世界はバイオ燃料へ急傾斜?
今日行われたブッシュ米大統領の年頭教書演説では、バイオエタノールなど再生可能燃料や代替燃料の使用を増やし、2017年までに年間350億ガロンとすること、また自動車の燃費基準を強化してガソリン消費量を同年までに85億ガロン減らすなど、今後10年間でガソリン消費量を20%減らす方針が発表されたらしい。私は全文をまだ読んでいないが、今日(24日)付の『日本経済新聞』夕刊がそう伝えている。ブッシュ氏が1年前の年頭教書で「アメリカは石油中毒だ」とブチ上げて以来、同国のバイオ燃料は急速に伸びた。今後はさらに、その勢いが増すと思われるから、地球温暖化防止の意味では大いに歓迎すべきことだろう。しかし、1月6日の本欄でも書いたように、今後、トウモロコシなど燃料と競合する食料の値上がりを初め、食品全般の値上がりも予想されるから、手放しでは喜べない。
今回のブッシュ演説の内容は、事前にある程度発表されていたが、バイオ燃料へこれほど力を入れるとは予想外だった。2005年に成立したエネルギー政策法では、再生可能燃料の使用量を2012年までに年間75億ガロン(284億リットル)に引き上げることを求めているが、今回の方針では、その量を同年以降5年間で5倍に引き上げることになる。これによって現在、エタノール精製関連企業やトウモロコシ農家などが享受している“特需”は、当面続くことになる。
また、世界の自動車メーカーは、こぞってエタノール対応車やバイオディーゼル対応車の開発に力を注ぐことになるだろう。主な自動車メーカーは、すでにその方向へ走っている。例えば、三菱自動車は22日、エタノール100%対応車(E100)を今年中にブラジルで発売することを発表したし、ホンダは昨年エタノール対応車を同国で発売、トヨタも今春に同タイプ車を同国に投入する予定だ。
これに平行して、CO2排出削減を目指してハイブリッド車や電気自動車の開発も進むだろう。この分野で中心的役割をはたすのは「電池」の性能であり、日本企業も次々にリチウムイオン電池などの高性能電池の開発を進めている。23日付の『日経』によると、三菱重工は自動車向けリチウムイオン電池を2010年をめどに発売する計画で、そのほかNEC、三洋電機、日立製作所、GSユアサの電機各社も、2010年を目標に量産体制を整えているという。また、ハイブリッド車では本家本元のトヨタは、家庭用電源から充電できる次世代ハイブリッド車向けのリチウムイオン電池を自社開発中という。
これら企業の歩調を合わせた動きの背景には、地球温暖化への危機感があるのは確かだろうが、欧州連合(EU)がCO2の排出削減へ積極的に動いていることも大きな要素だろう。つまり、政治の側からの排出規制が経済界を動かしている。23日付の『日経』は、EUが域内で販売する自動車メーカーに対して、2012年までに業界全体の平均で1995年比「35%」の排出削減を義務づける法案を、今年後半に提出する構えだと伝えている。この「35%」削減により、域内で販売される新車全体で、1キロ当りのCO2排出量が平均で「120グラム」を達成しなければならなくなるという。業界はこれまで、この削減値を自主目標として進めてきたが、進展がはかばかしくないため、政治が法律によって義務づけようとしているわけだ。
このような欧米の動きを見ていると、地球温暖化対策は政治や行政が指導力を発揮していかなければ効果が少ないことがわかる。これまでの日本政府の方策は、業界の自主的努力に頼る側面が強くあまり効果がなかった。化石燃料依存国であり、高度技術国であり、京都議定書の議長国でもあるわが国が、欧米の動きに引きずられて温暖化対策を行うというこれまでのやり方を見ていると、実に歯がゆい思いがする。“美しい日本”などという抽象的でよく分からない言葉をもてあそぶのではなく、具体的で喫緊の課題である温暖化対策に、わが国がもっと真剣に取り組むことを切に望むものである。
谷口 雅宣
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コメント
本日の首相施政方針演説の全文を首相官邸のホームページで目を通してみましたが、相変わらず民間の省エネ努力任せで、環境税が謳われていないことに、予想通りとはいえ、やはりガッカリしました…。
「地球温暖化対策は政治や行政が指導力を発揮していかなければ効果が少ない」という点については、小生のブログで、『環境問題の法哲学』(有斐閣、1996年)から理論的な根拠を少し紹介させていただきましたので、ご覧いただければ幸いです。
↓
http://masaruyamanaka.cocolog-nifty.com/kenkyu_diary/2007/01/post_b2e1.html
投稿: 山中優 | 2007年1月26日 22:13
先日,「地球環境フォーラムinけいはんな」のシンポジウムに参加してきました。そこで感じたことは太陽光発電の急速な普及が必要だということ。生長の家でも勧めてはいるがまだまだなのでこの際、生長の家教団として信徒の家に一斉に太陽光発電をつけようという運動を興してはいかがでしょうか?稲盛さんの京セラさんと提携して信徒には格安で100万円以下でつけてもらえるという特権があればみんなつけると思います。実現すれば宗教団体としてすごいことになると思いますが。みんなもっと危機感をもたないと子や孫、人類は今までの様には生きていけないのだから、政治家や行政をあっと言わせましょう。生長の家は行動力があって凄いんだと見せつけましょう。
投稿: なでしこ | 2007年2月 3日 13:41
先日,「地球環境フォーラムinけいはんな」のシンポジウムに参加してきました。そこで感じたことは太陽光発電の急速な普及が必要だということ。生長の家でも勧めてはいるがまだまだなのでこの際、生長の家教団として信徒の家に一斉に太陽光発電をつけようという運動を興してはいかがでしょうか?稲盛さんの京セラさんと提携して信徒には格安で100万円以下でつけてもらえるという特権があればみんなつけると思います。実現すれば宗教団体としてすごいことになると思いますが。みんなもっと危機感をもたないと子や孫、人類は今までの様には生きていけないのだから、政治家や行政をあっと言わせましょう。生長の家は行動力があって凄いんだと見せつけましょう。
投稿: なでしこ | 2007年2月 3日 13:45