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2007年1月 7日

動物の脂からバイオディーゼル

 前回の本欄では、アメリカでのバイオエタノール精製工場の増設ラッシュが、食糧問題を引き起こす可能性について書いた。これは昨今の石油高騰の影響だから、アメリカでなくとも、人口の多い国ならどこでも同様の問題は起こりえる。ただしアメリカの場合、世界最大のトウモロコシ産地だから、その影響は地球規模に及ぶのだ。実は、隣の中国でも似た問題が起きかけていたが、中国政府は素早く手を打って「食糧優先」の政策を明確に打ち出している。
 
 昨年12月23~25日の『ヘラルド・トリビューン』紙によると、中国財務省は昨年11月、世界最大の人口を抱える同国内への食糧の輸入を増やさないために、食料としての量が十分ある場合を除いて、イモ類やナッツ類を燃料に転換するプロジェクトへの出資を認めないとした。さらに年末には、中国政府はバイオ燃料(バイオエタノールやバイオディーゼル)の生産に投資する際、国の許可を必要とする規則を施行した。これは、石油の高騰の影響で、一部地域にバイオ燃料生産のブームが起こっているからで、同国内での急速な自動車の増加がその背後にある。中国の昨年11月までの通年の自動車販売台数は341万台で、日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第2位の“自動車大国”になった。また、バイオエタノールの生産量と消費量では、ブラジルとアメリカに次ぎ世界第3位である。
 
 中国の場合、急速な近代化や工業化にともなう砂漠化や公害が深刻で、その影響で災害も頻発している。小麦生産用に取りおいてあった用地で昨年、農地に不向きと判断されたものは24%に達したという。そういう意味で、食料の大輸出国であるアメリカとは事情がやや違う。だから、政府の対応もそれだけ素早いのかもしれない。
 
 バイオ燃料について、アメリカでは動物性のものの製造が考えられているようだ。1月5日の『ヘラルド・トリビューン』によると、ミズーリ州南東の町デクスターには、500万ドルをかけてニワトリの油からバイオディーゼルを精製する工場を建設中の起業家がいるという。この近くにはアメリカ第一の食肉会社「タイソン食品」(Tyson Foods)のニワトリ処理工場があり、ここから出た低質油は、これまで別の州へ運ばれてペットフードや石鹸などに加工されていた。この企業家は、その粘性の強い油を精製し、ダイズ油と混合して年間約1100リットルのバイオディーゼルに転換する計画という。ダイズ油の高騰によって、この種の低質油の需要が増えてきているらしい。昨今のダイズ油は1パウンド33セントするのに対し、ニワトリの油は同じ重さが19セントと安いからだ。
 
 タイソン食品自身、昨年11月には再生可能エネルギー部門を設立し、今年から業務を始める計画だ。また、ライバルであるパードゥー・ファーム社(Perdue Farms)やスミスフィールド食品(Smithfield Foods)も同様の動きをしているという。バイオディーゼルのことに詳しいミネソタ大学の経済学者、ヴェルノン・エイデマン教授(Vernon Eidman)によると、アメリカでは5年以内に10億ガロンのバイオディーゼルが製造されるようになり、その半分は動物性油脂から作られるだろうという。業界団体であるアメリカ・バイオディーゼル評議会(Natioal Biodiesel Board)の概算では、現在の生産量は、2005年が7500万ガロンで、2006年は1億5000万から2億2500万ガロンの間という。

 さて、これらの動きがどのような経済的変化をアメリカ社会にもたらすか、私は専門家でないのでよく分からない。しかし、中東の石油への依存度が減ることは確かだろう。私が気になるのは、食肉の製造過程で得る動物性油脂から燃料を作るのと、従来通りのダイズやトウモロコシを原料とした植物性油を使うのと、どちらが環境への負荷が少ないかだ。動物の飼料効率を考えると、直感的には後者の方が環境への負荷が少ないと思われる。いずれにしても、「農地を人間と自動車が奪い合う」という関係は変わらないのではなかろうか。

谷口 雅宣

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