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2006年12月19日

地球環境で“明るいニュース”

 12月15日の本欄で、犯罪統計の中にも「よいニュース」を見つけて報道すべきだと訴えたから、地球環境問題に関するデータの中にも、「よいニュース」があれば読者に知らせるべきだろう。そういうニュース2つにたまたま遭遇した。1つは、グリーンランドの氷の融解の影響について、もう1つは、強力な温室効果ガスであるメタンの排出量についての話である。
 
 グリーンランドの氷床については、本欄で何回か書いているが、昨年12月12日には、ここの氷が融解しつつある影響で、温暖なメキシコ湾流から発してヨーロッパ西側を北上する海流が30%ほど減少していることを、イギリスの国立海洋学センターが観測したという話を紹介した。この話は、アメリカの時事週刊誌『TIME』(昨年12月12日号)にも取り上げられ、ヨーロッパが寒冷化する可能性が指摘された。ところが今年11月4日号の『New Scientist』誌によると、その心配はどうやら小さいというのである。なぜなら、その研究に使われた海流の観測データは「50年のうちの5例」だけであったが、その後に設置された数多くのセンサーから得られたデータによると、「様々な兆候が見られ、一定の傾向を見出すのは早急だ」と判断されたからだ。
 
 グリーンランドの氷とヨーロッパの気温との関係は、次の通りである--陸上の氷が海中に溶け出すと、周辺の海の塩分が薄まることになる。塩分の薄い水は、海中に沈みにくくなる。すると、メキシコ湾流に発する暖流がヨーロッパへ北上し、冷たい北極の水と接して冷やされ、通常は海中へ深くもぐるはずが、塩分が薄まるために潜りにくくなる。これによって、海中で一種の“交通渋滞”が起こるというのだ。このようにして、グリーンランドの氷解は暖流の速度を弱めることになるから、海面温度が下がり、それによってヨーロッパの気温を下げる結果になるという。(昨年12月19日の本欄参照)

 この説を唱えたのは、イギリスのサウサンプトンにある国立海洋調査所(National Oceanography Centre)のハリー・ブライデン博士(Harry Bryden)だが、このブライデン博士自身が2004年にもっと詳しく調査したところ、上記のような判断を下したという。だから、「メキシコ湾流の北上速度が30%遅くなった」という事実は確認されなかったのだ。しかし、グリーンランドの氷の融解が続いていることは事実だから、本当の意味で“明るいニュース”であるかどうかは定かでない。
 
 もう1つのメタンの話も、これと少し似ている。メタンは、地球の大気中の主要な温室効果ガスの1つだが、1998年から2005年までに、その大気中の量はほとんど変化せず安定しているという観測結果を研究者が発表したというのだ。11月22日付の『New Scientist』誌のニュースサービスが伝えた。
 
 それによると、この研究者はカリフォルニア大学アーヴィン校の大気化学者たちで、太平洋周辺の多くの地点で大気を調べたところ、1998年12月から2005年12月までの期間の大気中のメタン濃度の増加は、「+0.3%~-0.2%」の範囲内に留まっていたというのである。それ以前のメタン濃度の変化は、1978~1987年が+11%もあり、それ以降は0.3%から0.6%の増加に減少したが、今回の観測で濃度の変化は事実上なくなったと言える。メタンの主要な排出源は田んぼ、埋立地、天然ガス田や石油関連施設、そして牛などの家畜である。その温室効果は、二酸化炭素の21倍もあると言われているから、大気中への排出が安定したことは朗報であるには違いない。その原因について、研究者たちは石油や天然ガスの貯蔵施設やパイプラインの修理による効果がいくらかあると見ているが、確かなことは分かっていない。

 その一方で、不安材料もある。それは、温暖化により北シベリアの永久凍土が溶けていることに伴い、地中に封じ込められていたメタンが大気中に予想以上に漏れ出していることが最近、報告されたからだ。これは、今年9月7日号の科学誌『Nature』に発表された論文で明らかになった。北シベリアの湿地帯には夏場にも溶けない湖が数多くあるが、フロリダ州立大学とアラスカ大学などの研究者が、氷の溶けつつある2つの湖から出るメタンの量を測定した結果、予想されていた量より10~63%も多いメタンが漏れ出していることが分かったという。また、17日の本欄でも触れたが、ゲップなどの形で家畜から出るメタンは決してばかにならない量(37%)だ。今後、肉食に供される家畜の量が増えれば当然、メタンの排出は増加する。メタンはこのほか、火山の爆発や大きな山火事によっても発生するから、大気中の含有量が今後とも安定するという保証はできないだろう。

 谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

世の中(特にマスコミ)は悪い所ばかりに焦点を当てすぎですね。

生長の家の一番好きなのは「日時計主義」ですが
人間も社会も環境ももっと良いところに目を向けなければと
私もブログ「言葉のサプリメント」を開設しました。

いたずら心で創った中高年向けの唄「盛春歌」が来年一月にテイチクから出ることになりました。

これも団塊世代が定年になって社会に悪影響を及ぼすようなことをマスコミは喧伝しておりますが、
「団塊世代も負けてはいないぞ」という唄です。

こんな世の中かも知れませんが、まだまだよいことが沢山あります。
日々、日時計主義で過ごしたいと思います。

投稿: 佐藤克男 | 2006年12月21日 07:06

佐藤さん、

 レコード(CD)出版ですか! スゴイですね。どんな唄かと思います。

>> 日々、日時計主義で過ごしたいと思います <<

 大賛成です。20日のブログで紹介したWeb版『日時計日記』もヨロシク。

投稿: 谷口 | 2006年12月21日 17:27

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