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2006年11月25日

『スターン報告書』から学ぶ

 10月31日の本欄で、地球温暖化による経済的影響をまとめたイギリス政府の報告書について伝えたが、これは世界銀行のチーフ・エコノミストだったニコラス・スターン氏が書いただけあり、具体的で建設的な提案がいくつも見られる。読者の参考に供するため、以下にその骨子を掲げよう:

【気温】
1.人間の活動から生じるCO2の排出により、地球表面の温度はすでに0.5℃上昇している。
2.この排出削減が行われなければ、今後50年間に地球の温度が2~3℃上昇する確率は75%以上ある。
3.同じ期間に、地球の平均気温が今より5℃上昇する確率は50%である。

【環境への影響】
1.氷河の融解で洪水の危険性が増大する。
2.作物の収穫量が、特にアフリカにおいて減少する。
3.海面上昇により、2億人が恒久的に住む場所を失うだろう。
4.最大で40%の生物種が絶滅の危機に直面する。
5.気象の激化がさらに続く。

【経済への影響】
1.気象の激化により、世界のGDPは最大で1%減少する。
2.2~3℃の気温上昇は、世界経済の生産を3%減らす。
3.もし気温が5℃上昇すれば、最大で1割のGDPが失われる。貧しい国々の損失はそれ以上である。
4.最悪の場合は、1人当たりの消費は20%減少する。
5.これらの被害を最小限で安定させるためには、今後20年間にCO2の排出量を安定させ、それ以降は毎年1~3%ずつ減らさなければならない。これにともなうコストはGDPの1%である。

【変化のための選択肢】
1.温暖化ガスを多量に排出する製品やサービスに対して、消費者の需要を減少させる
2.森林の減少を食い止めるなど、エネルギー以外の分野で温暖化ガスの排出削減に取り組む。
3.温暖化ガスの排出が少ない交通手段を育成し、2050年までにエネルギー需要の60%を化石燃料以外のものへ移行する。

【政府の対応策】
1.地球全体で炭素取引をするための(排出権)市場をつくる。
2.現行のヨーロッパ排出権取引制度を拡大し、アメリカ、インド、中国を取り込む。
3.ヨーロッパ排出権取引においては新たな排出削減目標を設定し、2020年までに30%、2050年までに60%を削減する。
4.排出削減を義務づけるために法律で目標を制定し、排出状況を監視する独立行政機関を新たに設立する。
5.企業による環境技術への投資を促進するために委員会を設立し、新たに10万人の雇用を創出する。
6.元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏を、環境問題に関する政府のアドバイザーとする。
7.貧しい国々が気候変動に対応するのを支援するために、世界銀行その他の金融機関と協力して200億ドルの基金を設立する。
8.ブラジル、パプア・ニューギニア、コスタリカと協力して、森林の持続的利用をはかり森林の減少を防ぐ。

 以上の『スターン報告書』の提案の中で、私は「変化のための選択肢」の項に掲げられた3つの政策に匹敵するものを、日本でも早急に実施してもらいたいのである。まず、政府が明確な長期的目標を掲げること。これによって企業は投資の方向を定め、経済に新たな動きが生まれるのである。

 谷口 雅宣

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