環境意識は向上している (3)
地球環境問題の深刻さへの理解が進んできたためだろうか、環境意識の高まりを示す動きがいろいろ出てきているのは、喜ばしいことだ。
まず日本のことを言えば、アカデミー賞の受賞も手伝ったのだろう、2月7日の本欄で書いた映画『不都合な真実』の書籍版がよく売れているそうだ。320ページを超える大部の本で2800円という値段だが、1月の発売から2カ月で15刷となり、18万部を売り上げているそうだ。映画本は2千~3千部が相場と言われている中で異例の売れ行きという。(3月6日『日経』夕刊)
日本企業の環境努力という面では、植物性プラスチックの利用が玩具の分野にまで広がってきた。6日の『日経』によると、玩具メーカーのタカラトミーは、東レと共同で植物を原料とする樹脂を多用した新しいプラスチックを開発し、これをを玩具の素材として採用する方針を決めたという。新素材は、トウモロコシを原料とするポリ乳酸樹脂を5割含有し、それに強度を与えるために添加剤などを配合し、従来の石油系樹脂のABSと同等の強度を実現したという。ABS樹脂に比べて、生産から廃棄までのCO2排出量は15%、石油資源の消費量も13%削減できるとしている。これを癒し系のマスコット玩具「のほほん族」に4月から採用を始め、2009年度には同シリーズの国内分全部を新素材に切り替える方針という。
京都議定書によるクリーン開発メカニズム(CDM)を利用して温暖化ガスの排出削減をするためには、国連の認定を得なければならないが、松下電器産業はこのほど日本企業として初めて、それを得た。CDMは、日本企業が海外で排出削減をした分を日本の削減分として認めてもらう制度。同社は、マレーシアの同社のグループ工場10カ所で家電製品や部品を製造する際、空調や熱源の設備効率化によって省エネを行い、4月以降の10年間に毎年8100トンのCO2の排出削減を行う計画で、この分のCO2を、日本の削減量に算入することを国連が認めたことになる。(7日『日経』)
日本近海の海底に、大量のメタンハイドレードの埋蔵が確認されたというニュースもある。これは、メタンガスと水が低温高圧下でシャーベット状に固まった資源だ。今回発見された分を国内で消費される天然ガスの消費量に換算すると、14年分に当たる1.1兆立方メートルになるというから、勇気づけられる。メタンガスは、石油に比べて温暖化ガスの排出量が少なくてすむ点は歓迎すべきだ。また、エネルギーの安全保障という面で重要な発見と言えるだろう。しかし、石油と同様に化石燃料であるから、燃やし続ければ温暖化が進行することに変わりはない。(6日『日経』)
アメリカでの新しい動きとして注目されるのは、カリフォルニア州など西部の5州の知事が、温暖化ガスの排出削減のための共同プロジェクトを立ち上げることで合意したことだ。2月27日の『朝日新聞』夕刊が報じている。それによると、これら5州は、今後半年以内に排出量の削減目標を設定し、来年8月までに排出権取引市場の創設などを含む具体策をまとめるという。同国では、ニューヨークなどの東部7州がすでに2005年末に同種のプロジェクトで合意しており、これにマサチューセッツ州を加えた8州は、2009年から排出削減計画を開始する予定という。
中国のことを挙げれば、この国はついに石油や天然ガスなどの国内価格の統制を緩和する決定をしたらしい。(6日『日経』)中国はこれまで、国内の石油製品の価格を国際価格より低く設定する価格統制をしてきた。これにより、天然ガスは国際水準の約半分、昨年の石油製品の価格は同じく約3割低く、これが昨年の国内のエネルギー総消費量を前年比で9.3%増やす要因となっていた。ただし、価格統制は全面解除とはならず、一部残されるという見方が有力である。
谷口 雅宣
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