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2006年9月14日

色覚の起源

 私は各地で行う生長の家講習会の講話で、「人間は世界の本当の姿を感覚では捉えられない」という話をよくする。いわゆる「実相」と「現象」は違うということだ。そんな時、「空は本当は何色ですか?」などとトリッキーな質問をすることもある。常識的には「空は空色だ」と考えるが、空に特別な色などついていないことは、航空機に乗ったことのある人はよく知っている。航空機の窓に何色かがべったり付くことはないからだ。空には一定の色などない。様々な波長を含む太陽光の中で、どのような波長のものが人間の視覚に入りやすいかによって、空の色は変化する。いや、もっと正確に言えば、人間の視覚の中で発生する色の感覚に変化が生じる、のである。変化するのは「空の色」ではなく、「人間の色の感覚」である。--このへんの解説は結構わかりにくいので、上記の説明に納得できない人は拙著『心でつくる世界』の第2章を参照されたい。
 
 ところで、我々のもつような色覚を哺乳動物のほとんどの種はもっていない、と言うと驚く人がいるだろうか? 犬、猫、牛、馬、山羊、羊、ネズミ……などは、ほとんど色盲であるという。哺乳動物では、人間と人間の属する霊長類--ゴリラ、チンパンジー、ヒヒ、オランウータンなど--そしてサルにだけ色覚が発達している。科学者の間では、その理由がいろいろ考えられてきたが、なかなか決定的なものがなかったそうだ。そこへ最近、有力な新説が提示されたらしい。9月12日付の『ヘラルド・トリビューン』紙に、カリフォルニア大学の人類学者、リンヌ・イスベル博士(Lynne A. Isbell)がその説を紹介している。

 まず“旧説”を振り返ると……これらのサルたちは熱帯の樹上で生活してきたから、そこから落ちたり滑ったりしないために優れた視覚が必要だった、というのが初期のものだ。この説は20世紀初頭から半世紀にわたって使われてきたが、1970年代になって、リスなどサル以外の多くの哺乳類が樹上生活をしていて色覚が発達していないことが指摘され、権威を失った。次に登場したのが、サルは昆虫を捕食するために色覚を発達させた、という説である。昆虫のように動き回り、保護色などを使う動物を捕らえるためには、優れた目が必要と考えられたからだ。しかし、昆虫を捕らえるためには、聴覚や嗅覚だけでも十分役に立つ。そこで90年代に発案されたのが、「何でもできるため」という説だ。つまり、昆虫も果実も食べ、遠くの枝につかまるためにも目がよくなければならない、というわけだ。

 これらの説は皆、「食べる」ことに有利な方向に感覚が発達するという前提で考えられた。しかし、動物にとって「食べる」ことと同じように重要なのは「食べられない」こと--つまり「捕食者から逃れる」ことである。その視点から霊長類やサルの色覚について研究したことが、新説登場の契機となったようだ。霊長類の脳を研究してみると、視覚を担当する脳の部分で最も発達しているのは、「目で見てものを捕らえる」ための領域らしい。具体的には、前方を注視し、近くのものを背景から浮き上がらせ、また保護色によって隠されたものを見つけるための部分だ。新説は、このような脳の領域は、「誤ってヘビを踏みつけないため」に発達したというのである。

 イスベル博士は、人間を含めたほとんどの霊長類はヘビを極度に嫌うこと、加えて毒ヘビのいないマダガスカル島のキツネザルはヘビを恐がらず、その視覚は最も単純であることなどを証拠に挙げて、新説を擁護している。簡単に言ってしまえば、我々人間が現在、“天然色”の自然を見て「美しい!」と感動できるのは、大昔にヘビの祖先が我々の祖先の生存を脅かしてくれたおかげ……ということになる。

 ところで、私はヘビを好きではないが、姿を見て「恐怖」するようなことはない。しかし私の妻は、ヘビを見ただけでムシズが走るらしい。一方私の息子の1人は、小さい頃、どこかの動物園でヘビを肩から掛けて大騒ぎを起こしたことがあるが、私はヘビと接触したいとは思わない。私もその息子も視力が良いとは言えないが、妻の視力は長いあいだ左右とも「2.0」で、ほとんど完璧だった。この事実は、何かを説明しているだろうか?

谷口 雅宣

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