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2006年8月20日

災いを転じて福となす

 18~19日にかけて、京都府宇治市で行われた生長の家の盂蘭盆供養大祭に参加した。この時期の京都は例年酷暑であることを覚悟していたが、今年は台風10号の影響で風が吹き、雲が多く、案外過ごしやすかった。ただし、降雨量が例年より少ないのか、宇治川の水位は低く、私が泊まった智泉荘の庭の苔は枯れそうに乾燥していた。数年前、同じ場所にキノコが生えていたのを憶えているから、今年は若干水不足なのだろう。全国的には、猛暑は依然として勢いを弱めない。今日の『産経新聞』によると、19日は特に東日本が暑かったようで、長野県信濃町で33.5℃、新潟県小出が37.3℃、石川県小松市が37℃、山形県酒田でも35.8℃、東京都心では33.9℃で午前中の湿度は80%を越えたという。

 地球温暖化にともなう異常気象を体験して、良識ある人類の多くが温暖化防止に本気になって取り組んでくれるならば、多少の不都合には感謝すべきなのだろうか、などと最近では考えてしまう。私は4年前に出させていただいた『今こそ自然から学ぼう』(生長の家刊)の「はしがき」中で、人間が肉体的自己の快楽追求から、他の生物や宇宙一切を神の自己実現と観ずる自覚に転換するまでは、「自然はその自覚を促す“警鐘”を我々の内外に鳴らし続けるだろう」と書き、「我々はその意味を正しく理解し、間違いを正していかねばならない」と述べた。そういう重要な学習に必要な“教材”として、昨今の異常気象や政治対立を見直し、敵をこしらえて攻めるのではなく、自己の心の反映として捉え、我々自身の態度や生活を改めることが必要である。
 
 そのことは、何も特定の宗教を信じていなくてもできることではないか。極論すれば、無神論者にもそれはできる。原因があり結果が生じることが分かれば、悪い結果を生んでいる原因(生活)を改めれば、より良い結果が出ることは自明だからだ。問題は、「生活の改善」と「自己の利益」とを天秤にかけてしまい、後者を優先し、前者を後延ばしにする人が多いことだろう。しかし、産業や経済界でも“最先端”を行く人の中には、前者と後者を対立するとは考えず、前者が後者を生むとして、地球温暖化を前向きに捉えている人もいるのである。
 
 19日付の『日本経済新聞』には、「原油高とシリコンバレー」という題で、史上最高レベルが続いている原油価格を積極的に評価し、新時代を生きるための技術開発に取り組んでいる人々が紹介されている。例えば、米カリフォルニア州のサンカルロス市には、テスラ・モーターズという電気自動車の会社がある。2003年に設立された新しい企業だが、来年には充電池のみで走る2人乗りスポーツカーを発売する予定だ。加速がフェラーリ並みで価格は8万9千ドル(約1千万円)。3時間半の充電で400キロを走り、地元のガソリン価格と比較するとトヨタの「プリウス」の3分の1の値段ですむのだそうだ。アメリカは風力発電の面では日本を大きく上回っているから、その電力を使えば、化石燃料から得た水素を使う燃料電池車よりも、電気自動車の方が自然志向ということになる。これに中東地域の地政学的リスクを考えれば、そこから輸入する石油で自動車を走らせるよりは、電気自動車という選択肢はより現実的でり、国益にも合致する。

 また、太陽光発電は日本の得意とする技術だが、上述の記事には、この分野でもシリコンバレーには先進的な技術開発をしている企業があるという。それは、パルアルト市のナノソーラー社で、印刷技術を応用してフィルム基板に回路を組み込むことで、太陽電池を安価に製造する技術を開発したそうだ。すでに初の量産工場を立ち上げているという。この記事が訴えているのは、世界の最先端を行くシリコンバレーの起業家たちは、「難問であればあるほど、解決できた時に巨大なビジネスチャンスがあるととらえる」という点だ。今夏、北半球のどこもが猛暑に襲われているが、その温暖化を進行させずに経済を豊かにする技術が開発できる、という彼らの信念は見習うべきだろう。
 
 最後に日本の例を1つ。20日の『産経』によると、石油元売り会社などで組織する石油連盟は、バイオエタノールとガソリンとの混合燃料を来夏から試験的に販売する方針を固めたそうだ。首都圏を中心に全国約50ヵ所のスタンドでの販売らしいが、残念なことに、ハイオクガソリンにのみ混合するという。理由はよく分からないが、これで問題がなければ2010年から本格販売をする計画だ。

 日本のガソリン需要は年間約6千万キロリットルだが、石油連盟の計画では、2010年にこのうち2割を、バイオエタノールを3%含んだE3ガソリンに切り換えるという。すると、年間36万キロリットルのバイオエタノールが必要となるため、農水省では沖縄産のサトウキビに加えて、規格外小麦や生産過剰となったテンサイなど多様な農業副産物を活用して対応する計画らしい。来年度予算の概算要求には、農業団体などによる大規模エタノール工場の建設を支援するため、100億円を計上するというから、この分野もゆっくりと動き出している。ぜひ「災いを転じて福」としてほしい。

谷口 雅宣

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