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2006年6月14日

トヨタの“新世代ハイブリッド車”構想

 トヨタがついに「充電式ハイブリッド車」の構想を発表したようだ。また、バイオエタノール100%のエコカー(E100)を2007年春にブラジルで発売すると宣言した。前者は遅きに失した感があるが、後者の早さには驚いた。多分、ホンダが先行して、今年9月にE100の発売を発表したことに対抗したのだろう。いずれにせよ、自動車産業で地球温暖化防止の動きが本格化してきたことを意味するので、大いに歓迎したい。今日付の新聞各紙が伝えている。

 私が注目するのは、「充電式ハイブリッド車」の方だ。というのは、本欄でも何回か書いたように、こちらの方が自然エネルギーとの組み合わせで発展性があるからである。トヨタのプレスリリースでは「プラグインハイブリッドカー(plug-in hybrid car)」という名前がつけられ、注釈として「外部充電や電力供給が可能なハイブリッドカー」と書かれている。さらに「外部の電源からの充電ができ、バッテリー電源によるモーターでの走行領域の拡大を可能とし、CO2削減と大気汚染防止効果が期待できる新世代自動車」という説明が付されている。
 
 2月3日の本欄でこの“新世代ハイブリッド車”の構想に触れたとき、ホワイトハウスのウェッブサイトに掲示された次のような文章を紹介した(拙訳):

[より効率的な車の開発]現在走っているハイブリッド車は、エネルギー省で開発された電池を使っています。大統領の計画により、ハイブリッド車と充電式ハイブリッド車のために次世代の電池技術の研究が加速されるでしょう。現在のハイブリッド車では、搭載した電池への充電はガソリンエンジンからしかできません。充電式のハイブリッド車は、電気でもガソリンでも走れ、夜間に家庭の電源に差し込んで充電することもできます。この型の車ができれば、都会の通勤時にはガソリンほとんど不要になります。高度な電池技術は、短期間に石油の消費を相当に減らす可能性を秘めています。
 
 読者に気づいてもらいたいのは、ホワイトハウスの発表が先で、トヨタ自身の発表が4ヵ月半も後ということだ。これが何を意味しているのか、私は考え込んでしまう。トヨタという会社は、すでに“日本の企業”という枠組みを超えて、世界一の超大国の政策決定に関与するほどになっている。また、1月31日の本欄に書いたように、今年1月に発売された環境活動家のレスター・ブラウン氏(Lester R. Brown)の新刊にも、この車のことが書いてあることを思えば、世界の環境政策を引っ張っているのは、少数のトップクラスの人間だということが分かる。

 ところで、トヨタのプレスリリースでは明らかでないことが1つある。それは、「外部充電」をするための蓄電池が、当初のブラウン氏の構想のように「2台目」の電池であるのかないのか、である。この点について、『朝日新聞』の記事はこう書いている--「従来型は、減速する時に余ったエネルギーを電気に変えて充電する仕組み。そのための部品は大きく、システムも複雑で原価も高くついていたため、小型車には搭載していなかった。新型HVでは自己充電はせず家庭で充電するため、これまでの複雑なシステムは不要で、軽量化できる」。もし、これが事実だとすると、トヨタの考えはブラウン氏の構想とはやや異なることになる。つまり、蓄電池は1台に限定し、その性能を上げることで電気自動車としての走行距離を10キロ程度(現在は2キロ)まで延ばすという戦略だ。

 また、これによって小型車のハイブリッド化が可能となるため、中国やインド市場での需要も見込んでいるに違いない。レスポンスの記事によると、「トヨタは、ハイブリッド車の年間販売台数を2010年代の早期に100万台に拡大させる方針であり、モデル数の倍増もその時期までに実現を図る。今後の車種展開では『ヴィッツ』級のコンパクトカーなども含まれる見通し」とあるが、これも「2台目」の蓄電池は搭載しないことを意味しているのだろう。自然エネルギーとの組み合わせは、しばらく“足踏み”することになるのかもしれない。

谷口 雅宣

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