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2007年2月26日

環境省は“本筋”を通すべし

 24日の本欄で、日豪の温暖化対策を比較した際、日本の環境省には厳しく、オーストラリアを誉めすぎた気がする。日本は産業分野での省エネ努力は先進国ではトップクラスで、日本の省エネ技術、日本製品の省エネ度も大変優秀である。この成果に環境省とその前身である環境庁が大きな役割を果たさなかったはずはない。

 これに対しオーストラリアは、京都議定書に参加しなかっただけでなく、2004年の国民1人当たりの温室効果ガスの排出量は先進国の中では最大という悪い成績だ。26日付の『ヘラルド・トリビューン』紙に寄稿したウイリアム・ペセック氏(William Pesek)によると、同国のハワード首相は、アル・ゴア氏の映画『不都合な真実』のことを「娯楽映画だ」と言ったり、白熱灯の廃止をぶち上げたターンブル環境相でさえ、2月に野党の労働党のことを、彼らはオーストラリア国民を「アル・ゴア式に『デイアフター・トゥモロー』的大洪水が来ると言って脅している」と批判したらしい。しかし、そういう豪政府でさえ、最近は軌道修正を余儀なくされているのだ。ペセック氏が挙げる理由は2つ--①昨年来の厳しい旱魃が国民の意識を変えつつある、②ハワード首相には今年、選挙がある。
 
 そういう文脈でわが国を見たとき、京都議定書の議長国であり、この条約を率先して守るべき立場にある日本の行政が、それに相応しい熱意をもって動いていないように見えるのが、私は残念でならない。2月4日の本欄で、環境省が計画している二酸化炭素の地下固定のための海洋汚染防止法の改正について触れたが、その際、この法改正を経産省がやるのでなく、環境省がやる点について疑問を呈し、「経産省はその仕事がら、経済界の利益になることを推進するのは当然としても、環境省が経済界の利益を第一に考えるのでは困る」などと書いた。これは言葉足らずだった。国の法律には、それぞれの所管官庁があり、海洋汚染防止の立場からは環境省がこの法律の改正に関わるのは当然である。私が言いたかったのは、CO2の地下固定に関わる企業は、その排出を最も多くしている企業だから、よほどしっかりと企業側の“仕事の質”を見極めて許認可をしなければ、次世代、次々世代の人類を犠牲にすることになる、ということだ。許認可権をもつ官庁と、許認可を受ける企業との癒着は、しばしば問題になっていることを忘れてはなるまい。
 
 そんなことを考えていた矢先、今日(26日)の『日本経済新聞』に気になる記事を見つけた。環境省が策定を進めている環境影響評価(環境アセスメント)の新指針案には、アセスメントの対象に「発電所」が明記されていない、という内容だ。現行の指針では、高速道路、鉄道、空港、発電所など13の大規模工事をする際、ほぼ計画が確定してから環境アセスを実施する。これでは、工事後の環境問題が予見できる場合でも、計画の大幅な変更が難しかった。新指針では、環境アセスの時期を早めて、事業計画が固まらない段階で実施することで、道路のルート変更や事業中止などを可能にしようとするものだ。ところが、新指針案では、環境アセスを実施する対象に「発電所」を明記しないらしい。その理由を『日経』はこう書いている--
 
「対象事業のうち発電所については火力や原子力など発電方式が二酸化炭素(CO2)排出に大きな影響を及ぼすため、早期のアセス実施が必要との指摘もあった。しかし、電力会社が“計画が初期段階で明らかになると立地に問題が生じる”と猛反発。新指針案では明記を見送ることになった」

 もしこれが本当なら、「ウソだろう」と言いたくなる。発電所の立地に問題があるかどうかを審査するのが環境アセスであるはずだ。立地に問題が生じるから早期のアセスはやらないというのでは、電力会社に立地を決めさせることを意味する。これを本当に環境省が決めたのか、と私は疑う。企業の“健全育成”をはかる経産省ならそんな方針を出すかもしれない。しかし、企業による環境破壊を未然に防ぐ任務のある環境省が、企業活動に過度に同情的であっては「環境省」の名に値しない。わが国に経産省が2つある必要はないのだから、環境省の設置目的に沿った環境行政をおこなってほしいものだ。 

谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生
本欄でも取り上げられました「不都合な真実」がアカデミー賞を2部門で受賞しました。この受賞が米国のみならず、地球規模で地球温暖化防止に役立つことを祈ります。以下配給会社から届いたメールを掲げます。
『不都合な真実』
第79回 アカデミー賞(R)「最優秀長編ドキュメンタリー賞」&「最優秀歌曲賞」2部門受賞

アメリカ元副大統領アル・ゴアの半生を追い、米国映画史上第3位(ドキュメンタリー映画)の衝撃の大ヒット ドキュメンタリー映画!!
 当初77スクリーンでの上映で全米トップ10入りし、アメリカ・ドキュメンタリー映画史上第3位の大ヒットを記録した映画『不都合な真実』。本作品は、今の地球と明日の家族や自分が滅亡するまでの"驚愕"のシナリオを、アメリカ元副大統領のアル・ゴアが「地球温暖化」を通して伝える、衝撃的で感動的な物語です。
 日本でも1月20日公開にも関わらず、ドキュメンタリー映画として類を見ない大ヒットを記録し続けており、書籍版「不都合な真実」でもベストセラーとなり、一種の社会現象といった現象を巻き起こしております!
 本作『不都合な真実』が第79回アカデミー賞にて、

★最優秀長編ドキュメンタリー賞
★最優秀歌曲賞
"I Need to Wake Up"byメリッサ・エスリッジ(Melissa Etheridge)
受賞。
監督:デイビス・グッゲンハイム 製作:ローリー・デイヴィッド、ローレンス・ベンダー、スコッ
ト・Z・バーンズ
出演:アル・ゴア/(原題)An Inconvenient Truth/2006年・米/上映時間:96分
<公式ホームページ> http://www.futsugou.jp/
配給:UIP映画

投稿: 久保田裕己 | 2007年2月27日 00:16

 いつもありがとうございます、度々すみません、
オーストラリアと日本と言えば、
今タスマニアの森に日本の製紙会社が入り、森を伐採しているそうですね、
9割が日本へ行き、紙に。
外国で仕入れると安いという理由からだと思います。

 副総裁先生の今日のブログを拝見して、やっぱり経済が優先されているんだなぁと実感しました。

 製紙業者だけが悪いというのではなく、製紙業者も、非木材紙のケナフ紙の品質をアップするなどしてがんばっているようなのですが、
 いかんせん値段が高く、適応するプリンターやコピー機もなく、
普及しづらいものです。

 最近の本は、再生紙が使われているそうですが、再生紙とはいえ、木材紙なら元は木、
 日本人一人一人が紙に対する価値観をアップしないとだめなのでしょうね。
「紙で包むのが日本の伝統でしょう」と言われます。
私は自分の本は、非木材紙のケナフ紙で作りました。
焼け石に水ですが…

 未確認ですが、残された森は、5%と聞きます、
本当に日本のせいで森がなくなったらどうしようと思います。
でも環境省には期待できないので、一般人に出来ることは消費によって企業に方向転換させることだけなのでしょうか?

投稿: 松尾かおり | 2007年2月27日 01:42

久保田さん、

 『不都合な真実』がアカデミー賞のオスカーを受賞したことで、アル・ゴア氏の次期大統領選への立候補が取りざたされるようになりました。しかし私は、彼が副大統領時代よりも一回り太った様子なのを見て、立候補はしない方がいいと思いました。

松尾さん、

 紙の使用量の問題ですが、文書伝道の伝統のある生長の家にとっては、真剣に考えるべき問題と思います。現在は、再生紙の割合を増やすことを行っています。

投稿: 谷口 | 2007年3月 1日 14:09

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