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2006年7月 7日

アメリカ西部は燃えている

 北朝鮮のミサイル発射には驚かされたが、今日は“燃える北朝鮮”ではなく、アメリカ西部の環境変化について書こうと思う。今朝のABCニュースは、かの“火遊び将軍”のニュースの後で、アメリカ西部で毎年起こる山火事の時期や件数を調べた結果を報道していた。それによると、1980年代半ば以降、この地方では山火事が突然ふえ、大規模のものが増加するとともに、山火事シーズン自体が長期化しているというのだ。その原因は、温暖化によるものらしい。7月6日付のアメリカの科学誌『Science』に掲載された研究が、ニュースに取り上げられた。

 同誌のサイトにある記事によると、アメリカ西部の山火事が、ここ何十年の間に増加していることはしばしば言われてきたことだが、科学的な研究はこれまで行われていなかったという。そこで、スクリップス海洋研究所のウェスターリング教授(A. L. Westerling)らのチームは、400ヘクタール以上が燃えた過去の山火事1,166件のデータを調べた。そして、1970年から1986年までと、それ以降のものとを比べたところ、山火事のシーズン(実際に山火事が燃えている期間)は78日延び、大規模な山火事1件の平均の長さは7.5日から37.1日にまで延びていたという。チームはさらに、土地表面の乾燥度を示す毎日の気象指標を調べた結果、山火事の増加と拡大には、春から夏にかけて気温が0.9℃上昇し、山地の雪の融解が1~4週早まったことが関係していると結論した。

 アメリカ西部の水の動向は、雪の降り方に大きく左右されるそうだ。河の水の75%が、冬季の山の冠雪から来る。山に積もった雪は、雪解けの季節が終るまでは山火事の勃発を防いでいるが、雪が完全に解けてしまうと、雨の少ない乾燥した気候のために、山は1ヵ月もすれば山火事が起きやすい状態になるという。アメリカ西部の山火事のほとんどは、落雷と人間の不注意による。だから、夏場の森林の乾燥度、暑い乾燥した、風の多い気候が、山火事を引き起こす最大の要因となる。そして、50年前と比べると、山の雪は1~4週間早くなくなり、それにともなって河川の水量のピーク時期も早まっているという。ウェスターリング教授らが研究した34年間では、雪解けの早い年は、遅い年に比べて山火事の件数が5倍にも達することが分かった。だから、かつて冠雪によって守られていた海抜1680~2690メートルの山々にも、しだいに山火事が起こるようになっているという。

 このようにして、①早期の雪解け、②夏季の高温、③乾燥期間の延長、④高山での山火事領域の拡大、という4つの要因が合わさり、アメリカ西部の山岳地帯の燃えやすさを劇的に増進しているのだという。この地方の山火事の原因としては、19~20世紀にかけての山林の利用方法に主な原因があるとされてきた。19世紀末から、この地方の山林は建築材料などとして広大な領域が伐採されたが、植林等により再び山林が密生したことにより、枯木や倒木が増えて火災が発生しやすくなり、またいったん燃えると消化が困難になっている、と考えられてきた。しかし、今回の研究により、少なくとも部分的には「気候の温暖化」が山火事拡大の要因であると言えるようになったのだ。

 こういう話を聞くと、私の山荘のある山梨県北部から長野県にかけての森林のことを思う。戦後の建設ブームで山林を伐採し、その後に成長の速いカラマツを植林したところまではよかったが、都市化と林業の衰退で今は密生したカラマツ林を世話する人もいない。日本列島は夏場も適度な雨が降るから、山火事はまだ少ない。しかし、今後の気候の変化で夏の乾燥期間が広がったりすれば、アメリカ西部と似た現象が起こるとは考えられないだろうか? 杞憂であれば幸いだ。
 
谷口 雅宣

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