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2006年12月10日

風力発電所を訪ねて

Windfarm_aso  熊本県で行われた生長の家講習会の帰途、阿蘇山まで足を延ばして「阿蘇にしはらウインドファーム」を見学した。阿蘇郡西原村俵山地区の山の上に3枚羽根の風力発電機が10基並んで立っている風景は、なかなか壮観である。一直線に並んでいるわけではなく、高低の差がある丘の上にそれぞれがしっかりと立ち、直径66メートルの翼をゆっくりと回している。支柱の高さは60メートルというから、近くから見上げると“巨人”の一団が山々の上に足を踏んばりながら、腕をブンブン回している姿を連想してしまう。地上の私は風の動きをほとんど感じないのに、翼は低い音を発しながらゆっくりと回り続けていて、その音が巨人の鼻歌のようにも聞こえる。デンマークのヴェスタス社製の風車で、1基の出力は1,750kW。10基で年間2,510万kWhを発電し、7,100世帯分の電力を生み出すという。
 
 風力発電機の環境に及ぼす影響として、鳥の飛行路に設置された場合、風車と接触して衝突死するという話を聞いたことがある。が、私の見ている目の前で、ハトより一回り小さな鳥の群れがさえずりながら、回転翼の間をくぐりぬけるのを見た。回転速度が遅いので、見ている側も「危ない」という気はしなかった。この風車のデータによると、回転数は毎分10.5~24.4回転の範囲だ。これだと1秒に1~2回、回転翼が空を切る計算になる。鳥は大変運動能力に優れているから、この程度の速度で回転翼に衝突すことはないと思うのだが、実際はそういうケースもあるらしい。

 ところで、風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーの導入方式には、構造的な問題がある。それは、独占企業である電力会社に対して自然エネルギーの供給会社から一定量を導入させることを法律で義務づける方式をとっている点だ。この法律が2003年に施行された「新エネルギー等電気利用法(RPS法)」で、これによって現在、電力会社は2010年度までに日本全体の年間電力供給量の1.35%に当る122億kWhを、自然エネルギーを使って供給する義務をもつ。これに対して、2003~2005年度の実際の供給実績は義務量を大きく上回り、2005年度の自然エネルギー由来の電力量は前年度比14%増の約56億kWhに達した。経産省は、この分でいけば2010年度目標は達成できると見ており、それ以降の2014年度までの目標を1.5~2%へ引き上げる考えで電力会社との調整を進めている。(10月27日『日経』)
 
 これに対して電力会社側は、コスト増を理由に自然エネルギー由来の電力の割合を引き上げることに反対している。11月18日付の『産経新聞』によると、電気事業連合会では、目標達成までのコスト負担を930億円と試算して、同連合会の勝俣恒久会長(東京電力社長)は、2010年度までの目標も「相当努力しないと実現できない」と主張し、目標値の引き上げには「反対だ」と明言した。自然エネルギーは、既存のエネルギーに比べて出力の安定性や効率、コストなどの面で劣るという考え方にもとづいている。しかし、海外の例を見ると、1国の全電力量に占める風力と太陽光発電の割合は、ドイツが2003年度で3.2%、デンマークも同年度で12%に達している。日本が2010年度に「1.35%」というのは、いかにも消極的である。これは、日本の自然エネルギー導入が、「利害関係のある業界との合意」という初めから矛盾した方式で行われているからと言わねばならない。
 
 もう一つの構造的な矛盾は、電力生産に際しての「コスト」が地球環境へのコストを含んでいないという事実だ。電力業界が自然エネルギーの利用を「コスト増になる」という時、そこには火力発電所が大量の温暖化ガスを排出したり、原子力発電所が放射性廃棄物を生み出したり、水力発電所が自然環境を破壊することの「コスト」は含まれていないのである。また、政治的に不安定な地域から原油や天然ガスを輸入する際の「コスト」もすべて含まれているとは思えない。これらのコストを既存のエネルギーによる発電に含ませるためには、最低限「炭素税」や「環境税」が必要なのである。逆に言えば、現在の電力会社による自然エネルギー利用義務は、「炭素税」や「環境税」に代わるものと見ることができる。それをある程度負担してもらうことは、この業界の社会的責任として受け入れてほしいものだ。

谷口 雅宣

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