海と陸の環境技術
早くも7月に入った。2006年、平成18年が「半分過ぎ去った」と考えると何となくソワソワした気分になるが、「まだ180日、4320時間ある」と考えると、いろいろな計画を立てる気分にもなるから不思議なものだ。佐賀市で行われた生長の家講習会を終えて、福岡空港へ向う車中でこれを書いているが、昨今の報道の中に、環境技術の進歩が感じられるのはうれしい。
火力発電所は、今や地球温暖化の“元凶”のように見られているが、ここから出る廃棄物の利用によって二酸化炭素(CO2)の排出削減ができるらしい。ただし、石油ではなく、石炭を燃やした場合だ。その石炭の灰を加工してブロックを造り、それを海底に積み上げて“人工海底山脈”を建設したところ、魚が殖え、プランクトンも増殖して海底へのCO2の固定量が大幅に増加したそうだ。6月29日の『朝日新聞』夕刊が伝えている。この人工構造物は、高さ12メートル、幅60メートル、長さ120メートルだから、“山脈”と呼ぶのはいかにも大袈裟だが、国と長崎県と企業とが共同して2000年、同県平戸市の生月(いきづき)島沖5キロの海底に8億9千万円をかけて建設したもの。
同紙によると、CO2固定のメカニズムは次のようなものだ。海流が“山脈”にぶつかると海底の栄養分を海面方向に押し上げるので、海面近くでは植物性プランクトンが発生する。すると、それを食べる動物性プランクトンや魚介類がそこへ集まり、建設後3年で周辺のアジやサバの漁獲量が上がったという。また、海面近くの植物性プランクトンは、光合成によって体内にCO2を取り込み、それを食する動物性プランクトンや魚介類は、糞や死骸の形でCO2を海底に沈める。それらは対馬海流によって水深800~1000メートルの日本海北部へ運ばれるので、数百年は表層にもどることはないのだという。この“海底山脈”の建設は当初、漁獲量の向上を目的としたものだったそうだが、CO2固定の機能が判明したことで、維持費のかからない半永久的温暖化防止策法として有望視されている。
また今日(7月2日)の『佐賀新聞』には、日立造船と姫路市のベンチャー企業「C.P.R」が、東南アジアなどで食されているキャッサバを使った生分解性プラスチックの生産計画を発表した、と書いてあった。生分解性プラスチックについては本欄でも何回か(最近では5月24日と6月9日に)書いたが、1つの問題は、石油を原料としたプラスチックよりも製造コストが高いことだった。それは、トウモロコシを原料としているためだが、その代りにキャッサバを原料に使えば値段は半分ほどになることが分かったという。発表された計画では、キャッサバの生産はベトナムで行ない、2008年から年間3000~5000トンのプラスチック素材を製造、翌年には10万トンを目指すという。
生分解プラスチックは、土中で腐るために処理費が少なくてすみ、また処理時にCO2を排出しない--つまり、原料の植物の成長過程で吸収したCO2を大気中にもどすだけ--と考えられている。だから、もっともっと盛んに利用されるべきなのだが、日常生活の場でお目にかかることはまだまだ少ない。この使用を飛躍的に増加させるには、従来の石油を使ったプラスチックの値段が上がることが必要だ。現状では、石油の値上がりによってそれが徐々に実現しつつあるのだが、速度が遅すぎる。だから、私は「炭素税」や「環境税」の早期導入を待ち望むのである。
谷口 雅宣
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