« 色覚の起源 | トップページ | ローマ法王の失言 »

2006年9月15日

バイオ燃料は来夏から首都圏で

 日本でのバイオ燃料の利用計画が具体化してきた。これはいいニュースだが、問題が1つある。それは、政府推奨と業界推進のバイオ燃料の種類が違う点だ。当面は2本立てで行くことになるかもしれない。
 
 農水省は、5年後に年間5万キロリットルのバイオ燃料の生産を目指し、来年度予算の概算要求に106億円を盛り込んだ(9月8日『朝日』夕刊)。ここで言う「バイオ燃料」とは、規格外の麦、くず米、サトウキビなどから作るバイオエタノールと、ナタネ油や大豆油等の食用油の廃油から作るバイオディーゼルである。一方、環境省は、4年間で約12億円の予算を見込み、沖縄産のサトウキビを原料としたバイオエタノールの振興を図る(9月9日『日経』)。来年度はガソリンに3%直接混合した「E3」を宮古島の車1千台に供給する計画だ。これに加え、経産省は8億円の予算で燃料供給設備などを整え、同島内の流通を図る。環境省は2010年には、この動きを全国に広げ、新車すべてをエタノール10%混合の「E10」対応にし、2030年には全車へのE10導入を目指すという。

 この政府の計画に対して、石油業界は「ETBE」という別の方式のエタノール混合ガソリンの導入を計画している。これは、「イソブテン」という添加物をバイオエタノールに加えたもので、エタノール直接混合型よりも雨水や湿気に強いから、現存の貯蔵設備にあまり手を加えなくてすむ。しかし、大気中にETBEの排気が混ざると、人間の呼吸機能や生殖機能に有害な影響を与えるとの指摘もあり、オーストラリアでは使用が禁止されているという(同上の『日経』)。
 
 9月13日の『日経』は、石油業界の計画をもっと具体的に報じている。それによると、新日本石油や出光興産などの石油元売り10社は、来年初夏から首都圏のガソリンスタンド50店で、ETBEを混合したガソリンを販売するという。混合ガソリンは、横浜にある新日本石油の根岸製油所で一括生産し、加盟各社に出荷。初年の販売目標は14万キロリットルで、値段は普通のレギュラーガソリンと同程度に抑える計画。2009年には、販売店を首都圏外ににもひろげて合計1000店舗を目指し、2010年には国内ガソリン販売量の2割(約1200万キロリットル)をETBE混合ガソリンに切り替えるという。
 
 バイオエタノールの製造技術についても、明るいニュースがある。地球環境産業技術研究機構(RITE)とホンダが、イネのわらなどの食べられない繊維質からバイオエタノールを製造する基礎技術を開発したという(9月15日『産経』)。来春にも共同で試験工場を立ち上げ、2~3年以内に実用化する計画。イネの籾殻からバイオエタノールを製造する技術はすでにある(5月13日の本欄参照)から、イネは実だけでなく、すべてを利用できるようになる。また6月26日の本欄では、三井造船が木屑からエタノールを製造する実験工場を昨年6月から稼動させていることを紹介した。日本の森林資源とイネ、さらに雑草類が自動車の燃料として有効利用される日も近づいてきたようだ。
 
 本欄ではバイオエタノールの利用計画について、「過渡的」ではあるが「有効」として評価してきた。「過渡的」という意味は、原料となるサトウキビやトウモロコシ等が人間の食料でもあるから、将来的には人間と機械が“燃料”の奪い合いをする可能性があるからである。しかし、化石燃料を燃やしてCO2を出すよりはいいので、燃料電池車などが普及するまでの緊急避難的温暖化防止対策としては「有効」と言えるだろう。

谷口 雅宣

|

« 色覚の起源 | トップページ | ローマ法王の失言 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: バイオ燃料は来夏から首都圏で:

« 色覚の起源 | トップページ | ローマ法王の失言 »