« ペンマウスで絵描き | トップページ | “原子力立国”でいいのか? »

2006年6月23日

フツーの話題

 夜、私が本欄の執筆をしようとノートパソコンの画面を見つめていたら、妻が「もっと普通の話題にしてよ」とのたまわく。私が不審な顔を向けると、彼女は続けて「もっとみんなが読みやすい話題よ……」と仰る。最近“硬い話”ばかりが続いていることが気になっていた矢先だから、私は納得してあたりを見回した--新聞は、ワールドカップで日本がブラジルに敗退したことを大きく報じているが、私はサッカーが特に好きというわけではない。今日の明け方、夢うつつで事の次第をラジオで聞いても、「そうだろうなぁ」と思っただけだ。日本のサッカーは歴史が浅いから、世界一に負けても不思議はない。口惜しがる妻には、「クロアチアが柔道の世界選手権で日本に負けたようなものさ」などとホザイた。
 
『朝日新聞』の夕刊1面に、中田英寿選手が緑のグラウンドで両膝を立て、仰向けになり、黄色い布で顔を覆っている写真が大きく載っている。足元には白く光るペットボトルがポツンと立っている。写真説明に曰く--「中田英は試合後、放心したように10分近い間、ピッチの中央で寝ころんだ。目が真っ赤に充血していた。試合で泣いたのは初めてだろう。『疲れていただけです』とだけ答えた。次のW杯について聞かれても無言だった」。10分も我を忘れて倒れ込む……というのは、やはり相当な衝撃だったのだろう。

 同紙によると、今朝の試合中継(NHK)の視聴率は、関東地区で午前4時45分から3分間が34.4%に達したという。ちょうど、前半のロスタイムに日本がブラジルに1-1と追いつかれた頃の時刻だ。それ以外の試合前半は22.8%だったという。この時間に関東地方の4人に1人が観戦していたのだから、日本のサッカーファンもだいぶ増えたのだと思う。あとは、子どもの頃からしっかり練習するプレーヤーの層が厚くなっていけばいいのだ。野球だって、そうやって大勢の人々が長時間をかけて、全体の実力を上げてきたから今、大リーガーを何人も輩出するまでになった。日本の野球は1871(明治4)年からだから、135年の歴史がある。その上に「日本人大リーガー」がある。外見だけをマネて、海外へ行けば何とかなるものでもあるまい。
 
 ジーコ監督も試合後のインタビューで「世界との差は?」と聞かれて、こう言っている--「プロ意識だ。まず、外国に行くのもいいが、自分のチームで試合に出られるようにしなければいけない。代表で初めて一所懸命やるのではなく、クラブの練習や試合ですべてを出し尽くすことだ」。
 
 サッカーは90分間走り続けるのだから、基礎体力をしっかりつけなければならない。技術も相当な練習をしなければ磨かれない。こういう場合、体力と精神力の勝負になるから“先進国”も“途上国”も関係なくなってしまうのだろう。日本も負けたが、アメリカもガーナに2-1で敗れた。悲観することはない。また、次の試合に向けて練習を積めばいいのである。
 
谷口 雅宣

|

« ペンマウスで絵描き | トップページ | “原子力立国”でいいのか? »

コメント

京都の橘 正弘です。いつもWeb『小閑雑感』を拝見させていただいています。ありがとうございます。
私もブラジル戦試合終了後、ピッチでひとり天を仰いで慟哭していた中田英寿の姿に感動して、マイブログに「ヒデ、4年後をめざして起て」をエントリーしました。ご参考までに、トラックバックをさせていただきます。
また、後半戦のブラジルの攻撃は獲物を追う獅子のように日本ゴールに迫り、狩猟民族と農耕民族の違いをみせつけられましたが、サムライ日本にもW杯初出場ながら存在感をアピールした巻誠一郎などの若手がおり、これからの4年間で心技体をさらに充実させて、決勝トーナメントへの進出を果たしてくれることを期待したいと思います。

投稿: G3:橘 正弘 | 2006年6月24日 21:27

橘さん、

 コメント、ありがとうございます。
 ブラジル人が“狩猟民族”であるかどうかは知りませんが、4年後でなくても、8年後でも16年後でも、努力は報われると思います。

投稿: 谷口 | 2006年6月24日 21:38

私の職場の同僚で、イングランド出身の英語の先生(サッカーの大ファンです)が、今回のワールドカップが始まる前に、I'm sorry to say, but...と前置きした後、「日本は最下位になると思う」と予想していましたが、彼がその理由として挙げていたのが、“ジーコの采配”でした。「ジーコは、日本代表の監督になるまで、監督経験がなかった。監督としての彼はまだ経験不足だ」というのです。

私の感想は、「ジーコ監督の采配は、確かに選手の自主性を引き出そうとした点では評価できるものの、世界一高い個人能力をもつ選手を前提としたブラジル流サッカーの考え方は、少なくとも今の日本には、そのすべてを当てはめることはできなかったのかもしれない」というものです。とはいえ、世界一のブラジルサッカーの精髄を少しでも日本に伝えようとしてくれたジーコ監督には、やはり感謝すべきだろうと思います。

もう一つ、接触プレーなどのときの、日本選手の身体の強さが足りないことが指摘されていますが、私自身は、日本人だからといって必ずしも小柄で線の細い選手しか出てこないとは思いません。というのも、日本の場合、柔道や相撲の世界で頑強な選手を多々輩出してきているからです。そういう意味では、これからの日本サッカー選手は、身体をもっと強くするために、日本のお家芸である柔道や相撲からもいろいろ学べるのではないか、と思いました。

いずれにせよ、長い目で日本サッカーの発展を見守ってあげたい気持ちです。日本の個性を生かした世界レベルのサッカーを育成することは、年月のかかることかもしれないとはいえ、きっと可能だと思うからです。

とはいえ、今回の結果は、やっぱりとても悔しかったですが…(笑)。山中拝

投稿: 山中 | 2006年6月24日 22:48

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: フツーの話題:

» ヒデ、4年後をめざして起て [きみたちの未来]
 “燃え尽きたヒデ 天仰ぐ”  【画像・記事】6月23日産経夕刊から引用・参照   ブラジル戦の放送終了直前、ヒデがセンターサークル近くで寝転び、悔し涙を流していたシーンが流れて感動的だった。ヒデの胸中を知ることはできないが、悔しさ、情けなさ、様々な想いが駆け巡っていたのだろう。  4年後、2010年の南アフリカ大会のことまで、今は考えられないかもしれないが、まだ33歳の若さでは�... [続きを読む]

受信: 2006年6月24日 21:28

« ペンマウスで絵描き | トップページ | “原子力立国”でいいのか? »