称賛したい。日本のように「自主的にやればいい」という考え方では、炭素社会から水素社会への“文明の転換”は起こるはずがないと思う。

谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

今月の神奈川教区栄える会では東大の山本良一教授が講演してくれました。

その中で山本教授は「世の中に沢山の宗教家がいるのに、地球が破滅に向かっていることを神から啓示を受けている宗教家が居ないのでしょうか?」というニュアンスで話されておりました。

啓示を受けても何も実行しないだけでしょうか?

それにつけてもイギリスは凄いですね。
「なんとか還元水」がどうのこうのとやっている暇があったら、具体的に地球環境保全への議論をしてもらいたいです。

政治に働きかけるとしたら、我々にどのような方法があるでしょうか?

投稿: 佐藤克男 | 2007年3月15日 19:05

合掌 コメントを開くと僕の名前がのこっていて、どうすれば削除できるのか解りませんが?できれば、削除の方法を教えてください。たぶん書いて出さずにいたので、残ったのがあってこうなったと思われます。
 しかしながら、この文章を読んで、感じたことを書かせてもらいます。テレビで、最近は、この環境問題が多く報道され、国民になじみになりつつあるようです。ぼくは、読んでいて、昔の公害問題、を思いだしました。このときは、政府と被害者が相手であったようですが
今度は、被害者が、地球で、人類があいてになり、皆に降りかかっている福祉問題のようにも思われます。それが、また難しくしているのかもしれません。また、太陽光発電にしても、自分が主に費用を負担しなければなりません。経済的に豊かな人も、貧乏な人もいて、必ずしも豊か
な人が、選択しません。意識が低いというか、自動車でも、かっこいい
大型のサバイバル車がはやっています。ハイブリット車しか、まだ、一般には普及していません。早く、安くて、よいエコの車が、普及するように願いたいものです。
 この村でも、焚き火をしてはいけないと、村では制限が続いて大変です。かといって焼きものなど、たくさん燃やす、燃料については、許されているようです。風呂も燃やしています。
ともかく、co2を削減するためには、アメリカなど大国が、早く車をエコカーにかえることがよいと思われますが、なかなか、それがうまくいかないようで、イギリスの発言は、その魁的な発言で、よいと思います。日本のモット政府の負担をしていただいて、早くされんことを願っています。
再拝

投稿: 杉野 | 2007年3月16日 23:10

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