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2006年11月27日

ネコの実相

 11月26日に東京で行われた生長の家講習会で出た質問の中に、とてもユニークなものがあった。“ネコの実相”を問うもので、私は常識的な答えをしたのだが、よく考えてみると不十分な答えだったと思うので、この場で補足を試みることにする。質問してくださったのは、埼玉県狭山市から参加した43歳の主婦で、内容は次のようなものである:
 
「家でかっている猫が布団におしっこをしてしまいます。猫の実相をみて祈れば思いは届くのでしょうか。人間以外の動物に対して、動物的なことに関してなおるのでしょうか」

 私がこの質問を読み上げたところ、場内は一時沸いた。意外性と同時に正直さがある点に反応したのだろう。質問者は、このネコのことで本当に悩んでいると感じられるのである。私の答えは、「ネコは動物であり、動物としての本性は布団で寝たり、人間の思い通りに生活することではない。実相が現れるということは、ある人間の希望通りの行動を人間や動物が行うことでは必ずしもない」というものだった。自然界にいるネコは、尿意を催せば自分の好きなところで尿をするだろう。それを「布団の中では困る」と思うのは飼い主の勝手な願望であって、その願望に従うことが“ネコの実相”が表れることではない--私の答えの大意はそんなものだった。この日は20枚ほどの質問用紙が来ていたので、私は先を急いで次の質問へ移っていったのだった。
 
 しかし、帰宅後によく考えてみると、上の答えではまるで「自然状態が実相である」と言っているように聞こえる。単に「自然状態がいい」ということになれば、自然界では「ヘビがカエルを呑む」のも「ライオンがシカを食べる」のも「ワシがウサギを捕る」のも普通に行われている。それが実相ならば、実相とは現象のことである。私が強調したかったのは、答えの後半部分--実相とは個人の願望が成就した状態と必ずしも同じではないということだ。個人は、さまざまな利己的な動機から願望をもつことがあり、実相世界においてそれらがすべて成就しているとすると、欲望礼賛の世界が実相世界ということになってしまう。こんな考え方は、生長の家とは縁もゆかりもない。ネコやイヌを飼っている人は、ペットを愛するあまり感情移入をしすぎて、ペットと人間と同等に扱う傾向があるため、「人間のおねしょ」と「ネコの粗相」を同じに見ることもあるのだろう。それに対して「ネコは人間ではない」ことを強調したかったのである。
 
 さて、それでは「ネコの実相が表れる」とは、どういうことなのだろう。私は今日、務め帰りに花屋へ寄ってバラの花束を所望した。店員が花束を作っている間、周囲を観察する機会があった。この花屋ではネコが飼われていて、置き台の上のかなり高い位置にある籠の中に寝そべっていた。ちょうどネコ1匹が寝転ぶのに適当な大きさで、布団まで敷かれている。そのネコから30センチほど上には小型のラジカセが置いてあって、静かなクラッシック音楽を響かせていた。私が花屋を訪れたとき、店には1人の若い男性客がいて、そのネコを撫でたりあやしたりしていたのである。ネコは静かに、その好意に反応していたが、その静かさが何か妙に不自然だったのだ。その男性客はまもなく姿を消して、私とネコとが店頭に残された。私のネコに対する感覚については、本欄で何度も書いているように「つかず離れず」がモットーだ。
 
 私はネコに語りかけた。
「おい、お前はそんな所に寝ていて満足なのか?」
 ネコは寝そべったまま、2本の前足で顔の側面をなでながら、私の方を見ている。
「夕方のこの時間は、お前の仲間だったら外で活動を始めるころだぞ」
 ネコは、いかにも眠いというように大あくびをして、私を見つめる。クラッシック音楽が催眠作用を及ぼしているのかもしれない。
「おい、しっかりしろ。なまけものの人間になることがネコの幸福か!」
 ネコは、籠の縁に顎を載せたまま、目を細めてしまった。が、片目だけが薄く開いている。

 私がこのネコと対面していて感じた妙な違和感は、何だったろうか。それは、「この動物はあまりにも人間くさい」という点だった。人間をまったく警戒せず、人間が整えた環境の中で満足しきっている。それでいて、両眼は(当たり前のことだが)まったくネコの目をしているのだ。こういうネコが、“実相が表れている”のだろうか? 私は、決してそう思わないのである。
 
谷口 雅宣

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