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2006年12月22日

サハリン2、ロシア主導で決着

 ロシア極東の天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の権益譲渡問題は、同プロジェクトの事業主体であるサハリンエナジー社の株式の過半数をロシアが得ることで決着した。環境問題を理由に事業停止されるなど、工事遅延による外資側の出資増については、ロシアが約100億ドルを経費として認めることに応じ、同プロジェクトの株式の50%プラス1株を、ロシアの天然ガス独占企業であるガズプロムが74億5千万ドル(約8640億円)で買い取ることで合意した。これによって、サハリンエナジー社の株式の持ち分は、ロイヤルダッチ・シェルが27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%となる。当初の資本比率は、それぞれ55%、25%、20%だったから、3社がそれぞれ持ち分の半分をロシア側に譲渡したことになる。22日付の新聞各社が一斉に報じた。

 12月12日の本欄では、今後の資源の確保で「国がしっかりと関与する方針を示す」という甘利明・経済産業大臣の言葉を紹介したが、今回の交渉に経産省が関与したと思われる形跡はない。ロシア側が過半数の権益を得たことについても、三菱商事の小島順彦社長は「ロシア政府との関係も円滑に進む」(22日『日経』)と肯定的に評価しており、物産もロシア側の資本参加を歓迎している(22日『産経』)から、政府は出番がないのかもしれない。甘利経産相も22日の閣議後の記者会見で、この合意について「液化天然ガス(LNG)の安定確保が約束された有意義な合意」と評価した(22日『日経』夕刊)。しかし、単純に考えても、権益の半減は利益の半減であり、これに経費増大が加わったことで、日本の商社側の利益が当初に比べて大幅に減ることは確実だろう。
 
 「サハリン2」のピーク時のLNG生産量は、日本の総輸入量の約15%に達すると見込まれ、これに加えて日本が3割の権益をもつ「サハリン1」からの供給を考えれば、エネルギーの中東への依存度を減らすという政府の方針に沿った解決と言える。日本の2商社も利益幅よりも安定供給を選んだということだろうか。ロシアは今年1月、欧米寄りの姿勢を示すウクライナに対して天然ガスの供給を一時止めて値上げ交渉へ強引に持ち込むなど、エネルギーの政治利用を露骨に行う国である。今回も、すでに合意された契約にもとづき生産も始まっていたプロジェクトを事業停止にしたうえで、株式の過半数の譲渡を要求するなど、西側の常識では考えられない強硬手段を使った。「自主権益をふやす」という新しい方針を実施する相手国としては、ロシアの信頼性に問題が残ったことは否定できない。
 
 石油価格の高止まりが続く中、資源国による有限の資源の国有化や、中国やインドなどの大口需要国による資源の“囲い込み”などが始まっている。その中で、わが国が石油や天然ガスの自主権益をふやそうとすれば当然、資源獲得競争の中へ入っていくことになる。いや、イランでの油田開発などを見れば、すでにその渦中にいると考えていい。このイランの油田開発は、同国の核兵器技術の開発疑惑のため中断したままである。ここでも、政治的事情からエネルギー開発が進んでいない。化石燃料のような有限な資源に執着するかぎり、エネルギーと政治の絡み合いは今後も強くなることはあっても、弱まることはないだろう。だから私は、事実上無限にあるといえる自然エネルギーの開発と利用に向って、日本は国を挙げて取り組んでいくべきだと訴えたい。
 
 化石燃料の開発と利用は、それ自体が他国からエネルギーを奪うだけでなく、地球温暖化を通して2重にも3重にも他国や、他の生物から奪う道である。「奪うものは奪われる」という法則を忘れてはいけない。

谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

≪だから私は、事実上無限にあるといえる自然エネルギーの開発と利用に向って、日本は国を挙げて取り組んでいくべきだ≫

全く同感です。海上に大型の太陽光発電設備を創ったら、太陽電池の寿命と言われている40年間は、その分の石油は輸入しなくて良くなりますし、自然エネルギーは太陽や風や地熱やダムだけでなく、大気温も有力なエネルギーですし、これから未知数の可能性を秘めております。

そして、便利さの追求だけではなく国をあげて「我慢の美学」も推奨する。寒くとも少し厚着して我慢する。美味しい肉を食べたくとも三度に二度は我慢する。自動車で行くところを歩く、もしくは自転車にする。これだけでも我々の子孫に資源を残すことが出来ますし、母なる地球を傷つけなくてすむと思います。

昨日、家内に話しましたら
先ずは「隗より始めよ」と言われました(笑)

もうすぐ新しい年ですが、新年からではなく今から取り組むことにします。

投稿: 佐藤克男 | 2006年12月25日 05:53

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