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2007年2月27日

環境省は“本筋”を通すべし (2)

 昨日の本欄では、同日付の『日経』の記事をもとにして、「環境省が策定を進めている環境影響評価(環境アセスメント)の新指針案には、アセスメントの対象に発電所が明記されていない」と書いた。この文章は、前回引用した記事に加え、次のような文章から判断して書いたものだ:
 
「2007年度から計画の初期段階からアセスメント実施を義務づけることになるが、最大の焦点だった発電所については、新アセスメントの対象として明記しなかった。」

 これでは、どう読んでも新指針案では「発電所」が特別扱いになっていると読める。ところが、今日(27日)付の『朝日新聞』は、同じ新指針案について、次のように書いている:
 
「ガイドライン案では、道路や鉄道、空港、ダム、発電所、産業廃棄物処分場建設など現在の環境影響評価法が対象とする13事業をSEAの対象と想定。」

 つまり、「発電所」は新指針案の13事業にちゃんと含まれているのだ。これはオカシイと思い、環境省の総合環境政策局環境影響評価課に確認をとってみた。すると、担当者の弁は、「2月26日の日本経済新聞の記事はこちらの意にそぐわない内容です。(新指針案からは)発電所を外してはいません」というのである。環境省の担当者がそう言うのなら、『日経』の記事が誤っているのである。あるいは(考えにくいことだが)、『日経』の記者は、別のニュースソースから環境省の担当者が知らない情報を得て記事を書いたのかもしれない。いずれであるのかは確かめようがないが、私の前日の評価が事実誤認にもとづいた可能性があるため、昨日の文章の最後の段落を少し書き換えた。

 また、昨日決定したのはあくまでも新しい指針の「案」だから、まだ本決まりではない。後日の変更によって発電所を特別扱いする可能性もあるし、そうならないかもしれないので、ここでは目くじらを立てないことにする。

 上記の引用文にある「SEA」の意味だが、これは Strategic Environmental Assessment の頭文字を取った語で、環境省のウェッブサイトの説明では、「個別の事業実施に先立つ“戦略的(Strategic)な意思決定段階”、すなわち、政策(Policy)、計画 (Plan)、プログラム(Program)の“3つのP”を対象とする環境アセスメントであり、早い段階からより広範な環境配慮を行うことができる仕組みとして、その導入が国内外で議論され、実施されはじめているもの」という。日本語では「戦略的環境アセスメント」と呼ぶらしい。何かすごく大げさな表現だが、簡単に言えば「事業の計画段階で環境への影響評価を行う」ということだろう。詳しくは、このサイトに説明がある。
 
 ところで今回、発電所の建設をめぐって新指針案への異論があったことは事実のようだ。『朝日』の記事もそのことに触れて、「計画段階で事業内容が明らかになると地価高騰を招き、手続きの長期化・コスト増となる心配もあるなどとして、根強い反対がある」と書いている。だから、新指針案では、民間が行う事業では計画段階での手続きが終了した後に、計画を公表できる余地を残し、さらにこの新たな手続きには法的拘束力がないことも明記したという。この辺の内容は、新聞記事だけではよく分からない。実際の指針案の公表を待つほかはない。
 
 生長の家では今日から、日本と海外の代表者が東京・原宿の本部会館に集まって、4月からの新しい運動について話し合う「生長の家代表者会議」なるものが始まった。そこでは、森林の機能を生かしたまま本部の業務を遂行するための“森の中のオフィス”を、2011年度までに設置する計画を含めた運動方針が話し合われた。実際の設置場所の選定に際しては上記のSEAの手続きを踏むことになるかもしれないので、今回の指針案の推移には関心をもたざるを得ないのである。

谷口 雅宣

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