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2006年12月21日

グーグルで火星を眺める

 アメリカのインターネット検索大手、グーグル(Google.com)は話題に事欠かないが、パソコンと衛星からの地上の写真を一挙に近づけた「グーグル・アース」(Google Earth)というサービスに続いて、「グーグル・ムーン」(Google Moon)や「グーグル・マース」(Google Mars)というのを始めるらしい。12月20日付の『ヘラルド・トリビューン』が伝えている。

 グーグル・アースは、地球上のどの地点も衛星写真を使ってパソコン画面に表示するサービスで、軍事施設も表示させることで問題になったことがある。我々のような一般人にとっては、自分の故郷や海外の有名な都市、ニュースで話題の場所などを実際に上空から“見ている”ような仮想現実感を与えてくれるため、きわめて興味深く、かつ有用である。私も、興味半分で自宅を上空から見たり、小説の取材を補強したりすることに利用させてもらったことがある。この画期的なサービスを提供してきたグーグルが、こともあろうにアメリカ政府の1機関であるNASA(航空宇宙局)と組んで、今度は「月」や「火星」の上空からの画像をパソコン上に表示するサービスなどが可能な、広範囲な提携の契約を18日に締結したという。
 
 その記事によると、この契約によって、月や火星の表面を歩く宇宙飛行士の見る風景と同じような克明な画像を、地上の誰もがパソコン上で見ることができる可能性が開けるという。また、スペースシャトルや宇宙ステーションの動きをリアルタイムに見ることも可能になるかもしれない。火星については、グーグルは現在、限定的な二次元画像を「Google Mars」として提供しているが、これがもっと細かく、鮮明な画像として、我々が火星上空を飛んでいるかのような現実感をもって見えるようになるのだ。これは大変な“進歩”あるいは“変化”と言わねばならないだろう。が、その反面、“逆効果”も生まれるのでは、と私は想像する。
 
 私は、昨年6月11日の本欄で、火星にある“人面岩”の話に触れたことがある。また、本欄の前身である『小閑雑感 Part 1』では、2001年6月1日に「火星の顔」と題して少し詳しくこの話を紹介したので、ここでは簡単な説明に留めよう。火星の“人面岩”とは、火星の「シドニア(Cydonia)」と呼ばれる地域にある全長3kmほどの台地のような地表の隆起で、これが上空のある角度から見ると「人間の顔」のように見えたことから、「火星上の顔(Face on Mars)」と呼ばれるようになった。そして、「そんなものが偶然にできるはずがないから、知性のある何者かが造ったに違いない」という議論が起こって、一時騒がれたのである。

 しかし、よく考えてみると、火星は地球とまったく環境が違う惑星だから、そこにたとえ高等生物がいたとしても、その顔(もしそんなものがあるとしたら)が、地球上の動物がもつ「顔」と似ている--つまり、目が2つ横に並び、その間に鼻が縦にあり、鼻の下には横長の口がついている--保証はどこにもないのである。別の言い方をすれば、火星の動物には目が5つあったり、鼻がなかったり、口が上と下に2つついていても、それはそれで「顔」と言えるはずである。また、イソギンチャクを上から見たような恰好の「顔」があってもいいはずである。にもかかわらず、写真上にありありと“人間の顔”のようなものが写っていると、それが別の天体で撮影されたものであっても、我々は「顔だ」と考えてしまう。これは結局、我々の心の中にある「顔」のイメージを火星上に投影しているにすぎず、「客観的な判断」とは言えないのである。

 そういう騒ぎが実際に起こったのであるから、今後、グーグル・アースが鮮明な画像によって提供されることで、「火星人はいる」という議論が再燃する可能性がある。「月のウサギ」説はまさか出ないとは思うが、グーグル・ムーンによっても「知性ある生物がいる」との議論が起こるかもしれない。そんな事態が起こったら、それは宇宙科学ではなく、心理学の問題だと考えた方がいいだろう。火星には“ピラミッド”とか“町の広場”と呼ばれている所もある。我々は結局、自分の心の中にあるものを“外界”に投影するのである。

谷口 雅宣

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