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2007年1月 5日

他国の資源に頼るリスク

 昨年末の本欄で、ロシアによる資源“国有化”と“政治化”の動きについて書いたが、その際に触れたベラルーシとの天然ガス値上げ問題に、新しい動きが出ている。ロシアは昨年末、ベラルーシ向けの天然ガスの輸出価格を2倍に引き上げただけでなく、同国向けの原油にもトン当たり180ドルの輸出税を導入すると表明した。これに対してベラルーシのシドルスキー首相は、自国を通過するパイプラインを通ってヨーロッパへ輸出されるロシア産の石油に、トン当たり45ドルの関税を1日から課したと発表したのだ。5日の『産経新聞』などが伝えている。
 
 ベラルーシ国内を通るパイプラインは、ドイツ、ポーランドの石油精製施設にほとんどが送られ、そのほか東欧各国にも石油を運んでいる。その量は、ロシアの石油輸出の5分の1に当たる日量1000万トンである。これに関税をかければ、それらの国々への輸出価格が上昇することになり、ヨーロッパ諸国から反対が出るだろう。ロシアがそれを避けようとすれば、ベラルーシの関税相当分を自分で負担しなければならない。だから、『日本経済新聞』(4日夕刊)は「(ベラルーシの)ルカシェンコ政権は対抗措置をちらつかせてロシアに輸出税の導入を断念させる狙いとみられる」と、今回の措置の動機を分析している。
 
 化石燃料の資源国であるロシアが、昨年来、エネルギーを政治目的に利用する動きを強めていることは、日本の商社が参加する極東の天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の例でも詳しく伝えてきた。日本企業は、中東に比べて距離が近いこと、したがって値段が安いこと、さらにロシアの国営企業がプロジェクトに参加することなどを考えて、「サハリン2」へのロシア政府の関与を歓迎しているらしい。安倍政権も、この問題に何も関与せず放任しているようだ。

 私は昨年12月22日の本欄で、このプロジェクトがロシア主導で決着したことを書いた際、「日本の商社側の利益が当初に比べて大幅に減ることは確実だろう」と書いた。年末の29日の報道で、この「大幅」の負担の額は、プロジェクトに参加している西側3社の合計で36億ドル(約4270億円)であることが分かった。『日経』は、この負担の見返りとして「20年以上にわたる利益配分を保証するPSAの枠組みを崩さない確約を得たとみられる」と推測している。PSAとは「生産物分与契約」のことだから、長期の安定供給のために短期的損失には目をつぶったということか。

 しかし、1年前の対ウクライナの値上げ交渉や、今回のベラルーシとの交渉を見ても、現在のプーチン政権下のロシアが、政治目的のためには商取引の契約関係を犠牲にすることを厭わない国であることがよく分かるのである。言い換えれば、国際情勢やロシアの国内事情の変化によって、長期契約の変更を余儀なくされることは、ロシアでは珍しくないのである。このことを考えても、エネルギー入手を目的としたロシアとのお付き合いは“ほどほどに”しておき、今後“奪い合い”の様相を強める化石燃料からは次第に手を引き、自然エネルギーの開発と利用へと大転換を図ることを、私は日本の国策として推進してほしいのである。

 昨秋、温暖化に警鐘を鳴らす『スターン報告書』を出したイギリスでは、このほど世界最大の海上風力発電所の建設計画を承認したという。(1月5日『産経新聞』)このプロジェクトは「ロンドン・アレー」という名前で、15億ポンド(約3500億円)の総工費をかけてテムズ川河口沖に341基の風力発電タービンを建設、同国の電力需要の1%をまかなう出力100万kW規模の施設となるらしい。「サハリン2」は私企業の負担、「ロンドン・アレー」は政府の負担という違いはあるが、同じ「数千億円」でも、使い方によって結果が大きく違ってくることが分かる。他国の化石燃料に頼る方策は、国益の面からも、温暖化防止の観点からも劣っていることは明らかである。

谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

ロシアは契約不履行は当り前の国です。

このような国とはそこそこのお付き合いをしていればよいとおもいます。

信用できない国であることは歴史が証明しております。

サハリン2の三菱商事、三井物産の投資金額は5千億円を超えると
言われております。

それだけの投資金額があるのなら風力発電で100万kW発電したほうがずっと効率的です。

原油は採掘開発をして、輸送のインフラを整え、
発電するにはまた、大きな火力発電所が必要になります。

風力発電所は一度設備をしたらランニングコストは低く抑えることができます。

早く、政府も気がついてもらいたいものです。

ところで、副総裁先生は東京第2教区か、神奈川教区の講習会で
太陽光発電より風力発電の方がコストが安価であると申されておられましたが、
どのくらい違うか教えていただけますでしょうか?

投稿: 佐藤克男 | 2007年1月 7日 09:40

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