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2006年6月19日

ムダ使いとの決別

 3月24日の本欄で、中国が“環境税”の考え方を取り入れた新税制に4月から移行することを取り上げたが、その際、割り箸に5%の税金が導入される、と書いた。森林伐採を食い止めるためである。この効果がジワジワと効いてきたようだ。ただし、中国社会への影響というよりは、日本の“割り箸文化”が困難に直面しているようだ。今日の『朝日新聞』夕刊によると、日本での“無料割り箸”は存続の危機に瀕しているらしい。
 
 この記事によると、割り箸の日本での年間消費は248億膳。簡単に考えると、1億人が248回使うということだ。ところが、このうちの97%を占める241億膳は、中国からの輸入品。国産材は約5億膳で、10年前の6分の1にまで減っているという。その中国産の割り箸が、昨年12月に30%値上げされた。また、今年3月にはさらに20%値上げすると通告されたものの、市場の混乱を理由にまだ実施されていないという。日本での大口需要は、コンビニチェーン、持ち帰り弁当チェーン、牛丼チェーンなどだが、中国産がこのまま値上がりを続ければ「無料割り箸」はなくなるかもしれないという。
 
 私は、割り箸は有料化すればいいと思う。理由は簡単、レジ袋の有料化と同じで、自然へのコストが発生しているものには、そのコストに見合うだけの値段をつけるべきだからだ。現在でも、心ある人は“マイ箸”を持ち歩いていると聞く。有料化すればそういう人も増えてくるし、国産の割り箸も活路を見出すかもしれない。日本は中国とは逆に、森林の間伐が行われずに放置されているのが、これによって多少は間伐される。また、4月18日の本欄でも書いたように、全国でのモウソウ竹林の侵食拡大の勢いが、竹箸用に竹を採ることで少しは緩和されるかもしれない。とにかく、いかに日本の伝統といえども、“使い捨て文化”は地球温暖化時代には有害なのだ。
 
 もう一つの日本の伝統である“お中元”も、地球温暖化時代にはやめるべきだと提案している人がいる。メディアプロデューサーの沢田隆治氏で、今日(19日)の『日本経済新聞』で「お中元をやめればクールビズを上回る省エネ効果がある」と言っている。その理由が、なかなか説得力があるのである--「配送車や冷凍車の動きが格段に減ります。よく見てください。夏の昼間に住宅地を回って、留守のお宅がどれだけ多いか。女性も働きに出ている時代です。夏休みで旅行中の家もある。留守だと配送拠点に荷物を戻して、また後で送り届ける。二度手間です。消費するガソリン量はばかになりません」。こういうムダなエネルギー消費が、関東では6月半ばから7月半ばまで、続いて関西では8月にわたって延々と行われるから、中元をやめて歳暮1本に絞るべきだという。私も大いに賛成である。
 
 一見ムダなことでも、経済効果を生むことはやるべきだという考え方が、巷にはまだ多い。塔や橋のライトアップや、並木のイルミネーションなどが一向になくならないのは、その証拠だ。美しい場所には人が集まってきて、そこで消費活動をする。だから、経済は回っていく--そんな考えに決定的に欠けているのは、我々が「美しい」と感じるすべてのものの原点は自然にある、ということだ。人間の造るあらゆるものは、一種の“自然の模造品”に過ぎない。模造品を造り、それを消費するために、本物の自然を破壊していくことが人間の幸福につながると考えるのは、大いなる錯覚である。

谷口 雅宣
 

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コメント

副総裁・谷口雅宣先生
割り箸の問題は、大きな広がりを見せているようですね。
中国が国内の森林を伐採しないために、割り箸の原料となる木材をモンゴルやロシアから輸入しているとかいないとか…
青年会事務課で行っている環境・平和学習会でも割り箸問題が取り上げられ、私は6月から「マイ箸」を持ち歩くようになりました。

投稿: 大平 收一 | 2006年6月21日 08:53

大平さん、

 コメント、ありがとう。
 「マイ箸」、いいですね。貴方こそ「心ある人」です!
 

投稿: 谷口 | 2006年6月21日 14:28

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