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2006年10月20日

CO2排出量の不思議

 環境省が17日に“速報”として発表した昨年度の国内の温室効果ガスの排出量のことが、18日付の新聞各紙に載っている。それによると、この速報値はCO2換算で約13億6400万トンで、前年度より0.6%増えたことになる。京都議定書での基準年となる1990年度よりも8.1%上回っているため、同議定書による削減義務(6%)を考えると、今後(2008~12年までに)、14.1%の削減が必要となった。昨年も同じ時期に、同省は2004年度の温室効果ガスの排出量の速報を出しているが、それは13億2900万トンで、2003年度の排出量より0.8%減少したのだった。(2005年10月22日『朝日』)ところが1年たって今度は0.6%増えたため、元のレベルへもどってしまった格好である。

 産業、業務、家庭等の部門別に見ると、最大の排出量がある産業部門は基準年より3.2%減っているものの、業務部門が42.2%、家庭部門も37.4%も上回っている。増加の原因は、世帯数が増え、また事業所の床面積が増えたこと、さらに2005年度は冬季の寒さが厳しかったため、暖房による排出が増加したことなどが挙げられるという。(『朝日新聞』)

 私の実感では、前年度より「0.6%増」という数字はウソのようである。というのは、昨年から今年にかけて、私の住む周辺の東京の渋谷区、新宿区あたりは、地下鉄や高層マンション、商業ビルなどの建設工事でボコボコに掘り返されているからだ。ビルを取り壊し、新しいビルを基礎から建て直す際に排出されるCO2と、取り壊す前のビルの中で生活や商業活動を行う際に排出されるCO2とは、どちらが多いのだろうかと思う。印象としては、前者の方がよほど多いように思うのだが、実際の数字を比べたことはない。
 
 論理的に考えても、前者は後者よりも多いはずだ。大型トラックを走り回らせ、重機を何台も動かし、鉄骨等の建設資材を新たに製造し、木材はほとんど外国から輸入し、内装はセメントや石油製品をふんだんに使い、新しい什器や備品を製造して運搬する……ビル建設にともなうこのような作業から出るCO2が、従来のビルの中での活動から出るCO2よりも少ないと仮定してみよう。妙な結論が出ないだろうか? それは、日本中の建物を新築し、什器備品もすべて新しくすることが温暖化防止に貢献することになる、という結論だ。そんなバカな話はないと思う。

 そう考えてみると、景気が回復し、ビル建設を含む経済活動が盛んになっている今日、前年度比で「0.6%増」というCO2排出量は、計算に含めるべき数値が、いくつか抜け落ちているような気がしてならない。一流大学出の環境省の人々が「抜けている」と言うつもりはもちろんないが、とても腑に落ちないのである。多分、東京の経済活動は盛んでも、地方は必ずしも盛んでないから、日本全体としてはプラス・マイナスして「0.6%増」ということなのだろう。

 しかし、そう考えてもオカシイ数字がある。それは、18日付の『日本経済新聞』に載った東京都の2004年度の温室効果ガス排出量である。上記の数字と1年ずれているが、「戦後最長の好景気」などと言われている日本経済の中心は東京だから、1年のずれで数字が大きく動くとは思えない。その記事によると、2004年度の都内のCO2排出量は6300万トンで、前年度比で「0.4%」しか増えていないというのだ。新聞の見出しには、だから「横ばい傾向が続く」などと書いてある。好景気の中で、環境税も炭素税も課せられていないのに、CO2排出量がどうして“横ばい”になるのだろう? どなたか、私の疑問を解いてください。
 
谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 私は昨日、先生のこのブログを拝読して、この話題が何となく頭から離れないでいました。そして、今朝起きたとき、もしかしてこれは「グローバル・ディミング」(global dimming)の影響では? と思いました。「グローバル・ディミング」はまだ日本語で決まった訳語がないそうで、「地球薄暮化」とか「地球暗黒化」などと訳されているのだそうです。環境ジャーナリストの枝廣淳子さんのサイトにそのことがのっていました。アドレスは、

http://www.es-inc.jp/lib/archives/060310_133941.html

 です。また、この中で紹介されているBBCの特集(と見られる)サイトがありましたので、覗いてみました。これはsummaryですが、放送されたtranscriptや質疑応答形式の文章もありました。

http://www.bbc.co.uk/sn/tvradio/programmes/horizon/dimming_prog_summary.shtml

 この2つのサイトを見てみますと、科学者たちは産業革命以前の二酸化炭素濃度を比較すると、現在までの気温上昇度が0.6度というのはおかしい、というのです。本当は6度ぐらい上昇しているはずだ、と。そしてその原因は、石油や石炭、木材などを燃やすときにでる微粒子、エアロゾル(aerosol)などの“冷却汚染物質”が太陽の光を反射することにより、地球が冷却されているのではないか、とのことでした。

 また面白い実験が紹介されていて、アメリカで2001年に起きた同時多発テロの直後、3日間にわたって全く飛行機飛ばなかったときに科学者が、昼間の気温と夜の気温差を調べ、その結果、飛行機が飛んだときと比べて温度差が増えているとの実験データがあるのだそうです。

 そういうことを考えますと、

>> 大型トラックを走り回らせ、重機を何台も動かし、鉄骨等の建設資材を新たに製造し、木材はほとんど外国から輸入し、内装はセメントや石油製品をふんだんに使い、新しい什器や備品を製造して運搬する……<< 

 という現象が起きたとき、空気中に多くの“冷却汚染物質”が飛び、温暖化の効果を相殺した、と考えたのですが、いかがでしょうか。

 阿部 哲也 拝

投稿: 阿部 哲也 | 2006年10月22日 12:18

谷口雅宣先生

 申し訳ありません。私の早とちりでした。
 私の書いた内容は、二酸化炭素の排出量とは関係ありませんので先生の問いに対する答えにはなっていません。大変失礼いたしました。

 阿部 哲也 拝

投稿: 阿部 哲也 | 2006年10月22日 17:09

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