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2006年6月 2日

気候変動と地震

 インドネシアのジャワ島中部地震は、M6.3という規模のわりに死者が6千人を超え、5万棟以上の家が全壊するなど、被害が大きかった。この地域では、一昨年の12月に起きたスマトラ沖地震と大津波の被害の記憶がまだ新しい。そのほか、パキンスタンやイランなどでも昨今、大地震が起こっている。そういう地質学的変化が、昨今の地球温暖化に起因するという科学者はまだいない。しかし、地球の“外皮”とも言える地質上層の変化と気象との関係が今、注目されているらしい。イギリスの科学誌『New Scientst』が5月27日号の特集記事で、そのことを報じている。

 それによると、地球温暖化がこのまま続けば、気候の温暖化だけでなく、地質学的にも不安定な時代が訪れるかもしれないという考えが、科学者の間に広がりつつあるという。その理由は--気象は、地球の周囲をズレたり動いたりする海水や氷の塊を通じて、地質の上層部に影響を与える--というものだ。地質の上層部にかかる力を考えてみると、1立方メートルの水は1トンである。同じ量の水が氷になると0.9トンである。この重さの変化が、巨大な量の水や氷のある場所の地質上層部で起こるとする。例えば、厚さが1キロメートル以上ある氷床がどこかへ移動したり、海底に何千年も何万年も氷として載っていたものが解けて流れ出たりすれば、地下の岩盤にかかっていた圧力が増したり、減ったりする。それが地震や火山の噴火、地滑りなどを惹き起こす原因の一つになると考えることは、それほど不合理ではないということだ。
 
 過去65万年の間には、実際にそれが起こったと科学者は言う。氷河期には大陸上の水や海水が凍結し、海面は現在の水位よりも130メートルも低かったそうだ。その後、今から1万年ぐらい前になると、温暖化によってこれらの氷が解け、その際にアイスランドで火山活動が盛んになったことが分かっている。また、カリフォルニア州東部でも過去80万年の間に、同様の変化が起こったと指摘している科学者もいるそうだ。アメリカ北西部のカスケード山脈でも南米のアンデス山脈でも、同じ時期に火山活動が活発化したという。

 火山活動と水の関係については、それを示す具体的な例があるらしい。例えば、1963年にイタリア北東部のトク山が隣接する人口湖の中に崩れ落ちたが、その原因は新たにできた人口湖の水が活断層を刺激して地震を起こしたからだと批判された。この4年後に、インドのマハラシトラ州で起こった地震は180人の犠牲者を出したが、これもコイナ・ダムで水を堰き止めたことが原因だと言われた。だから、最近中国で完成した世界最大規模の三峡ダムには、地震を感知するための様々な機器が据えつけられることになった。
 
 地震については、もっときちんとした研究がある。NASA(アメリカ航空宇宙局)の地球物理学者たちは、アラスカ州南西部の氷河が急速に解けたことと、1979年に起こったM7.2の地震とを関連づける研究を2004年に発表した。発表者の1人であるアメリカ地質学研究所のジャンヌ・ファーバー氏(Jeanne Sauber)は、「アラスカのように地震が起こり、氷河の状態が変化している地域では、両者の関係を考えることが地震被害の防止には大切だ」と言う。これが本当なら、活断層上に氷河が存在するすべての地域--アルプス、ヒマラヤ、ロッキー山脈、アンデス山脈、そしてニュージーランドの南アルプスなど--でも、同じ関係が成立することになる。
 
 『New Scientst』誌の記事が「特に心配だ」としているのは、グリーンランドの周囲にある大陸棚だ。この世界最大の島にある氷床が解けて地震が起これば、大陸棚上に長期にわたって積み上げられた堆積物が崩壊して海中での地滑りが起こり、津波を惹き起こす可能性があるという。8000年前にノルウェーの西海岸で起こった「ストレッガ地滑り」は、スコットランド北のシェットランド諸島では高さ20メートル、スコットランドの東海岸では6メートルの大津波を起こしたという。

 今回のジャワ島の地震が、地球温暖化の結果だという証拠はどこにもない。しかし、重要なことは、一見頑丈そうな地球の表面であっても、様々な力が働き合う微妙なバランスの上にあるということだ。地球が“生き物”だと言われる理由が、分かるような気がする。
 
谷口 雅宣

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