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2006年12月12日

サハリン2をめぐる資源外交

 昨日の本欄で、日本が化石燃料を中心とした「資源外交」を進めていく危うさを心配したが、今日(12日)の新聞各紙は、ロシア極東の天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の権益を、ロシア国営企業、ガスプロムが求めてきたことを一斉に報道した。このプロジェクトの問題について私は9月19日の本欄で触れているが、ロシアが外資導入を目的として計画、エリツィン時代の1994年に契約が締結され、事業主がロシア政府に利益の6%を支払えば、投資回収まで石油・天然ガスの所有権がすべて事業主に帰属するという“資本有利”の契約だった。資本比率はロイヤルダッチ・シェルが55%、三井物産25%、三菱商事20%という外資のみの出資だったものを、資源外交を展開するプーチン政権は「環境対策が不十分」という理由で事業停止に追い込み、今度は、ロシア側に事業の主導権を譲るように言ってきたのである。

 昨年7月には、ガスプロムがシェルの保有分から25%の権益を獲得する替りに、ガスプロムが持つシベリアの開発権益をシェルが得ることで合意していたのだが、今回は「最大株主である英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに事業の主導権を譲るように求めてきた」(『日経』)という。シェルはすでに自己保有分の25%(全体の13.8%)の権益譲渡に合意しているから、残りは全体の41.2%であり、すでに過半数割れしている。ガスプロムが「主導権」を得るためには、日本の2企業の持ち分からも譲渡を要求される可能性が大きく、『朝日』は「シェルは出資比率を25%まで、パートナーである三井物産と三菱商事も10%ずつ権益を減らす可能性がある」というロイター通信の「関係筋の話」を伝えている。また、『日経』も「日本側2社もシェルに準じる形で株式譲渡が避けられないとみられる」と書いている。

 ロシアでは今、一定規模以上のガス・石油開発では外資に5割以上の権益を持たせないための法案を審議中というから、こういうロシア側の方針に沿って、一度結ばれた契約の変更を余儀なくされる事態が起こっているのである。
 
 日本政府が「資源外交」を表明しようとしている矢先に、ロシア側がまさに先手を打ってきたという感じだ。昨日触れた「エネルギー基本計画」の改定案は、来年2月をめどに閣議決定される見通しだが、甘利明・経産相は今日の『産経新聞』紙上で、この案を代弁するかのような発言を行っている--
 
「資源国が資源の囲い込みや自己管理化を進めている中、民間任せではうまくいかない。資源国にとっては事業(の遂行)を日本政府が保証してくれるのかどうかが関心事であり、国がしっかりと関与する方針を示すことがメジャー(国際石油資本)に対抗する唯一の道だ」

 上の発言は、資源国が日本企業の開発参加を望んでいる場合のことだろうが、今回のように日本企業の参加比率を下げてくれという場合には、どうすることが「国の関与」を示すことなのだろうか? 「当初の約束を守れ」とロシアに迫ることか、それとも外交問題を起こさないように、日本企業側に別の権益を保証する方向に動くことか……。また、この場合、日本の“国益”を守るというのは、日本の2企業の権益を守ることなのか、それとも「外交問題を起こさない」ことなのか……等々、いろいろ考えさせられる。

 企業の立場で考えれば、利益を生まない投資には価値がない。ガス田開発には巨額の投資が必要だが、その資金を回収した上で利益を得るためには、一定の権益(株式の保有比率)が必要である。出資額が減らずに権益が縮小されることは利益減であり、さらには損失となるかもしれない。損失が見込まれるプロジェクトからは、撤退も十分考えられる。しかし撤退すれば、日本への天然ガスの供給が減り、中東への依存度は減らないことになる。この場合、「国の関与」とはいったい何をすることか?……その答えが、まもなく出されるだろう。

谷口 雅宣

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