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2006年8月29日

自然界の循環と温暖化

 今朝のNHKのニュースを見ていたら、深海にある液状の二酸化炭素(CO2)を日本で初めて採取に成功したとして、機械仕掛けの“スコップ”のようなもので海底から粘液状のものをすくう様子が映し出された。私は「ヘェー」と思いながら感心して見ていた。何に感心したかというと、まず、水深1400メートルまで潜って何かをするという技術に。それから、CO2が深海では液体になるという事実に。さらには、CO2が海底に固定されるという自然界のメカニズムにである。この後、新聞記事で改めてこのニュースを読んで、さらに感心したことがあるが、それを書く前に、まず事実関係をしっかり押さえておこう。
 
 これは、海洋研究開発機構などの研究チームが、有人潜水調査船「しんかい6500」を使って沖縄県与那国島沖の水深1380メートルの海底で、液体CO2がプール状に閉じ込められている場所を発見し、そこの堆積物を採取して遺伝子解析したところ、液化CO2、微量の液化メタン、硫黄化合物などが含まれ、それらを栄養素として活動する微生物18種が生息していることを確認した、という話だ。(8月29日付『日経』『朝日』)
 
 7月2日の本欄で、海底に“人工山脈”を造ることで生物を利用したCO2の海底固定ができるという話を書いたが、上記のニュースで、自然界にはもともとそういう機能があることを知った。ただし、今回の液化CO2の由来は「地下のマグマに含まれるCO2とメタンが熱水とともにわきだし、冷やされて液化したらしい」と専門家は言っている。が、そういう中にメタンやCO2を分解する微生物が生息しているのだから、“彼ら”微生物も、地球温暖化防止に一役も二役もかっていることになる。昨年5月15日の本欄に「二酸化炭素の地下固定」を天然ガス田などで行っている話を書いたが、こちらは気体での固定だろうから、地殻変動などの影響で再び噴き出してくる可能性があるのに対し、生物が体内に取り込む固定は文字通り「固体」にするのだから半永久的で、きわめて安定している。今回の発見で、液体でのCO2固定の選択肢もできたことになるだろう。
 
 ところで、世界中の海の底には液化CO2もさることながら、CO2の20倍もの温室効果をもつメタンが液化メタンとして横たわっていることをご存じだろうか。メタンは、地中のマグマからも出るが、生物の排泄物や生物の死骸からも出る。化学式は「CH4」だから炭素(C)を含む。その量たるや、炭素量に換算して、世界中の石炭の量に匹敵するとの推定もある。気象学者が地球上に残る過去の記録を調べると、急速な温暖化と大気中のメタン濃度の急上昇とが併行していて、そのメタンがどこから来たかが問題になっていた。有力な説明は、海底に眠る液化メタンが水温の上昇によって気化し、大気中に放出されたというものだ。このことから、メタンと同じ炭素を含むCO2を液化して海底に埋めることにより、温暖化問題を解決する方法が提案されている。

 8月8日付の『NewScientist』のニュースによると、ハーバード大学の地球科学者、カート・ハウス博士(Kurt House)は、その方法を使えば、わずか80平方キロメートルの海底にアメリカ合衆国で排出される全CO2の何千年分もが収納できると考えている。ただし、問題がいくつかある。その1つは、海底にある液化メタンや液化CO2などの液化ガスは、低い海水温と水圧によって液化しているのだが、海底の水温が5℃くらい上昇すると、本来の気体にもどって大気中に放出されることが危惧されているのだ。が、ハウス博士は「それは起こりにくい」と考えている。
 
 さて、最初に書いた私の「感心」にもどろう。世の中の常識的考え方では、自然界のことを「弱肉強食の残酷な世界」と捉えることが多い。しかし、ここに書いた、大気中から深海にいたるまでの「炭素の循環」(生物の物質的主成分は炭素)を考えると、自然界の生物はそれぞれの置かれた物理化学的条件下で、炭素を与え合いながら、地球を棲みよいように、棲みよいように--言い換えれば、温暖化しないように、温暖化しないように--と生きてきたと見ることができる。多分、彼らは個々に意識的にそうして生きているのではない。しかし、生物界全体を見渡すと、「他を生かす」あるいは「生かし合う」という方向に動いていることは確かだ。私はそう感じて、感心したのである。

谷口 雅宣
 

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