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2006年6月18日

日本人の“風車づくり”

 『読売新聞』で連載していた「現代風車物語」(全5回)という企画記事が終った。風力発電の分野でも、日本人の“ものづくり精神”がいかんなく発揮されていることを知って、うれしくなった。

 6月9日の本欄で、三菱重工がアメリカの風力発電用に大型の風車を443基受注したという話に触れたが、一方、東北や北陸などでは、風力発電用の風車が落雷の被害で苦戦しているという話を聞いていた。この2つのことが、私の頭にはこれまでしっくりと収まらなかったのだが、『読売』の連載記事でうまく収まった。アメリカでは、落雷どころか、強力な竜巻やハリケーンの襲来は年中行事だから、「落雷程度で故障する風車を、400基以上もアメリカへ輸出して大丈夫なのか?」という疑問が渦巻いていたのだ。ところが、苦戦している風車はヨーロッパ製が多く、アメリカへ輸出される風車は、ヨーロッパ製の欠点を日本の技術者が克服した“日本適応型”であるというのだ。
 
 風車はもともとオランダなどの西欧で発達したものだから、発電用の風車もヨーロッパが先行していた。だから、日本で風力発電が普及しはじめた1980年代後期には、日本国内で稼動していた発電用大型風車のほとんどは、デンマークやドイツなどの西欧からの輸入品だったという。ところがこれらの国は地形がなだらかで、風向きもほぼ一定していたのに対し、日本は国土のほとんどが山地であり、風向きは頻繁に変わるし、春の嵐や台風が吹き荒れる。この地形と気象の違いが、風車の設計に反映されるまでには、西欧製の風車の“被災”は避けられなかったのだ。

 記事の中で取り上げられていたのは、沖縄県の宮古島に設置された7基の風車の例で、これらは2003年9月に同島を襲った台風14号の被害で全て機能しなくなったそうだ。事後の調査で分かったことは、風車の設置点での最大瞬間風速は、いずれも毎秒87メートルを超えており、高さ40メートルの大型風車(出力500kw)の立っていた場所の風速は、毎秒91メートルに達していたという。アメリカでは、ニューオーリンズ市を壊滅させた「カトリーナ」を含む最大規模のハリケーンを「カテゴリー5」に分類しているが、これは最大瞬間風速が69メートル以上のものである。日本には、それ以上の巨大台風が来るのである。しかし、ヨーロッパ製の風車の設計強度は、毎秒70メートル止まりだったという。
 
 こういう苦い経験をへて“日本適応型”の風車の開発が行われ、現在では耐風設計強度は毎秒90メートルに強化されているらしい。そうであるならば、竜巻とハリケーンの国・アメリカから大量注文が来ても不思議はないわけだ。
 
 また、デンマークは現在、自国で使うエネルギーのすべてを自給しているが、そのうち2割(約350万kw)は風力発電によるという。この国の日系デンマーク人、ケンジ・ステファン・スズキ氏(61)が、日本への風力発電導入の“先導者”となってきたらしい。スズキさんは、デンマークの自宅近くに私塾「風のがっこう」を開いて、風力発電の仕組み、風車の日本への導入方法、実践的知識などを合宿形式で日本語で講義し、すでに延べ1800人の日本人を教育してきたという。同校では、2002年以降は京都府と栃木県内に日本分校を開いており、稚内市や富山県でも分校開設の準備が進められているらしい。
 
 6月11日付の『北日本新聞』には、富山県高岡市五十里に世界最大級の風力発電施設を建設する計画が進行中だと書いてある。高さが約185メートル、最大発電量5000kw という大きさもの2基が検討されているらしい。ただし、国産にはこれほどの大きさのものがなく、ドイツのエネルコン社製という。三菱重工の風車(MWT-1000A型)は、発電容量は約1000kw だから、相当な大きさである。風車は、景観や騒音、さらに最近ではイヌワシなどの稀少種の鳥類が衝突する問題などが指摘されているが、温暖化ガスを出さず、再生可能エネルギーを利用するという点を評価して、立地を工夫した上での積極的な導入が望まれる。

谷口 雅宣

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