カリフォルニアよ、ありがとう!
アメリカ西海岸にあるカリフォルニア州が、温室効果ガスの排出削減を義務づける地球温暖化解決法案を可決した。これにより同州は、2020年までに温室効果ガスの排出量を現在のレベルから25%削減し、1990年のレベルまで戻すことになる。ブッシュ大統領の決定により京都議定書を“袖”にしたアメリカだが、ブッシュ氏と同じ共和党のシュワルツェネッガー知事率いる米最大の州が同法案を可決した。私が驚いたのは、同州議会の共和党は反対に回ったため、民主党の協力で可決したこと。これにより、アメリカは同議定書に“半分復帰”したことになるかもしれない。
同州はアメリカで最も“先進的”と言われる州で、すでに自動車排気ガスを厳しく規制している。この動きにも“後続部隊”が見込めるかもしれない。その候補として考えられるのは、ニューヨーク、ニュージャージー、デラウェアと、ニューイングランド4州。これらの州はすでに、火力発電所から排出される温室効果ガスを2019年までに1割減らすことで合意しているという。
9月1日の『日本経済新聞』夕刊によると、同法で削減義務を負うのは、温室効果ガスを多く排出する発電所や石油精製所、セメント工場などの主要産業。さらに、排出権取引などの京都議定書のメカニズムも活用して排出削減を図るという。8月2日の本欄に書いた通り、同州は温室効果ガスの排出権取引に関して、今年7月末にすでにイギリスと協定を結んでいるから、国の先を越して、同州が単独でヨーロッパの排出権市場に参加する可能性もある。1日付の『ヘラルド・トリビューン』紙によると、最初の大規模削減は、温室効果ガスを1990年のレベルにまで減らすことを目標として2012年から始まる。また同紙は、カリフォルニア公共政策研究所(Public Policy Institute of California)が最近実施した意識調査を紹介しており、州民の8割近くが気候変動に対する緊急措置が必要だと考えているという。
こういう考え方は、今年7月の山火事多発と熱波襲来の経験から来ているのだろう。詳しくは7月7日、同25日の本欄を参照してほしいが、同州は雨が少なく、水源の多くを内陸部のシェラネバダ山脈の積雪に負っている。その雪が今、温暖化で減少しているのだ。また昨秋、南部諸州であった大型ハリケーンの被害を温暖化と関連づけて捉えているアメリカ国民も数多い。ルイジアナ州のニューオーリンズは先日、ハリケーン「カトリーナ」の襲来1周年を迎えたが、同市の人口は被災前より25万人も減った。アメリカ各地へ移住した被災者たちは、その悲惨な経験を直接、多くの人々に伝えていることだろう。
長く続けてきた生活スタイルや習慣を変えることは、人間にはなかなか難しい。特に、昔より困難な方向へ変化を求められると、いろいろな理由をつけてそれを拒否するものだ。変化の方向が正しいと頭で分かっていても、である。そんな中で起こる“天災”は、しだいに“人災”の色彩を帯びていく。科学が発達した現代では、天災は「忘れたころにやってくる」のではなく、予測され、警告されても、「分かっているけど避けられない」ものへと変わりつつあるようだ。そんな時には、強い指導力をもった政治家が登場するか、あるいは大型災害が社会を襲って人々の意識に変化をもたらすか、いずれかが必要なのかもしれない。前者は、民主主義の危機である。後者は、人間社会の不幸である。しかし、第3の道もある。それは、「変化は困難であるがゆえにやる価値がある」と考える人々によって切り拓かれる可能性がある。そして、そういう人々が活躍する余地が大きい社会が、必要な変化をなしとげていく。
日本には、温室効果ガスの排出削減を義務づける法律はまだない。私は、そういう制度的な変化を早急に実施する必要があると考えるが、自民党の総裁候補でそれを言う人は皆無である。「京都議定書に責任をもつ」と言う有力政治家が1人もいないことが、私には理解できない。アメリカの経験から学ぶことがなければ、いずれ「カトリーナ」級の被害を日本が経験するだろう。大型台風12号が近づいているが、これは元々、アメリカ西海岸から来たハリケーンであることを、私はとても示唆的だと考えている。
谷口 雅宣
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コメント
thank
you
very
mach
投稿: モンロー | 2006年9月 2日 18:40
ありがとうございます。すばらしいご文章に感動いたしました。私も全く同感です。「ノーカーデイ」をつくるとか、カーシェアリングを早急に増やすとかして排気ガスの量を減らす事が先決だと思います。私たちはこの美しい地球をまず救い平和にしなくてはなりません。そして子供たちの飢餓をなくし、戦争も無くさなくてはなりません。もし世界の軍事費が地球の平和のために使われたとしたら、人々は皆豊かで幸せであたかも地上天国が実現するでしょう。一つの大きな地球家族が生まれると思います。愛イコール神です。愛は地球を救います。小さな一歩から始めます。私は雅宣先生のご講話により肉食をやめ玄米菜食プラス魚にしてから益々健康になりました。子供たちが巣立てば魚も必要ないと考えております。又、日時計ニュースのように世の中の明るい面のみを報道するようなマスコミに変えていく必要もあります。今は悪に知らず知らずのうちに洗脳されています。模倣性のある人間にとって怖いことです。神性人間のすばらしさを皆知りたいのにそしてお互いに認め合いたいのに一方的な報道で心が汚されてしまいます。でもこれからは私たち一人ひとりが選択し愛深く成長できるものを受け取っていくべきです。たくさんの課題があります。世界の平和のために今できることを始めましょう。雅宣先生これからもどうぞご指導よろしくお願いいたします。失礼を顧みずお便りしましたことをお許しくださいませ。益々のお幸せとご活躍をお祈り致します。それでは又。
投稿: マリリンモンロー | 2006年9月 2日 19:58
マリリンモンローさん、ですか。
フーム……ケネディ元大統領は数少ない民主党の大統領でした。彼の親戚の1人が現カリフォルニア州知事と結婚し、今回の決定になった、などとも憶測できます。しかし、このペンネームは何か不吉ではありませんか?
投稿: 谷口 | 2006年9月 2日 22:41