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2006年12月 3日

人体は医療資源か?

 生長の家講習会のために山口県周南市に来ているが、3日付の『中國新聞』に病気腎移植の問題について2人の専門家の意見が載っていたので、興味深く読んだ。この問題は、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院や広島県呉市の呉共済病院の「瀬戸内グループ」と呼ばれる医師たちが、病気のある腎臓を移植に使ってきたことが表面化したものだ。私はES細胞の研究等について意見を表明してはきたが、医学の専門家ではない。本件に関しては、渦中にある万波誠医師(66)のインタビューを聞いてみても、背後には素人に分からない事情があるようでもあり、また高度に専門的、臨床的な問題でもあるため、発言を差し控えてきた。今回、医師の側からの意見を知ることができたのはよかったと思う。
 
 本件に関して、メディアは“素人の直感”からオカシイと感じて書いてきたのだろう。その論理はきわめて分かりやすい。すなわち、病気の腎臓は患者本人に有害だから摘出するはずで、その病気腎を他の患者に移植することは“有害物”の移植だから加害行為にならないか?--そういう疑問である。これを裏返しに言えば、他人に有用な腎臓ならば本人にも有用であるはずで、それを摘出する行為は傷害罪に当らないか?--ということになる。こういう論法には、しかし医学的な知識が一切含まれていない。私はその点が気になっていたのである。
 
 記事で発言していたのは、岡山大学大学院教授の粟屋剛氏と、東京女子医大名誉教授の太田和夫氏である。期せずして両名とも病気腎移植自体については、肯定的にとらえていた。粟屋教授は、社会への情報開示と、移植のリスクについていわゆる「インフォームド・コンセント」(十分な説明にもとづく患者の同意)が行われていれば問題ないとし、太田氏は、自身が病気腎を移植に使った経験があると言い、病気腎の患部を完全に切除して行う「部分腎移植」の技術を開発すべきだと述べていた。両氏の意見の背後には、移植に使う腎臓の絶対数が不足しているという事情があるようだ。脳死にともなって摘出される健康な腎臓が得がたいという現状にあっては、多少リスクがある腎臓でも、リスク要因をできるだけ減らし、患者の同意があるならば利用すべしということだろう。
 
 太田氏の意見の中で興味あることは、患者の腎臓を一度摘出したら、それを元の場所にもどすことは容易でないという話だ。「出血や合併症が起きた場合、再手術も難しくなるので、本人に戻す時は安全を考えて別の場所に植える」という形にした方が手術はやりやすいのだそうだ。こういうことは専門家でなければ分からない。素人は臓器を“部品”のように考えて、「外したところへ戻すのは容易だし当然」と考えがちだが、生体はそれほど単純にできていないようだ。またガンのある腎臓についても、「ガンの部分をきちんと切除して、ガン細胞が残存しないようにすれば、まず大丈夫」とし、さらに「免疫抑制剤を使うことで(ガンが)抑えられる可能性も考えられる」と述べている。私のような素人は、免疫系の機能を抑制すればガンの発生率が上がると考えがちだが、そうでないらしいのである。
 
 粟屋氏の発言には、しかし気になることが1つあった。それは、移植医療を「人体を医療資源としてみる発想」から生まれたと捉え、「もはや人体の有効利用・資源化が避けられない時代になっているとしたら、建て前でなく、それを前提にした議論をすべきだろう」と述べている点だ。これは、粟屋氏が「人体の資源化」を是とし、その流れを前に進めるように推奨しているように聞こえる。私は、そのような社会的合意が日本で成立しているとは思えない。アメリカはともかく、この国で脳死段階での臓器移植が進まないのは、その証拠だと思う。一見“物質”と見えるものの背後にも、目に見えない“魂”や“命”のようなものを認めてきた日本人の感性が、「人体の資源化」への動きに抵抗しているように私には思えるのだ。病気腎移植に対するメディアの直感的反発も、そういう感性にもとづいているのかもしれない。

谷口 雅宣

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コメント

副総裁谷口雅宣先生      H18.12.4
 福岡の講師会長の古谷正です
合掌
12月3日雅宣先生が山口にお越しになられた日、福岡教区講師会では、特別研修会を開き,肉食について研修を致しました。大和教化部長のご指導の宜しきを得て、感動的なものとなりました。テキストが未だ有りませんので、教修会のテキストでそれぞれ3人の講師に勉強して頂き簡単なレジメを作成
1肉食の世界史的、宗教的背景 松岡明彦講師
2日本における肉食の歴史的,宗教的背景 別府正寛講師
3現代の日本における肉食の問題  梶田美奈子講師
に発表してもらいました。183名の講師が異口同音に素晴らしい研修だと感動してくれました。
はじめに,(何故,今,肉食について研修するのかを?)を私が今こそ自然から学ぼうをテキストに、終わりは大和先生がさらに生命の実相11巻も使われて、しっかりと締めていただきました。教修会,ブラジルでの国際教修会で副総裁先生がお伝えになられたい何分の一かでも出来たのではないかと満足しております。

投稿: 古谷正 | 2006年12月 4日 21:03

古谷さん、

 特別研修会の成功、おめでとうございます。
 「肉食」関連のものをまとめた資料、ほしいですね!

投稿: 谷口 | 2006年12月 7日 22:11

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受信: 2006年12月15日 01:04

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