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2007年2月24日

温暖化対策、日豪の違い

 アメリカとともに京都議定書から抜けていたオーストラリアが、温暖化ガスの排出削減に真面目に取り組む姿勢を見せてきた。これは、喜ばしいことだ。白熱灯に替えて蛍光灯の使用を推進していく方針を20日、連邦環境大臣のマルコルム・ターンブル氏(Malcolm Turnbull)が発表した、と21日付の『ヘラルド・トリビューン』紙が伝えている。州政府と相談して、2009年か2010年には白熱灯を全廃したいとしている。
 
 発表の席上、ターンブル氏は、世界中で白熱灯をやめて蛍光灯にすれば、2030年までにオーストラリアの電力使用量の5年分が節約できるという国際エネルギー機関(IEA)の試算を引き合いに出したり、全世界の電気照明から排出される温暖化ガスの量は、地球上の全乗用車から排出される量の70%に達するなどのデータを示して、この方針の有効性を説明したという。
 
 同国には、電機製品などに適用される「最少ネルギー消費基準」(minimum energy performance standards)という省エネ基準があり、これを一部の例外を除いて電球に適用することで、白熱灯を事実上販売できなくすることが可能という。一部の例外とは、医療用の照明やオーブンなど。同国では、これと似た方法で、すでにトイレ用の大型水槽や風呂場で使う高圧シャワー・ヘッドの使用を段階的に廃止してきた。白熱灯の廃止を表明したのは、同国が始めてという。

 これに比べて、わが国の環境省は20日、二酸化炭素の地下固定の技術を国内に導入するための海洋汚染防止法の改正案をまとめた、と21日の『朝日新聞』が伝えている。この2つの方針の違いは際立っている。オーストラリアの方法は実質的にCO2の排出削減を行うものだが、日本の方法は、いったん出されたCO2を地下深くに封入するものだ。この話は2月4日の本欄でも触れたが、『朝日』の記事には「発電所や工場など大規模な排出源からパイプラインなどを通して、海面下約1千メートルの地層に閉じ込める」とある。問題は、封入したCO2が将来的に漏れ出す可能性が否定できないことで、この点を見越して、今回の改正案では、海底下へのCO2の投棄を環境相の許可事業とし、漏出の有無を長期的に監視する義務を事業者にもたせるものという。排出削減はもう諦めてしまったのか、と疑いたくなる。

 CO2の地下固定については、ハーバード大学の地球宇宙科学部のダニエル・シュラグ教授(Daniel P. Schrag)が2月9日号の『Science』(vol 315, pp.812-813)に書いているが、地球温暖化防止の緊急性から見て有望な技術であっても、まだまだ確かなことは分かっておらず、技術も確立していないのである。シュラグ博士によると、海洋には大気中に含まれる量の50倍ものCO2が主に深海部に存在しているという。海藻や魚介類が吸収したCO2が、海底にゆっくりと沈殿していくらしい。だから、千年から2千年の時間をかければ、人間の活動で排出されたCO2の9割を、ここに吸収するだけの容量はあるという。しかし、このような海底の沈殿物や、地下の地質にCO2を注入した場合の“漏出”の正確な割合などについては、あまり研究が行われていないという。

 現在、CO2の地下固定の場所として考えられているのは、地下深くの帯水層や、古い油田やガス田であるが、そこには液化したCO2が、密度の高い岩盤に囲まれたり、毛管現象によって滞留しているという。そして、シュラグ博士によると、それらは「もし亀裂や断層や古いドリル穴によって沈殿状態が乱されれば、漏れ出すことがある」のである。世界にはCO2の地下固定のための実験場がいくつかあり、それぞれが年間約100万トンのCO2を地下に注入しているそうだが、この量は、今世紀半ばに毎年排出されると予測される「10億トン」に比べれば、わずかである。このような大量のCO2を地下に注入した場合、漏出する量はどうなるかの研究データなどまだ存在しない。

 そんな中で、日本は法律を改正してすぐにでもCO2の地下固定をしようとしているのである。実験データ蓄積のための法改正なら、私ば反対しない。が、次世代や次々世代の人々に危険を負わせるような方策は、放射性廃棄物の地下投棄と同様に、世代間倫理の無視であり賛成できないのである。
 
谷口 雅宣

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