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2006年9月20日

グーグル・ニュースに“待った”

 私は8月4日の本欄で「ニュース配信の新潮流」と題して、アメリカの新聞や雑誌社のサイトに、他社のニュースや記事の見出しを表示する“潮流”のことを紹介した。「ロボット検索」を得意とするグーグルやヤフーのニュース・サービスに対抗する新潮流だと思ったのだが、ここへ来てこの種のサービスに対して著作権問題で“待った”がかかった。ベルギーの裁判所がこのほど、グーグルに対してグーグル・ニュースのサイトからベルギーの新聞のコンテンツをすべて削除させる決定を下したからだ。それに従わない場合は、1日当たり100万ユーロ(127万ドル=約1億5千万円)の罰金が科されるという。今日(20日)付の『ヘラルド・トリビューン』紙が伝えている。
 
 それによると、この決定に伴い、グーグルはグーグル・ニュースのサイトからベルギーに本部をもつフランス語とドイツ語の新聞のコンテンツを削除したという。グーグルを提訴していたのは、ベルギーの主要な新聞の著作権保護を支援している「コピープレス」(Copiepresse)という組織。ベルギーでの第1審法廷は今月開かれたが、グーグルの言い分では、そのことと判決内容を知ったのは15日になってからという。グーグルのロンドン駐在スポークスマンは、この決定に対して控訴する意向を示しているが、ベルギーの新聞のコンテンツは、18日からグーグルのサイトから消えているらしい。

 コピープレスのマーガレット・ボリボン氏(Margaret Boribon)がロイター通信に語ったところでは、訴訟を起こしたのは、グーグルが新聞社の仕事から利益を得ているためであり、コピープレスはグーグルに対して記事の使用許諾をきちんと得て、使用料を払うように求めているのだという。これに対しグーグル側は、「我々はユーザーが記事を探しやすくし、また多くのユーザーを新聞社のサイトへ導くことで、新聞社に利益を与えている」と反論している。グーグルはさらに、「新聞社は、自社の記事がわが社のサイトに掲示されることに反対ならば、そう言ってくれれば削除するという方針を明確にしている」として、訴訟など全く不要だと主張している。しかし、新聞社や通信社に言わせれば、「本当の問題は、我々が大金を使って世界中から集めたニュースの見出しや写真、記事の価値を、彼らが認めないことにある」という。

 どちらの言い分にも一理があると思う。双方の言い分の中で明確になっていないが、この問題の基本にあるのは、インターネットによる広告収入だ。ネット上でニュースが読めることになって、新聞や雑誌の売り上げが減っている。ネット上の記事の多くが無料で簡単に入手できるのに対し、新聞や雑誌は有料だからだ。部数が減れば当然、広告収入は減る。これに対しネット上の広告収入は増加しているが、パソコンの1画面に「多種のニュースを一覧する」という機能には限界がある。物理的な限界に加え、ライバル社のニュースまで表示するわけには行かない。しかしユーザーの立場から言えば、「複数のライバル同士の記事を読み比べられる」というメリットは、1社からは得がたい新しい価値だ。そういうサイトへ行くユーザーが増えれば、そこの広告収入が増加する。

 インターネットという便利で新しい媒体が登場することで、従来より高度な情報を得られる価値は棄てがたい。しかし、その一方で、従来型の情報収集の質が落ちるようでは、元も子もない。時間がかかっても、両者が共存する道を見つけ出してほしい。
 
谷口 雅宣

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