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2006年12月13日

バードストライク

 12月10日の本欄で、熊本県の「阿蘇にしはらウインドファーム」を見学したことを書いたが、その際、鳥が風車にぶつかる話に触れ、「鳥は大変運動能力に優れているから、この程度の速度で回転翼に衝突すことはないと思うのだが、実際はそういうケースもあるらしい」と書いた。それに答えたわけではあるまいが、『朝日新聞』は12日の夕刊の1面に、その事情を伝える記事を載せた。それによると、この現象を「バードストライク」と呼ぶそうだが、これまでオジロワシやミサゴなどの希少種の鳥の死亡例が観察されているため、発電会社は予防策に頭を悩ませているという。

 考えられている方法は、①鳥の飛来時に遠隔操作で風車を止める、②飛来をレーダーで感知して風車を自動停止する、③風車を目立つように赤く塗る、④風車を夜間ライトアップする、などだ。しかし①②のように風車を止めることになれば、ただでさえ電力供給の不安定が問題視されている風力発電の実用価値が下がるだろう。また、色塗りやライトアップの効果については、専門家の間でも意見が分かれるという。風力発電側には、バードストライクの確率は風車1基に対して年間1~2羽とも言われるから、許容度がどの程度かを定めるべきとの意見もあるらしい。恐らく、「年間1~2羽」ぐらいは許容範囲内と考える人もいるだろう。

 日本野鳥の会に報告されているバードストライクの例は、これまで20件という。私が山梨県の山荘にいた際、野鳥がガラス窓に衝突して脳震盪を起こした例は、過去に2回ある。2回ともしばらくして立ち直ったが、死ぬこともあるに違いない。だから、風車でなくとも、自然界では人間の構築物に野鳥がぶつかることはそれほど珍しくないはずだ。問題は、絶滅危惧種に指定されている鳥が、特にぶつかりやすい場合である。これについて記事は、絶滅危惧種のオジロワシの風車への衝突死が2004年以降北海道で6件、準絶滅危惧種のミサゴの衝突死が同年に長崎県五島市で1件、と伝えている。この数を「多い」と見るか「少ない」と見るかは、難しい判断だ。
 
 今後、風力発電所が各地に建設されるようになれば、それに比例してバードストライクの数は増えるだろう。だから、現在の数をたとえ「少ない」と判断しても、将来にわたってこの問題を無視するということはできない。人間の側でいろいろ工夫をする必要があるし、私はきっとそれができると思う。風車を立てる間隔、風車の設置場所などの工夫や、技術的にはレーダーによる感知とともに、(素人考えながら)音波による警告をするのはどうだろうか。鳥は、人間が聞いても明らかに分かる警戒音を発するから、そういう音を飛来する鳥に向けて発することで、鳥の進路を変えることができないだろうか。人間の知恵と工夫に、私は期待したいのである。
 
谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

また、やられてしまいました。
私は鳥の一羽や二羽ぐらいはどうってことないと思っておりました。
本当に思いやりに欠けている男ですね。

考えてみたらそうですね。
人間の勝手なことで、生きとし生けるものへ被害を被らしてはなりません。被害は最小限にしなければならないはずです。

音波の場合は鳥によって違いますので、大きな籠のようなもので、覆うのが宜しいかと思いますがいかがでしょうか?
それほどコストアップにならないと思います。
それと風が吹く方へは音波が届きづらいのです。

話しは変わりますが、「秘境」二度目を拝読しました。
二度目の方が面白かったです。
丁度、良い映画はビデオやDVDを買ってきて何度も何度も観るのと似ておりますね。

司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」は13回読みましたが、「秘境」も何回もいきそうです。

投稿: 佐藤克男 | 2006年12月15日 15:41

去る10月、八丈島に自然エネルギーの見学を兼ねた職員旅行に行かせていただきました。その際、山の中腹の牧場に設置されたフランス製風力発電機4機と、地熱エネルギー発電所の近くに設置されたドイツ製風力発電機(一番良く見かける大きな風車のタイプ)1機を見せていただきました。以下は、その時に、聞いた話です。
フランス製は、八丈島の風が強いため、4機がかわるがわる故障して、その度に修理費がたいへんだそうです。私たちが見学した日にも、1機の周りで修理作業中でした。
ドイツ製は、風が一定の風力を越えるときは、壊れるので運転を取りやめるそうです。私たちが見学したときも、動かしたり、止めたりしているようでした。
どちらも、八丈島の風土に、ぴったりとは適合していないように見えました。
野鳥への対策も含めて、日本の気候風土(台風がある、風向の変化が激しい)に合わせた風力発電機の開発が必要なのではないかという感想を持ちました。(どこかで研究開発されているのでしょうか?)
空の上から、鳥の視点で、見たとき、きっと何か解決方法があるのではないかと思います。
日本の気候風土に合った、鳥に害を与えない風力発電機が、開発され、実用化されることを、祈らせていただきます。合掌。

投稿: 佐柄英津子 | 2006年12月16日 00:44

佐藤さん、

 『秘境』をご愛読くださり、有難うございました。
 先日、伊勢崎町の有隣堂へ行ったら、1階に2冊置いてありました。
思わず手に取ってしまいました……(笑)

佐柄さん、

>> 日本の気候風土に合った、鳥に害を与えない風力発電機が、開発され、実用化されることを、祈らせていただきます <<

 本欄にも書いたと思いますが、三菱重工長崎造船所で日本製の風車を作っているそうです。でも、多くはアメリカへ輸出されるようです。だから、日本の風土に合っているかどうか、私には分かりません。(笑)

投稿: 谷口 | 2006年12月16日 09:46

谷口雅宣先生

風力発電についての、先生の以前の御文章を読み返さずに、
ピントのはずれたコメントを書きまして、
たいへん失礼いたしました。
鳥の視点ではなく、人間としての責任ある視点から、
勉強し直そうと思います。
ご指導ありがとうございました。

                       佐柄英津子拝

投稿: 佐柄英津子 | 2006年12月16日 18:05

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