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2006年12月 5日

「燃費2割改善策」は官民合作?

 12月1日の本欄で、私は「国家が(短期的な)国益を追求していくだけの現状では、人類は結局、地球環境問題で自分自身の首を絞めることになる」という意味の悲観的な予測をしたが、今日の『日本経済新聞』の第1面を見て、「待てよ……」と思った。国家にもまだ“良心”のようなものがあるかもしれない、と感じたのである。その記事には、経産省と国交省が2015年までに、自動車の燃費を今より約2割改善する新基準をメーカーに義務づける方針だと書いてあった。「8年間で2割」はさほど大幅とは言えないが、関連業界の技術開発の方向性を決定させる効果はあると思う。また、この新しい燃費規制が施行されれば、世界で最も厳しいものになるという。

 この記事によると、現行の燃費規制はガソリン車の平均でリットル当たり約15kmだが、2015年度にはそれを18km強にまで強める方針。ただし、この規制案を両省が今月内にも開かれる合同審議会で「まとめる」と書いてあるから、まだ“正式決定”ではないようだ。現行の基準は全車種を9段階に分けているが、新規制ではそれを15~20段階に細分化するそうだから、役所側の裁量の幅は以前より広がることになるのだろう。これらの規制は、京都議定書の目標に対して、運輸部門の温暖化ガス削減が特に遅れており、2005年度のCO2排出量が基準年(1990年)より18%も増えていることと関係があるかもしれない。「政府が危機感をもって規制に乗り出した」という感じがする。
 
 しかし、自動車業界の準備はある程度できているようだ。というのは、同じ日の『日経』には、いすず自動車が、提携先のトヨタと共同でディーゼル・エンジンの新工場を建設する構想を発表していたし、ホンダもガソリン車並の清浄度のディーゼル車を3年以内にアメリカへ投入することを、すでに今年5月に発表している。ディーゼル車は、同じ排気量でガソリン車よりも2~3割燃費がよく、したがってCO2排出量も少ない。日本では窒素酸化物(NOx)の排出が多いという悪いイメージがあったが、その除去技術も進んでいる。だから、単純に考えれば、現在のガソリン車をディーゼル車に替えるだけで2015年の燃費規制をクリアすることができる。さらに、これにハイブリッド技術を加えれば、燃費はさらに改善できる。ということは、政府は、業界の態勢が整ったのを見計らって今回、燃費の2割改善策に踏み切ったと見ることもできる。

 問題は、こういう“官民一体”になった環境対策と環境技術の開発が、実際の地球温暖化の緩和や防止に役立つかどうかである。

 これに関連して、4日付の『朝日新聞』に興味あるニュースが載っていた。今年の1~10月の国内のガソリン販売量が前年を約1%下回り、残る2カ月間で前年を上回るのが難しい情勢だというのである。ガソリン販売量が前年割れすれば、実に32年ぶりの出来事になるのだそうだ。石油業界にとっては“悪いニュース”かもしれないが、環境保全派にとってはもちろん“よいニュース”だ。それだけCO2排出量が減っているからだ。主な原因は、日本の消費者が燃費のいい軽自動車や小型車を選ぶようになったからで、その背景には昨年来の石油の高騰に続く、ガソリン価格の急騰がある。今後は、欧米や日本などの先進国よりも、中国やインドなどのBRICs諸国で自動車が急増すると予想されるから、そういう国で走る自動車の燃費が向上しなければならない。日本の技術支援が重要な所以である。

 私は、依然として燃費のいいRV車の登場を待っているのだが、どこのメーカーも適当なものを出してくれない。当初はハイブリッドのRV車でリッター20km前後のものを望んでいたのだが、もしかしたらディーゼル車でそれに近い燃費のものが先に出るのかもしれない。あるいは、中国やインド向けのものが優先されるのだろうか。昨今、日本市場は、大手メーカーにとって重要度が薄れつつあるのか……と寂しく思う。

谷口 雅宣

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