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2006年11月 3日

「読ませ大賞」って何?

 本欄から生まれた単行本『小閑雑感』シリーズを発行している世界聖典普及協会の人から、興味ある話を聞いた。このほど「出版文化産業振興財団(JPIC)」がインターネット上で始めた「読ませ大賞」という本のランキング・サイトに、私の最新刊『小閑雑感 Part 6』が載っているというのである。もちろん全国ランキングにあるのではないが、「50~59歳」の「関東地方」の「男性」「会社員」が推薦する本のランキングでは「第1位」というのだから驚いた。私自身、そのサイトへ行って確認したが、何回確認してもちゃんとそこにある。ウーンと唸って考え込んでしまった。理由がわからないのである。
 
 私はこのサイトの名前をまったく知らなかったが、調べてみると「Books.or.jp」という書籍検索サイトと連動していて、「文字・活字文化の日」である10月27日を広める読書推進キャンペーンの一環としてJPICが新しく始めた企画のようだ。本の読者による投票(ハガキとインターネット)でよい本の順位を決め、インターネット上の“口コミ効果”で、良書が全国に広がっていくことが目的だという。投票期間は、インターネットが10月27日~大晦日まで、ハガキでの受付は10月27日~11月30日までという。

 こういう立派なサイトに自分の本がランクされたのだから、唸っていないで素直に喜んだらいいのかもしれない。しかし、私にとっては、闇の中で鼻をつままれたような感じだ。なぜなら、『小閑雑感 Part 6』の奥付の発行日は11月1日で、今日は3日である。もちろん、本そのものは少し前から流通していて、10月29日の和歌山市での生長の家講習会では100部以上頒布された。しかし、この本は一般書店では入手が難しい。できたてホヤホヤの本で、しかも一般に流通していないものが、書籍ランキングの上位に登録されるというのは、どうも解せないのである。まことに申し訳ない言い方になるが、一時は、サイトのソフトウエアにバグがあるのかもしれないと考えた。

 翻ってこのサイトの企画自体を考えれば、なかなか面白いと私は思う。しかし、いくつか問題も考えられる。例えば、ある宗教団体では、信者が特定の有名書店へ行ってその指導者の本を何冊も買うことで、書店でのランキングを上げるなどの不自然な方法を採っているらしい。こうすれば、その書店での“棚”や“平積み”の領域を確保できるだけでなく、新聞・雑誌には有名書店での売れ筋ランキングを発表する欄もあるから、二重三重の宣伝効果が生まれる。それと似たようなことが、このサイトで行なわれる危険性はないのだろうか? 大教団が全国の信者を動員して、指導者の著書を“よい本”としてこのサイトに登録し、ランキングを上げるのを防ぐ対策はできているのだろうか? 
 
 同じような心配は、政治家の著書や政治問題に関する本についても考えられると思う。ことに選挙が近くなると、安倍さんの本と小沢さんの本がランクの上位で競争したり、朝日新聞社の本と扶桑社の本がランクを競うかもしれない。今後、このサイトで発表される投票結果を見れば、ランキングの自然・不自然はいずれ判明するだろう。「ブルータスよ、お前もか!」にならないことを祈るばかりだ。

谷口 雅宣

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