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2006年6月13日

米のバイオエタノールは有望

 前回の本欄で、「バイオエタノールの利用は温暖化防止策としては決定的ではなく、“中継ぎ”的な意味しかない」と書いたが、これは日本のように山がちで人口密度の高い国でのことであり、また途上国に温室効果ガスの削減義務が課せられていない現行制度の下でのことである。アメリカのように広大な土地をもち、農産物の自給ができるだけでなく、“雑草”や潅木の生える草原が延々と続いているところでは、また別の話がある。

 2月2日の本欄でブッシュ大統領の一般教書演説に触れたとき、その中に次のような一節があったのを覚えているだろうか--「トウモロコシからだけでなく、木屑や雑草などからもエタノールを作れる革新的な技術研究を進め、2025年までに中東から輸入される石油の75%を代替できるようにしたい」

 この文章で重要なのは「木屑や雑草」という言葉である。これは「そのへんに生えている潅木や草」という意味だ。とても野心的な数字に驚かされるではないか。が、大統領はできないことをできるように言ったのではないようだ。アメリカの科学誌『Science』の6月2日号(vol 312, p.1277)にスタンフォード大学の植物細胞学・分子生物学者のクリス・ソマヴィル博士(Chris Somerville)が、この数字の“謎解き”をしてくれた。

 同博士は、「化石燃料と競争できるコストで交通用燃料として利用できるのは、光合成によって蓄えられたバイオマス・エネルギーしかない」と断言する。ブラジルは現在、陸上交通に使う燃料の四分の一を、サトウキビから採ったバイオエタノールでまかなっている。アメリカでは、約90箇所の精製所で、トウモロコシを原料としたバイオエタノールを毎年45億ガロン(1,710 kl)ほど生産している。これを2012年までに75億ガロン(2,850 kl)にまで増やす計画である。現在のアメリカは、毎年1400億ガロン(53,200 kl)の燃料を陸上交通に使っている。最近、エネルギー省が発表した計画では、このうち30%をエタノールに転換するそうだが、これだと約600億ガロン(22,800 kl)のエタノールが毎年必要になる。これは相当な量だと言わねばならない。
 
 ところが、最近出たエネルギー省の試算では、アメリカは現在の農地を全く使わずに、国全体で毎年13億トンのバイオマスを生産できるそうだ。ソマヴィル博士によると、1トンの植物性バイオマスから、理論的には約100ガロン(380 l)のエタノールが生産できるため、アメリカ全体では、毎年1300億ガロン(49,400 kl)のエタノールを持続可能なやり方で生産できる計算になるのだという。つまり、現在陸上交通に使っている燃料の約93%は、バイオエタノールに置き換えることができることになる。これに加えて、ハイブリッド車の普及で車の燃費が倍に伸び、さらに風力発電設備が飛躍的に増設されれば、アメリカは現在の陸上交通用燃料のすべてと、航空燃料用の相当部分をバイオマスによって自給することができるかもしれないのだ。そして、温室効果ガスの排出量は劇的に減少するのである。
 
 何か夢のような話だが、問題は「理論的にこうなる」ではなく、「実際にどう実現するか」という政策の立案である。日本の場合も、現在の国内のエネルギー需要のすべてを太陽光発電でまかなう場合、太陽光発電パネルの大きさは(理論的には)「四国の三分の一」という計算がある。これはもう7年前の試算(桑野幸徳著『新・太陽電池を使いこなす』p.148)で、その後、太陽光発電の効率はずいぶん向上している。だから、今は右顧左眄をやめて、真っ直ぐに前を見た政策立案と実践の時期なのだ。

谷口 雅宣

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第1回セミナー(2007年9月21日)バイオマス・ニッポン総合戦略に伴う環境セミナーのご案内

木質系からバイオ燃料・バイオマス・プラスチック原料等
主催:NPO法人バイオマス産業機構
後援:石川酒造株式会社、西武信用金庫、
(申請中 農水省、昭島市、福生市、ミニTAMA三多摩会)
日本環境資源生活文化振興会、エコビジネスネットワーク

 京都議定書2008年~2012年の第1次約束期間を迎え、CO2抑制に本格的な取り組みが始まりました。急ぎ、化石資源代替えとして我が国のバイオマス・ニッポン総合戦略に係わる植物循環・環境資源利活用から時代を見つめ直す為にも、醸造の蔵元より下記ご講演内容から身近な地域産業振興と自然と共存共栄を基軸に我が国のバイオマス・セミナーを開催致します。つきましては、ご多忙中とは存じますがご出席賜りたくご案内申し上げます。

[日時・会場]
日程  2007年9月21日(金)開場15:00 終了予定17:30(案)
会場  石川酒造株式会社 (蔵元会場) 東京都福生市熊川一番地
      電話番号 042-553-0100
参加  無 料 (資料代@1,000円/1名) 先着順100名・申込はE-mail & FAX受付
[第一部プログラム]
15:00-15:20 開催の辞・酒造と環境 石川酒造株式会社 代表取締役  石川太郎
15:20-16:00 演題「我が国バイオマス・ニッポン総合戦略に伴う指針について」
―バイオマスとは、環境事業推奨でCO2削減―
講師 農林水産省大臣官房環境政策課 環境企画官  酒井 正裕
16:00-17:00 演題「 木質系リグニン分解遺伝子システム/有機物資源化について」
―わかりやすい微生物・生物システム―
講師 東京農工大学院 生物システム応用科学教授  片山 義博
17:00-17:30 演題「TAMAバイオマス・センター創設案件に向けて」 ジョージ兼路
18:00~ ミニTAMA三多摩会セミナー連携の普及・啓発活動・・・・・

参加  参加無料(資料代1,000円/1名) 先着順100名・申込はE-mail & FAX受付
参加申込先:  FAX :042-537-7721 JEPAX事務局宛

http://www4.ocn.ne.jp/~sai10u/

投稿: NPO法人バイオマス産業機構BIO | 2007年8月17日 11:13

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