グリーン購入の成果
私は本欄で、植物を原料とする生分解性プラスチックを温暖化防止策として大いに推奨してきた。生長の家の講習会では1会場で何千個もの弁当が消費されるが、その弁当の容器にこの“腐るプラスチック”を採用することで、ゴミ処理にともなうCO2の排出を減らすとともに、この新しい環境技術を育てる効果があるからだ。こういう考え方は、多くの企業でも受け入れられつつあるようだ。12月1日の本欄でも触れたが、『日本経済新聞』の調査に回答した大手企業229社のうち3割以上が、植物性プラスチックの製品への利用を対応可能としているし、ソニーのように、すでにそれを使った非接触ICカードを実用化している会社もある。今日(9日)の『日経』には、このほかの例がいくつか紹介されていた。
それによると、リコーは複写機で使われるトナーの原料に植物を使う技術を世界で初めて開発した。また、富士フイルムは、液晶パネル用の保護フィルムに100%植物性の原料を使う研究を開始したほか、電機・精密機械や自動車メーカーも植物を原料とする素材を製品の部材として採用を検討している。例えば、NECは携帯電話の外装やパソコンの外付け部品に植物性プラスチックの採用を考えており、富士通はノートパソコンの外装や静脈認証装置の部品に、三菱自動車は車のフロアマットに植物原料素材の採用を検討しているという。
植物性素材の問題点は「生分解性」である点だろう。つまり、植物は枯れれば土に還るように初めからできている。弁当箱やゴミ袋ならば、その性質が環境によい。しかし、自動車部品が半年で土に還ってしまっては困る。また、耐熱性、耐衝撃性、強度の面でも石油原料のプラスチックに比べるとまだ問題がある。そこで各企業は化学メーカーと協力して性能を改善し、原料となる植物の種類や応用範囲をひろげているという。記事によると、富士通などは、トウゴマの種から抽出したひまし油から、柔軟性の高い樹脂を開発し、これをノートパソコンや携帯電話機の開閉部や屈曲の多い部品に採用する予定だという。
この記事の中で注目すべきは、次のような箇所である--
「植物原料素材の採用は、当初は環境に優しい企業イメージづくりが狙いだった。最近では採用した製品が市場で優先的に購入されるケースが増えており、企業経営者は商品競争力に直結する課題と認識し始めている」
これはつまり、消費者が製品の「環境性能」を重視して購入を進めているということで、それによって企業の技術開発の方向性が決められつつあるということだ。私たちの毎日の購買行動が、企業を動かしているのである。だから、環境性能のいいものを優先的に買う「グリーン購入」を進めることの意味は大きい。この冬のボーナスの時期には、読者はそういう角度から「何を買うか」を決めてみてはいかがだろうか。
谷口 雅宣
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