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2007年3月11日

EU、温暖化対策で合意

 EU(欧州連合)は9日の首脳会議で、温暖化対策として再生可能(自然)エネルギーの利用を加盟国に義務づけ、2020年までにそれらの使用比率をEU全体で20%に引き上げることで合意した。また、EU圏内の自動車の1割を、バイオ燃料で走らせることになる。EUは2月の環境相理事会で、同年までに温室効果ガスの排出量を90年比で最低20%減らすという目標に合意しており、今後の温暖化対策で日本やアメリカより1歩抜きん出た。議長国ドイツのメルケル首相は、この分野で「EUは世界の先駆けになる」と誇らしげに語った。3月10日付の『朝日新聞』、10~11日付の『ヘラルド・トリビューン』などが伝えている。

 今回の首脳会議で難航したのは、EUの各国に対して自然エネルギーの利用割合を義務として20%に引き上げること。構成国の中には旧ソ連圏のポーランドのように石炭を主なエネルギー源としている国や、フランスのように原子力発電に多くを頼っている国がいて、それらの国が「自然エネルギー20%」の義務づけに反対した。結局、国ごとの目標については「各国の状況を考慮して決める」という妥協案がドイツから出たことで、合意が成立した。メルケル首相は、6月に行われる主要国首脳会議(G8)で日米やロシアに対しても同様の目標をもつよう呼びかけるとしている。この機会に、安倍首相にはぜひ「京都議定書議長国」の名に恥じないような、積極的取り組みを進めてもらいたい。

 交渉の過程では、フランスが原子力発電を評価するよう求めたが、オーストリアやデンマークはそれに反対した。フランスの言い分は、ヨーロッパがロシアの天然ガスや石油に頼ることは政治的に利用される危険があり、原子力による安定的供給はそのリスクを減らすことになるという点。これに対し反対派は、原子力施設は経費がさむこと、また将来の安全性が保証されないなどと指摘した。自然エネルギーの利用について、今後、域内の各国がどのような個別目標を立てるかが注目される。
 
 一方、アメリカのブッシュ大統領は、訪問中のブラジルのルラ大統領と覚書を交わし、両国が得意とするバイオ燃料の分野の技術開発で協力し、中米やカリブ海諸国への同燃料の普及支援を拡大することで一致したという。10日の『朝日新聞』夕刊によると、ブッシュ氏は「共通の利益をもたらす代替エネルギーの輝かしい可能性を認識している」と述べたという。京都議定書に参加していないアメリカでさえ、大統領自らが温暖化防止に積極性を示すようになったことは、特筆に値するだろう。
 
 ところで本欄では、日本の温暖化対策が進まないことについて苦言を呈してきたが、多摩大学学長の中谷巌氏が10日付の『産経新聞』の「正論」で、論旨明快に「日本は地球温暖化対策で指導力を発揮せよ」と述べている。わが国は“環境立国”を目指せと書いてきた私としては、諸手を上げて賛成する。中谷氏の提言の理由を箇条書きにすると:①日本は「自然との調和」を文化の基本とする、②平和国家として国家防衛から環境防衛を目指す立場にある、③京都議定書をまとめた実績がある、④高度な環境技術を有している、⑤政府開発援助(ODA)予算を「工業化支援」から「環境保全支援」へと振り向けられる、⑥排出権取引は有効である。

 上記の理由の第6番目については、「環境税」や「炭素税」に比べてまだ不安な面が払拭できない。しかし、「制度改革は何もしない」という現状よりは前進すると思うので、セカンド・ベストの方法としては容認できるかもしれない。上記の論説で、中谷氏は原子力発電のことに何も触れていないのが気になるが、この件はEU内部でも考え方の対立があることだから、今後時間をかけて合意形成を進めていくことは可能だろう。
 
 安倍首相は3月6日の参院予算委員会で、地球温暖化対策についての決意を質された際、「今すぐやらなければ後で大変なコストを払うことになる。京都議定書の目標の達成のために全力を尽くす。日本は優れた省エネ・環境技術を持っている。膨大なエネルギーを消費している中国、インドなどに技術面で支援することで温暖化対策への貢献ができる。米中印という(京都議定書の)枠組みに入っていない国を、ポスト京都の枠組みに参加してもらううえで日本はリーダーシップを発揮しなければならない」(7日『日経』)と答弁している。先にイギリス政府が出した『スターン報告書』の内容を受けているように思うが、「全力を尽くす」という意味が今ひとつ明確でない。上記の中谷氏の提言と比べると、③と④の認識はあっても、その他の4点は考えていないのだろうか。「ポスト京都」を言う前に、現状の日本が議定書の目標よりCO2排出量が14%も上回っている点についての見解と対策を聞きたいものだ。
 
谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生
 一昨日の日曜日、テレビ朝日の番組「地球船宇宙号」で、プラスチックを石油に戻す方が紹介されていました。番組のHPには、次のように書かれていました。
《現在、世界中で問題になっている“地球温暖化”。大きな要因は、大気中の温室効果ガス(二酸化炭素等)の増大です。二酸化炭素を増大させる原因のひとつは、私たちの家庭から出されるゴミ。ゴミを集める事や、処分する事で二酸化炭素を排出しているのです。神奈川県茅ケ崎市にある(株)ブレストでは、このゴミを使って燃料を作り出そうと日夜、挑戦を続けています。その中心人物が 伊東昭典さん(47歳)。
家庭から出るペットボトルの蓋や、プラスチックから出来ているお菓子の袋などを使って、油を作り出す「油化装置」の開発をしています。「プラスチックゴミから油」という新たなリサイクルです。その話題は、はるか海の向こうにある小さな島にまで届いていました。「マーシャル諸島共和国」。5つの独立した島と29の環礁からなるこの国は、温暖化の影響を受け、100年後には海面上昇により国自体が沈んでしまうと言われています。ここでは、ゴミ問題も深刻です。島内はもちろん、観光客が残していったゴミは、処理場がないため美しい海にすべて埋め立てているのです。油化装置を使ったリサイクルを確立し、発電機などの燃料にしたい。マーシャル諸島共和国の大統領は 伊東さんに、国をあげて油化装置を使ったゴミのリサイクルをしたいと話を持ちかけました。伊東さんはその話を快諾。油化装置を持参してマーシャル島へ飛び立ちました。地球温暖化が深刻化する今日、私たちが出来る事について考えてみませんか。》

投稿: 久保田裕己 | 2007年3月13日 01:26

続き
この装置は、灯油やガソリンなどと区分けすることが出来、伊東さんは、将来的には各家庭に1台設置して、プラスチックの再利用を目指していました。伊東さんの家では子供たちがプラスチックを分類して、まず自分たちで使っていましたが、日本では法律によってこのガソリンでは公道を走れないそうです。
マーシャル諸島では、青年海外協力隊の指導の下、子供たちがプラスチックのゴミを集めていました。街角には、プラスチックのゴミを集めるゴミ箱がすでに設置されています。
たまたま見た番組ですが、こういうリサイクルもあるのだなと思いました。

投稿: 久保田裕己 | 2007年3月13日 01:35

番組名は「素敵な宇宙船地球号」でした。その趣旨は、
《私たちが暮らしている地球が、大宇宙に漂っているひとつの宇宙船だとしたら、動物も植物も、土や大気や石さえも、同じ宇宙船に乗り合わせた乗組員なのかもしれません。
一乗組員に過ぎない私たちは、これまで他の仲間たちをないがしろにし、自分たちの幸福だけを追求しすぎたようです。
その結果が現在の地球環境です。未来の“宇宙船地球号”乗組員のために、今私たちができることは?その答えを探り、喜びと感動を分かち合いたい…
それが『素敵な宇宙船地球号』という番組のメッセージです。》
となっていました。提供は「プリウス」のトヨタグループです。

投稿: 久保田裕己 | 2007年3月13日 01:41

副総裁先生

本当の「美しい国」とは環境保全に積極的でなければ「美しい国」にはなりえない気がします。
テロがどうだとか、核がどうだとか言っている間に温暖化の暴走が始まったら、人間の存在自体が否定される時が来るのです。

先日、「ガイア・シンフォニー」というDVDを観ましたが、地球自体が一つの生命体であるとの考え方から、色々なものを観ているのです。人間の大腸に悪玉菌と良玉菌があるように、地球に存在している人間にも「悪玉菌」と「良玉菌」があるのだなと思わされました。

投稿: 佐藤克男 | 2007年3月13日 09:22

 私も⑥と原発へのノーコメントは不安です、
『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』という名古屋大教授の著書に、
「少し前まではヨーロッパなどの国では森林が二酸化炭素を吸収するなどという論理がはじょうしていることを知っていたので、京都議定書で定める二酸化炭素吸収の対策方法の一つに入れるのに反対だった。
 しかし、あまりにも日本が教鞭に森林の二酸化炭素吸収量を対策の中に入れることを要求したために、政治的配慮から二酸化炭素の吸収源として森林を認めても良いという動きもあったという。」
 こんなことをしておいて、排出権取引だなんて…

ペットボトルも、谷口清超先生がおっしゃられていたように、はじめから使わないのが正解のようです。
先の教授の本では、リサイクルはさらに二酸化炭素を出し、
今のところ、ただ一部の団体に税金が流れる仕組みのようです。
ペットボトルは、石油の消費量から見れば1000分の1、
石油は主に産業で使われているので、経済発展を視野にいれない方法でないと、意味がないそうです。

 リサイクル論は、消費をあおるための宣伝なのではないでしょうか?
最近の環境に関する情報は、金儲けのための、煽動的要素がまじっているので、消費者は騙され、余計に二酸化炭素を出しているように思えます。

 また、原発は、夜間にも電力を使わないといけませんので、夜空が明るくなり、植物が酸素を作る力が弱まるそうです。

 本来は、温暖化ではなく、光害によって植物が酸素を出しにくくなるための窒息死が問題らしいのですが、「地球環境サミット」では、やはり企業や各国の思惑のせいで、問題も基準もすり替えられたそうです。
 お金をとるか、地球をとるか、といったところなのでしょうか。

 日本のミツバチも宮崎延岡市でいなくなったそうです。

投稿: 松尾かおり | 2007年3月13日 10:44

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