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2006年6月16日

上海協力機構が共同宣言

 上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization)という国家グループが注目されはじめた。同機構の創設5周年を記念する首脳会議が15日に上海で開かれ、そこで採択された共同宣言に、名指しは避けたものの、“唯一の超大国”であるアメリカのやり方を暗黙裡に批判する文章が散見され、かつ加盟国間のエネルギーの開発と利用を前面に打ち出している。16日付の新聞各紙が一斉に伝えている。
 
 同機構の加盟国は、中国とロシアのほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの中央アジア4国。これに今回は、オブザーバーとしてモンゴル、イラン、インド、パキスタンが参加し、ゲストとしてアフガニスタンが出席した。このうち、インドだけが首脳ではなく石油天然ガス相の参加となったのは、3月に原子力合意が成立したアメリカとの関係に気を使ったからだろう。核開発をめぐり欧米諸国と対立しているイランは、アフマディネジャド大統領が出席して「威張り散らす国々が干渉しないように、SCOが重要な役割を果たす」(『朝日』)と発言して、対抗意識をむき出しにした。また、共同宣言では「政治・社会体制や価値観の違いが他国の内政に干渉する口実とされるべきではなく、社会発展のモデルは“輸出”できない」と謳い、アメリカ式民主主義拡大を強く牽制している。
 
 これは裏を返せば、加盟国の多くが自由や人権の尊重など欧米型民主主義の価値観から隔たった独裁的、権威主義的社会体制を維持していることを示している。特に、旧ソ連に属していた中央アジア諸国では、2003年にグルジアで民主化運動により政権交代が行われ、ウクライナでも“オレンジ革命”で欧米寄りのユーシェンコ大統領が登場、キルギスでも民主化運動が活発化した。この動きをウズベキスタンやガザフスタンの現政権が脅威に感じていることは否めない。また、パキスタンは軍事政権であり、中国もロシアも急速な民主化の流れには否定的だ。イランは、イスラム革命後は宗教権威主義によって民主化の動きを抑えてきている。
 
 このような政治的な利害の一致の背後には、しかしもう一つ、エネルギーの輸出国と利用国の利害の一致がある。人口が多く、急激に経済発展を続ける中国とインドが動き、世界第2位の産油国であるロシアと、化石燃料豊富な中央アジア諸国がそれに応じた格好だ。『産経』では、ヘリテージ財団のピーター・ブルックス氏(Peter Brooks)が、同機構が“核つきOPEC”になる可能性に警告を発しているが、中国とインドの人口、ロシアの国土の大きさを考えると、これらの国々が同盟関係を形成すれば、OPEC(石油輸出国機構)とは比較にならない影響力をもつことになるだろう。
 
 ただし、現状では“呉越同舟”の要素もあるから、同盟関係への動きはすぐに起こるとは思えない。インドは民主主義国であり現在、アメリカとの関係を重視しており、パキスタンとアフガニスタンの現政権は“テロとの戦争”ではアメリカと共闘関係にある。核開発問題で欧米で対立しているイランは今回、正式加盟国入りを強く望んでいたが、核保有国である中ロとの立場の違いもあり、オブザーバーの立場しか与えられなかった。(『日経』)共同宣言には「地域の安定を脅かす緊急事態では迅速に連携し、加盟国の利益を最大限守る」とあるから、加盟国間では、エネルギーの安定的需給関係にもとづいて経済発展を継続し、加盟国内の政治的不安定を防ぐとともに、欧米型の民主主義とは異なる政治体制の維持を図っていこうとの意図が感じられる。
 
 ところで、首脳会談の様子がテレビに映ったのを見て、私は「おやっ」と思った。それは、各首脳の席上に置かれた国名の札の表記法である。国連などでよく見かけるのはアルファベット表記1本だが、今回の場合は横2列に国名が表記されていて、上が中国語(漢字)、下がアルファベット(に見えた)である。上海での国際会議だから漢字表記を上段に掲げるのは理解できなくはないが、日本国内で国際会議を行う場合は、国名に日本語(カタカナ?)の使用することはまず考えられない。主催国・中国の“若いナショナリズム”のようなものを、そこから感じた。
 
谷口 雅宣
 

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