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2006年6月 4日

世界の漁業貿易 2004

 生長の家の講習会で福井県に来た。ここはコシヒカリの発祥の地だが、魚介類のおいしい土地でもある。お刺身を食べながら、日本人の魚好きについて少し考えた。

 4月19日の本欄で、遠洋ものの大型魚を食べることは、牛肉や豚肉食なみの害を地球環境に与えるという話を書いた。漁業用船舶から出る二酸化炭素の量が問題になるからだ。その際、「マグロ、マカジキ、メカジキ、サメ、オヒョウ、タラなどの大型魚の自然ストックは、少なく見積もってその9割が、過去50年間でとり尽されてしまった」という海洋学者らが出した推計を紹介した。今日(6月4日)の『福井新聞』の記事によると、国連食糧農業機関(FAO)がこのほどまとめた資源評価報告書案では、大西洋のマグロとサメは、ストックに対して現在の漁獲量が多すぎ、タラなどは枯渇状態にあるらしい。
 
 具体的には、マグロの中では東部大西洋と地中海のクロマグロ、西部大西洋のクロマグロやミナミマグロなど5種、サメ類ではウバザメやオナガザメなどが、漁獲量が資源の維持に適切な量を超えているとされている。
 
 ところで、FAOのウェッブサイトで調べてみると、世界の漁業の現状を示す興味ある数字がいろいろあった。それによると、2004年に世界で消費された魚介類の77%は発展途上国によって漁獲されたもので、魚介類や魚介製品の輸入額の81%は先進国によるものだそうだ。つまり、途上国が獲った魚介を先進国が消費するという構図がここにある。そして、それら魚介類と魚介製品の最大の輸入国は日本で、全体の18%(146億ドル)を占める。2位はアメリカ(120億ドル)、3位がスペイン(52億ドル)で、そのあとフランス(42億ドル)、イタリア(39億ドル)、ドイツ(28億ドル)、イギリス(28億ドル)が続く。
 
 魚介類と魚介製品の輸出国を見ると、①中国(66億ドル)、②ノルウェー(41億ドル)、③タイ(40億ドル)、④アメリカ(39億ドル)、⑤デンマーク(36億ドル)、⑥カナダ(35億ドル)、⑦スペイン(26億ドル)、⑧チリ(25億ドル)、⑨オランダ(25億ドル)、⑩ベトナム(24億ドル)の順であり、先進国の名前も見られる。が、2004年の世界の魚介類の輸出全体に占める途上国の割合は、金額ベースで48%、重量ベースでは57%になっている。

 2004年の世界の魚介類の貿易額は710億ドルで1980年(155億ドル)の4.6倍であり、2002年の額(610億ドル)と比べても100億ドル多い。ただし、この増加は、天然魚の漁獲量が増加したのではなく、養殖魚の増加によるものである。重量ベースで漁獲量をみると、天然魚の漁獲が最大だったのは2000年の9600万トンであり、2001~2002年は9300万トンにとどまっている。その代わり、養殖魚の収獲量は2000年の3550万トンに対し、2001年は3780万トン、2002年には3980万トンと増加している。
 
 この貿易によって途上国は利益を得ており、魚介類の貿易で得た利益(輸出から輸入を引いた額)は、1980年が34億ドルだったの比べ、1984年は46億ドル、1994年は160億ドル、2002年は200億ドル、2004年は204億ドルと伸び続けている。この額は、魚介類を除くどの食品(コーヒーや茶、バナナを含む)の貿易額よりも大きい。つまり、多くの途上国は農産物ではなく、魚介類や魚介製品の先進国への輸出によって、多くの収入を得ていることになる。4月19日の本欄では、漁船の燃料高騰と途上国等の乱獲によって漁獲量が減ったため、日本の遠洋マグロ・カツオ漁業者の団体が解散したことを書いたが、その背後には、こういう事情もあるのである。

 先進国の魚介類の輸入は、途上国の経済発展を助けているが、その一方で漁業資源の枯渇の問題を惹き起こしている。そして、この問題に大きく関わっているのが魚好きの我々日本人なのだ。
 
谷口 雅宣

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