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2006年10月12日

鳥の巣事件

 休日を利用して久しぶりに大泉町の山荘に来た。紅葉は始まっているが、山々を覆うカラマツ林は黄金色に変わるまでにはまだ早い。が、朝晩は冷えると予想して、東京の住まいの庭からサワラの木を薪にしたものを4束、車に積み込んで来ていた。
 
 サワラはヒノキ科の常緑高木で、日本特産だ。ヒノキに似た芳香があり、桶類や浴室用材として使われる。大きなものは樹高30メートル、幹は直径1メートルにもなる。しかし、古木になると幹が中空になって、暴風雨などで倒れる危険性が生じる。そんな古木が庭の北西の端に4本ほど並んでいたのを、台風シーズンを前に母が伐採を依頼した。私は「それならば…」と考え、一部を薪ストーブに入る大きさに切って残しておいてもらった。伐った木は湿っているので、すぐ薪としては使えない。が、山荘に置いてあった別の薪を燃料に使い、サワラを補充するつもりだった。
 
 薪ストーブへの点火は、今年の春以来はじめてのことだった。それを得意な妻が、「薪に火がつかない」と言って、ストーブの前からなかなか離れない。山荘の薪は一応、雨が直接かからない軒下に積んであるが、風があればすぐ濡れてしまう。だから当初、薪の湿気で火が点かないのだと思っていた。私もやってみたが、着火剤を置き、古新聞に火をつけても、ストーブの扉を閉めると、それまで盛んに燃えていた火が消えてしまう。空気の吸入口を何度も確認するが、結果は同じである。これまで何年もこのストーブを使っていて、そんなことは一度もなかった。可能性としては、ストーブ本体の故障か、あるいは煙突に何かが詰まっていることが考えられた。

 山荘のメンテナンスをしている会社に電話すると、「すぐ行きます」という返事で、10分後ぐらいに社長さんが自ら来てくれた。その社長さんも我々と同じことをしてみたが、結果は同じだった。またこの時、ストーブの煙が煙突から出ないことが確認された。社長さんがストーブ会社に連絡すると、“症状”を聞いた担当者は煙突が詰まっている可能性を指摘した。そして、室内に出ている煙突をズラして中を調べる方法を教えてくれた。その結果、ストーブのすぐ上から煙突がわずかにズレた。ちょうど手の指が3~4本入る隙間が開いたのである。と、そこから半分乾燥した緑色の苔の固まりのようなものが見えた。我々は「ワッ」と言い、社長さんは「これだ!」と言った。鳥の巣の材料が、ストーブの排気口を覆っていたのである。

 それから後は、社長さんと妻が一緒になり、煙突の中に指を突っ込んで中身を次々と引き出した。私はそれを少し緊張しながら見ていた。ヒナの死骸でも出ないかと心配していたのだ。が結局、煙突の長さ1メートルほどの中に、鳥の巣の材料だけがいっぱい詰まっていた。社長さんの話によると、鳥が煙突から入ることはあるが、その場合、ストーブの中でバタバタしていたり、ストーブの戸が開いていれば、部屋の中がフンだらけになっている。しかし、鳥の巣の材料だけが、煙突にこんな大量に詰まっているのは、見たことがないという。そう言えば、この山荘には、かつて軒下から鳥が入って天井裏で騒いでいたこともある。鳥にとっては居心地のいい場所かもしれないが、我々人間にとっては、夜中にガサガサ、トントンと音を立てられるのは困る。
 
「自然との共生」など、言うことは簡単だが、いざ実行するとなるとなかなか訓練がいるものである。

谷口 雅宣

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