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2006年10月28日

ラーメンとパン

 政府の地域振興策の一環として、地域名と商品やサービスの名前を組み合わせた商標の認定が初めて出された。「高崎だるま」「小田原かまぼこ」「京人形」「関さば」「長崎カステラ」など52件だが、これは申請された計374件のごく一部で今後、特許庁の審査に合格したものから発表されるらしい。今日(28日)付の『朝日新聞』が伝えている。考えてみれば、これまでそういう形の商標が認められなかったというのが不思議なくらいだ。関東産の「秋田こまち」や山梨産の「だだちゃ豆」が売られていたら、オリジナルの産地の人々には迷惑なことと思う。東南アジアで「HANDA」というブランド名を付けたバイクが走っているのにも似ている。「シャンパン」の名は、仏シャンパーニュ地方で生産されたものだけに許されるように、原産地表示をきちんとすることは「正直さ」と「品質」の証であるから、消費者の信頼を克ちえるのである。
 
 上記の記事によると、今回の登録認定が最も多かったのは京都の8件で、京人形のほかに「京あられ」「京おかき」「京仏壇」も認められたが、「京野菜」は認定リストにはなかった。2番目に認定が多かったのは和歌山県の7件で、「紀州うすい」「紀州備長炭」「紀州みなべの南高梅」「しもつみかん」「有田みかん」など。また、認定リストの中に「和歌山ラーメン」があったが、私には不思議に思えた。ラーメンと関係の深い地名としては札幌、旭川、喜多方、博多、熊本などが思いつくのだが、私は恥ずかしながら「和歌山ラーメン」を知らなかった。今日は生長の家講習会でちょうど和歌山市へ来たから、現地の人に和歌山ラーメンの特徴を訊いてみたが、「いつも当たり前に食べているから、改めて訊かれてもよく分からない」との答えだった。
 
 そこで和歌山駅前のホテルにチェックインしてから、インターネットで調べてみた。すると、和歌山では「ラーメン」よりは「中華そば」と呼ぶのが普通で、とんこつベースの醤油味のものが主流だという。「和歌山のラーメン」というサイトを運営する床井浩平氏によると、和歌山市内には中華そば屋の専門店が数多くあるが、中でも評価が高いのが和歌山駅近くにある「井出商店」で、ここから発した“井出系”の店は、スープにこってり感があるのに対し、車庫前から発した“車庫前系”の店のスープは、若干醤油が立っているという。そして、「主だった店の中華そばの具は、どこも醤油で煮込んだチャーシュー、メンマ、蒲鉾、それにネギあるいはモヤシ程度と非常にシンプルな構成」なのだという。
 
Breadcutting  夕方、和歌山市内は小雨だったので、駅周辺を少し歩いた。近鉄デパートの地下食品売場へ行ったとき、パン屋の前に人の行列ができていた。何ごとかと思っていたら、すぐにアナウンスがあって「パンが焼けた」と言う。そこへ長さ1.5メートルもある大型フランスパンを抱えた白服の販売員が現れ、行列の前でザックザックとパンを包丁で切っては売り始めた。その何とも豪快な切り方に感動して、私も妻もカメラを構えてシャッターを何回も押した。焼きたてのパンの匂いが辺りにたちこめ、売り手も買い手も幸せそうだった。翌日の予定がなければ、30センチほどもあるそのパンの一切れを、私たちはきっと買ってしまっていただろう。和歌山市は食通の多い、活気に溢れた町だとの印象をもったのである。

 同じデパートの5階で、俳優の榎木孝明氏の絵画展をやっていた。榎木氏は、知る人ぞ知る“マルチ人間”である。芝居やロケで海外や国内各地へ行くたびにスケッチをし、画集や画文集を数多く出し、美術館まである。その明るく、伸びやかなスケッチ画を旅先で堪能できたことは有難かった。

谷口 雅宣

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コメント

合掌ありがとうございます。
こちらのブログには、初めてコメント書きます。
札幌教区青年会の委員長を拝命しております、上田です。
実は、私の妻の実家が和歌山県日高郡に有りまして、和歌山は札幌に
来る5年程前に住んでおりました。
その当時、和歌山市の「井出商店」のラーメンを何度か食しました。
このラーメンは、ある事件がきっかけで全国の報道陣の間でも有名になり
とあるインスタントラーメンの会社からも商品として発売されました。
今も時々ですが、和歌山の味を堪能したくなれば、買ってしまいます。
副総裁先生が驚かれた「パン」も購入した事が有ります。
すいません。つまらないコメントでした。
当時を思い出して思わず、コメントしてしまいました。
これからも、毎日欠かさずブログを拝読させていただきます。

                          感謝合掌

投稿: 上田智 | 2006年10月30日 01:57

上田さん、

 コメントに感謝します。
 そうですか、ラーメンもパンもご存知なのですね。私には知らないことがまだまだいっぱいあります。だから、人生は面白いのでしょう。

 奥様によろしくお伝えください。

投稿: 谷口 | 2006年10月30日 16:29

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