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2006年10月17日

核拡散時代への対応 (2)

 北朝鮮が核実験をしたことの証拠をアメリカが掴み、発表した。このことに関連して、自民党の政調会長である中川昭一氏が15日のテレビ放送で、「(国防の)選択肢として核ということも議論としてはある」と発言したことが問題になっている。中川氏は翌日に「私は核武装反対論者」だとして、核武装論は自説でないと主張したが、政権党の政調会長が自説でもないものにテレビ放送でわざわざ言及することの不用意さは、批判されても仕方がないだろう。ところで、日本の核武装については、私は10月13日の本欄であまり明確に意見を書かなかった。そこで中川氏のような誤解が生じないように、ここで私の意見を述べよう。

 私は日本の核武装に反対である。その理由はたくさんあるが、宗教的には、「殺すものは殺される」「心で認めるものが現れる」などの“心の法則”の逆用になるからである。また、政治的な観点からは、主として①防衛戦略として効果がない、②同盟関係を破綻させる、③国民の心情に反する、の3点から反対である。さらに、核武装は経済的にも貴重な資源と人材の無駄遣いとなり、したがって環境の破壊と悪化を加速する。崩壊後の旧ソ連の国内事情を振り返ってみると、このことは分かりやすい。今回は、これらの理由のうち政治的理由の1番と2番について、少し述べてみよう。

 実は、今日(17日)付の『日本経済新聞』の社説が、①の点を次のように簡潔に要約している--「核抑止力を維持するには敵が核攻撃したときに対抗するための第2撃能力が要る。第2撃用の核ミサイルは隠しておく必要がある。日本にはそのための用地がない。潜水艦に配備するとしても海上自衛隊の基地は限られており、探知しやすい」。

「第2撃」の意味については、10月13日の本欄ですでに述べたとおりである。敵の核攻撃を“吸収”したうえで、敵にとって「耐え難い破壊をもたらす」報復攻撃の能力を温存しなければ、核の抑止は機能しない。上記の説明では「第2撃用の核ミサイルは隠しておく」と書いてあるが、そんな生易しいものではない。「隠す」だけではなく、敵の核攻撃に耐えるために、分厚いコンクリートで固めた地下サイロの中で核ミサイルを「防護する」のである。そういう頑強な核ミサイル基地を日本各地の山中に建設する必要がある。また、上記では潜水艦に触れているが、海上自衛隊の基地が限られているならば、各地にそれを増やす必要があり、さらに海中に潜行したまま長時間活動ができる原子力潜水艦を配備することが望ましい。その中に第2撃用の核ミサイル(SLBM)を隠すからである。冷戦時代のアメリカは、このほかの第2撃用手段として戦略爆撃機に核兵器を積んでいた。軍事危機が発生すると、これが何機も空軍基地から飛び立って敵国の上空へ向うのである。

 アメリカはこの“3点セット”の核兵器でソ連に対峙し、ついにソ連を崩壊させた。もちろんアメリカ1国がそれを成し遂げたわけではなく、同盟国の協力があったからだ。日本が北朝鮮に対抗して核武装するのであれば、3点は必要でなく、2点でいいかもしれない。しかし、核抑止力維持のための上に書いたような諸方策を日本がこれから実行できるだろうか? 私は、現在の日本の社会状況、政治状況の中では、とても不可能だと考える。それでももし核武装に走るならば、中途半端な予算で、あまり防護できないミサイル基地を建設し、潜水艦は従来型のものに核ミサイルを搭載して誰にでも分かる場所に係留しておくことになる。これでは、北朝鮮に対して「核兵器はここにあるから、早く先制攻撃をしてくれ」と言うようなものである。つまり、中途半端な核武装は、かえって敵の先制攻撃を誘うのである。
 
 これに加えて、政治上の損失も大きい。他国から見れば、日本はすでにアメリカの“核の傘”の下にあるのに、なぜ独自の核兵器が必要なのか、が問題となる。そのことを、当のアメリカを含めた世界各国が考えるだろう。日米安保条約が存在する中で日本が核武装するには、「アメリカの“核の傘”は不十分だ」と考えるのでなければ不合理である。つまり、日本の核武装は、アメリカに対して「あなたが条約上の義務を履行するとは思えない」と言うメッセージを送るのである。当然、同盟関係は怪しくなる。また、韓国や中国やロシアなどの近隣諸国は、日本はアメリカから離れていくと考え「何か野心がある」と受け取られやすい。特に、民族的には北朝鮮と同一の韓国は、日本の核兵器が北朝鮮だけでなく、自国に向けられていることを疑うだろう。こうして、北東アジアの従来の国際関係は大きく変動し、日本は恐らく孤立していくだろう。

 これらのことを考えれば、日本の核武装は「選択肢の中にある」とは言えないのである。

谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 この危急の国際情勢下において先生の明快なお考え、指針をお示し下さいました事、信徒として日本人として誠に有り難く存じます。

 生長の家の「心の法則と平和への道の神示」にありますように恐怖心に駆られて、必要以上の武備を蓄える事は戦争への道であると明確に示されておりますが、本当にその通りだと思います。

堀 浩二拝

投稿: 堀 浩二 | 2006年10月17日 22:20

堀さん、

 コメント、どうもありがとう。
 昨今の日本では、「勇ましい」ことが「愛国」であるかのような言論がまかりとおっているのは、嘆かわしいことですネ。

投稿: 谷口 | 2006年10月18日 11:48

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