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2006年11月26日

個人生活と地球環境

 昨日の本欄で、私は日本政府に対して、もっと長期的で明確な環境政策を策定してほしいと注文したが、今日、東京・調布市など3カ所で行われた東京第2教区の生長の家講習会では、“エコ容器”を使った弁当が出されたと聞いて勇気づけられた。政府がかけ声をかけなくても、民間レベルでの環境意識の向上は(困難であっても)期待できるからである。

 この容器は、7月9日の本欄で紹介した青森教区の講習会で使われたのと同じもので、植物のアシ(葦)を原料にした生分解性プラスチック製だ。今日の講習会には3会場合計で6千人以上の人が参加してくださったから、きっとCO2の排出削減に役立ったに違いない。また帰宅後、家に届いていた『七宝の塔』(生長の家栄える会会報)を読んだら、10月22日に開催された第33回生長の家繁栄特別ゼミナールでも、昼食の弁当に同じ“エコ容器”が使われたと書いてあった。こちらの参加者は2,259人というから、CO2排出削減の効果は徐々に生まれているはずだ。

 私は、この地球温暖化時代にあっては、生分解性プラスチックはもっとふんだんに利用されるべきだと考える。石油を原料とするプラスチックは、製造時と廃棄物として処理されたときにCO2を排出する。結果的に、地中深く埋まっていた炭素を大気中に放出することになる。それに対し、アシなどの地上に生えている植物を原料としたプラスチックは、植物が成長する際に大気中のCO2を体内に取り込み、さらにプラスチックを土に埋めてゆっくり分解させれば、水とCO2になる。そしてCO2は、再び植物に固定されたり、バイオマスに吸収される。つまり、使えば使うほど大気中のCO2は減ることになる。石油が原料のプラスチックとは、まさに対の働きだ。
 
 温暖化防止の観点からはこんなによい働きをする生分解性プラスチックだが、有害なプラスチックよりも値段の高い点が、普及が進まない大きな原因になっている。別の言葉で言えば、温暖化を促進するプラスチックが、それを防止するプラスチックよりも「安い」のが現状だから、経済発展をすればするほど温暖化が進む傾向になる。だから、人類が温暖化をはっきりと“コスト”として認め、それを製品の値段の中に含めるのが経済的には「正しい」と言えるだろう。そういう考え方を含めて提案されているのが「環境税」とか「炭素税」と言われるもので、これを早急に導入することで「経済発展と環境保全が両立する社会」が実現するのである。日本の経済団体は、環境税導入に反対する理由として「経済発展を阻害するから」と言っているが、この論法は短期的には正しくても、中・長期的には正しくない。先に紹介した『スターン報告書』は、そのことを有力に語っている。環境問題と真面目に取り組まない現行制度下の経済発展では、50年後には世界のGDPを5~20%減らすような被害が生じるのである。

 しかし、政府が動かなければ我々は何もできないわけではない。環境税が施行されていない現在、我々は化石燃料を使うよりも値段が高い、より“クリーン”な製品やサービスを利用することで、実質的に環境税を支払うことになる。だから生長の家では、ハイブリッド車やグリーン電力、生分解性プラスチック等の“エコ商品”等の使用を推奨しているのである。

 さて、今日の講習会では「肉食」のことも話題にした。肉食が増えれば増えるほど地球温暖化が進み、土地や資源の奪い合いが深刻化するという話だ。今年の1月には、このことを、肉食盛んなブラジルでの生長の家教修会で取り上げて、意外に良好な反応を得た。世界的にも、肉食と環境悪化の関係が理解されるようになってきているのだろう。

 11月25~26日付の『ヘラルド・トリビューン』紙には、アメリカのウッズホール研究所(The Woods Hole Research Center)の科学者、ダニエル・ネプスタッド氏(Daniel Nepstad)が「熱い惑星のための食事」(Diet for a hot planet)という題の論説を寄稿している。それによると、すでに35年前、フランセス・M・ラッペ(Frances Moore Lappe)という人は『小さな惑星のための食事』(Diet for a Small Planet)という料理本の中で「動物性蛋白質を摂取することは、植物性蛋白質の摂取に比べて16倍も農地を必要とする」と訴えて、警鐘を鳴らしたそうだ。今や地球のどこにも新たな農地はなくなり、その一方で、急速な経済発展を続ける中国などの国々の何億という人々が、肉食の割合を増やしつつある。そのため、熱帯雨林が伐採されて農地に転換されている。経済発展はエネルギー需要を増大させるから、石油の値段が上昇し、農産物をエタノール燃料に転換することで利益が生じるようになった。すると、人間と自動車とが食料(燃料)をめぐって農地を奪い合う関係になる。そして、森林はさらに減り温暖化がさらに進行する……。
 
 この悪循環を断つためにネプスタッド氏が提案している方策の1つが、「肉食の削減」なのである。曰く--「もしアメリカ人が、食事と地球(環境)の間にあるこの関係を断つために肉食を減らすならば、彼らは温暖化の速度を下げる動きの中で、珍しく指導的な役割を果たすことになるだろう」。

 個人の力は小さくても、理性や良心に訴えて協力者を増やし、団結して行動すれば、我々は地球規模の問題解決にも一定の役割を果たせると思う。

谷口 雅宣

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コメント

合掌 ありがとうございます。
愛知教区青年会の内田と申します。先生のブログは内容は高度で全部理解できてはおりませんが、読むだけでも自分の意識が自然にかわっていきますので毎日欠かさず読ませて頂いております。
栄える会と同じ10/22に、愛知教区でも青年会教区大会でアシモールドを使用いたしました。おにぎり2ヶとかぼちゃコロッケをいれ、割り箸をやめて、紙製の仕切でコロッケをはさむようにして食べていただきました。数は370ヶ程度ですが、青年会は数が少ないからこそ取り組みやすい(変えやすい)ですし「環境に配慮した容器を使いたい」ことをあちこちの店に問い合わせることそのことが少しは意識向上に貢献するのではと感じました。翌週の白鳩会教区大会では、例年のプラ製パックをやめて、会員の方々がハギレを使って手作りで「きんちゃく袋」を作成されそこにおにぎりが2ヶ入れてありました。「その袋を来年ももっていらしてください」とのメッセージとともに。行事を開催するときに、パンフレットは?備品は?設営は?お土産は?とひとつひとつのことをなるべく環境に負荷を与えない方法でと考え話し合い、祈ったことで、青年会としても個人でも、そういう習慣(?)がついていくような気がします。

投稿: 内田千里 | 2006年11月27日 22:12

内田さん、

 すばらしい取り組みについて教えていただき、ありがとうございます。そういう“小さな”取り組みが津々浦々で行われることで“大きな”力になっていくことでしょう。よい習慣になりそうですね。

投稿: 谷口 | 2006年11月29日 15:01

谷口 雅宣 先生

 今から35年も前に「肉食と農地拡大」について警鐘を鳴らしていた人がいたという話にはビックリ致しました。と同時に副総裁先生の時代を見抜く眼力に改めて畏敬の念を抱きました。
 今年7月にご指導いただいた講習会の際、食肉加工会社に務める息子との確執に悩む持つ女性(地方講師)からの質問に、先生より明快なるご回答をしていただき、その後、親子関係が大変良好となったという話がございましたが、その続報です。
息子さんが会社でのさまざまな悩みを打ち明けてくれるようになったそうですが、それによると、
 ①屠殺に関わる社員が次々とノイローゼになっている
 ②それがきっかけとなり離婚にまで至る家庭も出ている
 ③だから屠殺に関わる部署にはなるべく“神経の鈍そうな人”を配置  している
 ④会社側はこのような事実をひた隠しにしている。明るみになると人  材募集しても応募者がなくなるから、という理由による
という内容だったそうです。
 それでも家族を養っていくために勤めを続けなければならない息子さんにその女性は「せめて死んでいった動物たちの供養をするよう、会社に働きかけたら…」とアドバイスしたそうです。
 この話を聞き「奪うものは奪われる」「殺すものは殺される」という“因果の法則”が思わず頭に浮かび、やるせない気分になりました…
「正しく知る」ことの重要性を痛感しております。                                 

投稿: 竹村 | 2006年11月30日 07:13

竹村さん、

 深刻な話ですね……。「他者の喜怒哀楽が分かる」というのが、人間の本来の特徴ですから、それに反する仕事や生活はその人を苦しめることになるのですね。

投稿: 谷口 | 2006年12月 2日 22:06

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