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2007年2月17日

ネコの“魔力”

 生長の家講習会のために静岡へ向う新幹線で読んだJRの車内誌『ひととき』(2月号)に、宗教評論家のひろさちや氏がネコについて興味ある話を書いていた。日本にはもともと野生でない家ネコはおらず、奈良時代の初めに中国から輸入したものが日本の家ネコの先祖になったのだという。だから釈迦の入滅を描いた涅槃像には、少数の例外を除いて、日本ではネコは描かれていないそうだ。描こうにも、当時の日本人はネコをよく知らなかった可能性があるというのである。しかし、日本の伝承ではそうは言わずに、涅槃像にネコが描かれていない理由は「間に合わなかったから」とか、「ネズミにだまされたから」という説が伝わっているそうである。

 しかし、奈良時代から江戸時代まで800年以上あり、江戸は“徳川300年”だ。この1千年以上の間には、ネコを涅槃像に入れたいとする動きはなかったのか、と思う。釈迦の入滅時には52種類の動物が集まったとされるが、そこにネコが含まれず、十二支にもネコは含まれていない。ネコは、イヌとともに人間に最も“近い関係”にあるとされる動物であるが、それでも仏教ではイヌと同等には扱われない。仏教は、もちろんインドから中国を経て日本に伝わったのだから、奈良以前の日本にネコがいたかいないかとは別に、ネコを特別扱いする理由がそこにはあったと見るべきだろう。本欄でも、ネコを特別扱いして何回も触れている(最近では2月5日、昨年は5月26日、8月25日、10月6日、11月27日、同29日)。その理由は恐らく、私を含めた多くの人間が、ネコのことを気にしているからだろう。

 昨日(2月16日)の『朝日新聞』の夕刊には、「小笠原諸島で繁殖した野ネコを捕獲し、東京へ運んできて飼う」という試みが報じられていた。小笠原諸島には、貴重な固有種であるハハジマメグロやアカガシラカラスバトなどの鳥類が棲息するため、世界自然遺産の候補地にもされている。それらを“外来種”である野ネコが捕食する可能性があるため、地元のNPO「小笠原自然文化研究所」と東京都獣医師会の有志が協力して、ネコを殺さずに東京で飼う試みを始めたというのである。同諸島の父島と母島には野ネコが数百匹いると推定されているが、殺処分には島民の反対もある。それに、島に人間が住むかぎり誰かがネコをまた持ち込むというのである。
 
 こういう話を聞くと、ネコにはやはり“魔力”があると思う。小笠原では、野ネコと同じように希少種を駆逐しているという理由で、外来種のトカゲや野ヤギ(野生化したヤギ)が捕獲され、殺処分されている。ところが、ネコだけは「人間に親しい」という理由で、殺されずに遠方へ送られて手厚く保護されているのだ。上記の記事によると、小笠原から東京へ送還されたネコは現在のところ20匹。都獣医師会に所属する都内の約740箇所の動物病院が、彼らを受け入れてくれるという。

Mtimg0702162 「しかし……」と私は思う。小笠原からの“送還ネコ”はそれで満足かもしれないが、都内にゴマンといる町ネコたちからは、「それはないぜ」という不満の声が出るような気がする。扱いがあまりにも不平等だからだ。もちろん「ネコ同士の平等」など、日本国憲法に定められていない。しかし、何かすごくバランスがとれていない感じがする。わが家のノラたちには今、恋の季節が訪れていて、数匹が集まって甘い声で鳴いたり、うなり合ったりしている。街中でも、ネコがネコを追いかける姿をよく見かけるようになった。こういう町ネコたちは、東京のビルの谷間と人間の腕の間を渡り歩きながら、これからもどんどん殖え続けていく。“小笠原出身”ネコも結局、その中に加わるのではないだろうか。(絵のネコは、霞ヶ丘団地の公園で会ったノラ)

谷口 雅宣

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コメント

いつもすばらしい内容ですね。深い関心を寄せて読んでおります。
ただ、つい最近のレイアウト変更は、少し読みづらくなったと思います。
WEB画面を最大に開かなくても読めるような工夫をしていただけたら幸いです。
1月までの、変更前のレイアウトのほうが、読みやすいです。

投稿: てんし | 2007年2月20日 02:59

てんしさん、

 本欄のレイアウト変更はしていないはずです。また、Web画面を最大にしなくても本欄は読めるはずですが……。Am I missing something?

投稿: 谷口 | 2007年2月20日 11:45

谷口雅宣先生
今日のお話についてですが、最近テレビのニュース(番組かも)で、この小笠原の猫の事を知りました。小笠原からゲージに入れられて運ばれた猫は、一旦動物病院で人間たちに慣れるようにしています。最初は、人間になつかないのですが、様々な人間が猫に声をかけたり、餌を与えたりしているうちに、人間に慣れ、そこで初めて里親を紹介しているようでした。今から30年ほど前、旅行会社に勤務していたとき、小笠原には10数回添乗員で行きましたが、その自然のスケールに圧倒されました。世界自然遺産に一日も早く登録される事を願います。

投稿: 久保田裕己 | 2007年2月20日 14:45

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