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2006年8月 6日

熱帯都市・東京

 今朝の『朝日新聞』の日曜版「be on Sunday」の第1面をワカケホンセイインコの写真が飾っている。この熱帯原産の黄緑色のインコが東京で繁殖し、4本の電線にとまって整列している姿だ。このインコは明治神宮外苑にも棲みついていて、私はかつて短篇小説の中で登場させたこともある。体長30センチほどの尾の長い美しい鳥で、赤いクチバシが可愛らしく、甲高い“民謡風”の鳴き声も特徴的だ。私はこの鳥を気に入っているのだが、環境省は外来生物として駆除を検討中だという新聞記事を読んだことがある。しかし、温暖化が進んだ場合、南方の生物がしだいに北上するのは当然のことで、それを“外来生物”として駆除することが生物多様性の維持に寄与するかどうかは、議論の余地があると思う。
 
 同じ新聞の第2面には、クマゼミの北上のことが書いてある。大田区の平和の森公園で鳴いているというのだが、私の住む渋谷区近辺ではまだ鳴いていない。昨年は鳴いていたから、恐らく時期の問題だろう。それより最近、いつもは秋口に鳴くヒグラシの声を聞いたので驚いた。気候の変化でセミたちも混乱しているのかもしれない。

 わが家の庭では今、ブルーベリーの実が最盛期を迎えている。毎日収獲できるのがうれしいが、今年は異変が2つあった。1つは、鳥が食べに来たことだ。ものの本によると、ムクドリ、ヒヨドリ、スズメはブルーベリーを食べることになっているが、家の庭には3種類とも来るが、これまで何年も鳥の被害に遭ったことがなかった。しかし今年は、鋭いクチバシで引掻かれたような実を何個も見たし、金きり声を上げて枝から飛び立っていくヒヨドリにも遭遇した。2番目の異変は、この鳥の後にも別の動物が登場していることだ。緑色をしたカナブンのような甲虫だが、カナブンは樹液を好むというから、コガネムシかアオハナムグリかもしれない。とにかく、そういう体長2センチほどの甲虫が何匹も、ちょうど熟れて食べごろの実に食らいついている。人間が近づくと、気配を感じて自分で土の上に落ちる。だから私は毎朝、彼らに熟れた実を全部食べられないようにと、競って収獲するのである。

 ところで、読者は昨年6月6日の本欄で紹介した“東京バナナ”を覚えているだろうか。これは菓子の名前ではなく、明治神宮外苑近くの団地の庭に生えているバナナの木のことである。今年もこの木に花は咲いたが、実はできなかったようだ。「ようだ」と書いたのは、今年の6月は雨が多く、“かの地”まで足を運ぶ機会が少なかったので、見たときには黒く腐った小さい痕跡が残っていただけだったからだ。恐らく、成長せずにしおれたものだ。しかし、昨今の熱帯のような暑さの中で、そのバナナの木は、今は実に元気そうに何メートルもある立派な葉を四方に伸ばしている。「我が意を得たり」という感じだ。
 
 上記の『朝日』の記事によると、近頃の東京の年間の平均気温は16~17℃で、100年前より3℃上昇し、当時の鹿児島と同じ暖かさだという。夏の暑さに負けそうな時、私は温暖化のマイナス面のことを考えずに、プラス面を考えることにしている。東京でマンゴーが実り、バナナやパッションフルーツが収獲できる日も近いのだ……と。

谷口 雅宣

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コメント

大都会・東京は、本当に暑そうですね…。幸い、我が家は奈良県橿原市にある大和三山(やまとさんざん)のひとつ、耳成山(みみなしやま)のすぐそばにあって、その山の森が涼しい空気を送ってくれますので、多少なりとも暑さをやわらげてくれているように思います。木々のありがたさを痛感する次第です。

私もバナナは好きです。特にヨーグルトと一緒に食べるのが大好きです。先生はヨーグルトはお好きですか? 山中拝

投稿: 山中 | 2006年8月11日 23:59

山中さん、

>> 先生はヨーグルトはお好きですか?<<

 毎朝、フルーツを刻んでヨーグルトをかけて食べるのが、私の“至福の時間”です(笑)。
 城陽のイチジクが赤くなる季節ですが、食べてますか?

投稿: 谷口 | 2006年8月12日 13:09

城陽のイチジクは…まだ食べてませんでした。というよりも、イチジクが城陽の名産だということすら、まったく恥ずかしいことに、知りませんでした(苦笑)。

でもよく考えてみると、土地ごと季節ごとの名産品を存分に味わわないのは大変もったいないことなので、これからはそういうことにもっと敏感になりたいと思います。自然の恵みにもっと感謝していきたいです。山中拝

投稿: 山中 | 2006年8月12日 21:44

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